【ディスク 感想】J.S.バッハ/アリアと協奏曲集 〜 ヌリア・リアル(S)ユリア・シュレーダー指揮バーゼル室内管

2013.12.19 Thursday

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    ・J.S.バッハ/アリアと協奏曲集
     ヌリア・リアル(S)ユリア・シュレーダー指揮バーゼル室内管(DHM)

     →詳細はコチラ(HMV/Tower)




    <<曲目>>
    (1)『狩りのカンタータ』BWV.208より「羊は安からに草を食み」
    (2)『Die ausgesohnte Eifersucht oder Cephalus und Procris: Einsamkeit, duQual des Hertzen』(原曲:クリーガー)
    (3)『レオポルト閣下』BWV.173aより「Guldner Sonnen frohe Stunden」
    (4) カンタータ『もろびとよ歓呼して神を迎えよ』BWV 51より「Jauchzet Gott in allen Landen」
    (5〜7)『ヴァイオリン協奏曲ト短調』BWV.1056
    (8〜11)『葬送音楽』BWV.244aより「Jedoch derschwache Mensch」「Mit Freuden」「Und du betrubtes Furstenhaus」「Hemme dein gequaltes Kranken」
    (12〜14)『ヴァイオリンとオーボエのための協奏曲ハ短調』BWV.1060
    (15)カンタータ『喜びがわき起こり』BWV.36bより「Mit zarten und vergnugten Trieben」
    (16)カンタータ『我は満ち足れリ』BWV.82より「われは満ちたれり」
    (17)『御身が共にいるならば』BWV 508(原曲:シュテルツェル)
    (18)カンタータ『候妃よ、さらに一条の光を』BWV.198より「鳴るを止めよ、汝らやさしき琴糸よ」


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     ヌリア・リアルの最新盤、ユリア・シュレーダー指揮バーゼル室内管との共演によるJ.S.バッハのアリア集を聴きました。彼女のソロアルバムとしては約2年ぶり、そして彼女が歌うバッハは、Mirareレーベルにある結婚カンタータ以来久々です。

     今年の「ベスト1」のCDにしたくなるくらいに、私は猛烈にこのアルバムに惹かれています。素晴らしい歌、素晴らしい演奏、素晴らしい選曲、素晴らしい音楽。

     ヌリア・リアルの透き通った、でも、あたたかみのある歌声の何と胸にしみわたることでしょうか。高音の抜けるような美しさ、以前よりも豊かさを増した充実した低音、早いパッセージで聴かせるテクニックも申し分なし、そして何よりも優しく聴き手を包んでくれるような柔らかな歌い口。

     このアルバムは「アンナ・マグダレーナのクロニクル」というタイトルがつけられています。つまり、バッハの2番目の妻であるアンナ・マグダレーナ・バッハに関連しそうな音楽を集めたアルバム。バッハが妻のために編集した「音楽帳」に含まれる音楽、ケーテンでバッハと知り合ったアンナ・マグダレーナがきっと聴いたであろう音楽が18トラック集められています。バッハが楽長を務めたケーテンの宮廷の専属歌手だったというアンナ・マグダレーナから見たバッハの創作活動の年代記といった趣のアルバムと言えば良いでしょうか。

     アンナ・マグダレーナはバッハが賞賛するほどにとても澄んだ声をもったソプラノ歌手だったとのこと、そんな彼女をテーマにしたアルバムを作るにあたって、歌手としてヌリア・リアルを起用するというのは、もう唸るしかないくらいにベストマッチングな人選だと思いますし、実際に聴ける歌も、いや、ほんとにため息が出るくらいに美しい。

     もしアンナ・マグダレーナがヌリア・リアルみたいな女性だったら、どんなに創作意欲をかきたてられることでしょうか。仕事を終えて家に帰ったらヌリア・リアルみたいな美しい女性がいるのですから、彼女にどんなに癒され、活力をもらえたことでしょうか。彼女はバッハにとってまさにミューズ的な存在だったに違いありません。女性としても母としても魅力的な人だったに違いありません。

     また、アンナ・マグダレーナから見たバッハも、心の底から尊敬できる音楽家であり、夫であったことでしょう。例えば、バッハ家で小さな家庭演奏会が開かれ、小さい息子たちを椅子に座らせ、アンナ・マグダレーナが歌い、バッハがチェンバロを弾いて、カンタータ第82番「私は満ち足りている」の中のあの美しい子守歌を歌っている。妻は幸福感に満ちあふれた旋律に酔いながら、のびやかに、そして優しく歌う。夫は、妻の歌声に聴き惚れながら、その歌をさらに包み込むような伴奏を聴かせる。時折目配せをしながら、二人は音楽を通して会話をし、互いの愛を伝え合う。子供たちは、そんな幸せな歌を聴きながら、だんだん眠くなってしまい、やがてすやすやと寝息を立ててしまう。夫婦は静かに子供たちを抱え上げてベッドまで連れて行って寝かせた後も、共に歌い、奏で続け、二人だけの音楽会は夜更けまで続く。

     ヌリア・リアルとバーゼル室内管のうっとりするような美しい音楽を聴きながら、私はそんな光景を想像・妄想してしまいます。まあ自分の現実にはあり得ないような話ですが、もしそんなことが実際にあるとしたら、どんなに幸せなことだろうかと考えてしまいます。

     どの曲も本当に素晴らしいですが、カンタータ第82番のアリア、そして、マタイ受難曲を下敷きにしたケーテン侯レオポルドの葬送音楽からの2曲のアリア、カンタータ第208番のアリア「羊は草を食み」、シュテルツェルの作品を編曲した「御身が共にいるならば」が特に気に入りました。特にカンタータ第82番は彼女の歌で是非聴きたいと思っていたので、夢が叶って嬉しいし、実際に聴いた歌も予想以上に素晴らしくて良かった。

     ユリア・シュレーダー指揮バーゼル室内管の演奏も、ピリオド楽器、奏法に拘ることなく柔らかくて美しい音楽を聴かせてくれて、とても好印象でした。2曲挿入された協奏曲も、手堅く楽しませてくれます。

     今年は、ヌリア・リアルを始め、私の女神さまのソプラノ歌手の活躍がとても目立ちました。ハナ・ブラシコヴァの初ソロ・アルバム、ラケル・アンドゥエサの数枚の新譜、スンヘ・イムが参加したヤーコプスの「マタイ」、ドロテー・ミールズの参加したいくつかの作品、今年「発見」したセリーヌ・シェーンやサビーヌ・ドヴィエイル。幻覚を引き起こす天使には降りてきてもらいたくないですが、こういう女神さんたちなら是非私の前に現れて、私を惑わしてほしいです。

    ・ヌリア・リアル近影





     






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