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【ライヴ 感想】MY HOUSE CONCERT〜やさしい時間  純名里沙(vo)& 笹子重治 (g) Duo(2014.10.31 葉月ホールハウス)

・ MY HOUSE CONCERT〜やさしい時間
 純名里沙(vo)& 笹子重治 (g) Duo
 (2014.10.31 葉月ホールハウス)





  10月も終わり。体調が良くないというのもあるけれど、まあ人生いろいろとあって、「悲しくてやりきれない」という気分で過ごした1か月。でも、青息吐息ながら何とか乗り切った自分にご褒美をと思い、遠いから行くのを躊躇しているうちにチケットが完売してしまったコンサート、問い合わせたらキャンセルが出たとのことだったので、「聴きに行け」というお告げなのだろうと思って聴きに行くことにしました。

 コンサートが開かれたのは、JR中央線の荻窪駅からバスに乗ること15分、善福寺公園のすぐ隣にある小さなアートスペース、葉月ホールハウス。普段は主に展覧会をやっている場所で45名限定、歌とギターをマイクなしで聴く。細長いスペースの真ん中に主役二人がいて、聴衆は、その左右に振り分けられた座席で聴くという状況。まさに顔を突き合わせて歌とギターを聴く、ちょっと変わったスタイルのユニークなライヴ。

 歌うのは純名里沙、ギター伴奏は笹子重治。8月の横浜の彼女たちのライヴ(あの時はアコーディオンも入ってましたが)が良かったので、とても聴きたかったのです。

 いい時間を、本当にいい時間を過ごしました。

 ライヴの開始は「ちいさい秋」、これはライヴのすべてを物語っている選曲です。

 「小さな」会場に響く、囁くような「小さな」声とギター。大言壮語することのない「小さな」世界をもった歌たち。着飾ったり過剰にメイクしたりすることのない自然体の2人が作り出す「小ささ」が素敵なライヴ。

 その「小ささ」ゆえに、音楽の作り手と聴き手が一緒になって音楽を「分かち合う」ことができたと言えるのではないでしょうか。会場は熱気で暑かったけれど、45人と2人の「親密感」「一体感」が小さな会場を満たしていたように思います。このコンサートに集まった人たちは、純名里沙の「小さな」歌たちを、「私のために奏でられた歌」と思って聴いていたのかもしれません。

 まあ、それは私がそう思っただけなのかもしれません。今日、たまたまキャンセルが出て聴けることになったのもこれは何かの縁だし、彼女たちが武満徹の「小さな空」を、私が前回の横浜のライヴの時のアンケートで「是非彼女に歌ってほしい曲」として挙げたあの歌を歌ってくれた。

 そして、美しくて表情豊かな笑顔を振りまく彼女と、何回か目が合った。いや、それどころではありません。曲間のMCで、彼女がお客さんに振る舞ってくれた関西の「ツマガリ」というお店のクッキーの話になった時、彼女が「神戸出身の方はおられますか?」と挙手を求めたところ、ギターの笹子さんと、私が手を挙げた。そこで彼女と私の間で直接の小さなコミュニケーションが生まれた訳です。しかも、そのお店がある甲陽園というと、なんと私が通っていた私立高校のある駅でした。

 武満徹の「小さな空」を聴いたのは、その会話の直後のこと。以前、このブログで書いたように、4年前、母が亡くなった後、故郷の神戸の空を見ながら思い起こしていた記憶の残る、私にとってかけがえのない宝物のような歌を、彼女が歌ってくれている。熱いものがこみあげてきて、ホロリとしてしまいました。亡母の遺骨を散骨するために帰省した際に見た神戸の空を思い出し、自分の子供時代のことを思い出し、純名里沙が武満徹の歌との出会いを説明してくれた時に話題になった東日本大震災に思いを馳せていました。彼女らが聴かせてくれた「ちいさな音楽」が、「私の歌」として親しく語りかけてくる。
 
 私は、ああ、やっぱり今日のこのライヴは「私のために」開かれたものだと勝手に思い込むことにしました。そして、ニコニコと頬を緩めながら彼女たちの歌を2時間近くにわたって聴いていたという訳です。

 彼女が得意とするミュージカル出自のジャズナンバーのいくつか、前述の「ちいさい秋」「小さな空」、スティーヴィー・ワンダーの名曲「オーバージョイ」を日本語歌詞をつけて歌った「光」、純名里沙作詞の「キャンドル」、もうどれもこれも、極上の「私のためのちいさな音楽」を満喫しました。 そして、「人生いろいろあるんですよー」と言いながらしみじみと歌われたのはフォーククルセイダーズの「悲しくてやりきれない」。おお、これぞ今の私の心境ではないか!

 そうだ、やっぱり今日のこのライヴは、私のためにあるようなものなのだと思わずにいられませんでした。勿論、今日会場にいた人々は、皆がそれぞれ、そう思っているのでしょうけれど。

 こういう「ちいさな楽しみ」は、あんまりオープンにしないで、本当に彼女らの歌を自分のものとして楽しみたい人たちだけで分かち合うべきなのかもしれません。だって、この素晴らしいコンサートを体験したいという人が増えたら、会場はもっと大きなところになってしまって「マイクなし」なんて贅沢なことは言ってられなくなってしまう。「誰にも教えたくない名店」みたいな感じで、ひっそりと楽しむべきなのか。

 でも、今日のライヴがとても楽しくてホロリとして素晴らしかったこと、純名里沙の歌と笹子重治のギターにすっかり魅了されたことは、やっぱり「大きな声」で言いたくなる。この「ちいさい音楽」の魅力を、もっとたくさんの人と分かち合いたいという気もする。だから、こうしてブログに感想を書いているという訳です。純名里沙の透明感あふれる声、節度があってきちっと丁寧に歌いこまれる歌はクラシック音楽のファンにも強くアピールするだろうし、特に武満徹の歌は「とにかく聴いて!」と言いたくなるくらい。この素晴らしい体験を分かち合いたい。そう思いました。

 コンサートが終わって、トトロが出てきそうなバス停でバスを待っている時、この1か月私を悩ませてきた心の中の曇り空は、心なしか晴れ間が多くなったような気がします。音楽の力、純名里沙さんと笹子重治さんの音楽のもつ力なのかもしれません。また彼女らの歌を聴きたいです。近いうちにまた彼女らの歌に触れる機会がありますように。

 最後に。やっぱり純名里沙は美しい人でした。椅子に座って歌っている時も、喋っている時も、椅子から立ち上がり、私たちの至近距離に来て歌っている時も、見とれてしまいました。本当に五感に嬉しいコンサートでした。生き返りました。

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  • 2017.04.28 Friday
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