【雑記】2014年に聴いた音楽への礼状

2015.01.01 Thursday

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     ・黒田恭一著「音楽への礼状」
     →タイトルはこちらから拝借しました









     紅白が今終わり、2014年が暮れていこうとしています。

     Twitterではたくさんの人たちが今年のコンサートベスト10やら、個人的なアカデミー賞などをやって、一年の総まくりをされています。私もそうしたいという気持ちはなくもないのですが、天邪鬼な私は、例によって今年印象に残った人を挙げることで総括としたいと思います。

     今年は、私から、ファンとして「お礼状」を出したいという人を3人選びました。

     まず最初は、指揮者のエリアフ・インバル



     



     
     今年7月をもって完結した東京都響とのマーラー・チクルスは、今更私が言うまでもなく本当に素晴らしい演奏の連続でした。特に最後の第9,10番は、インバルのマーラー解釈の総決算として、1991年からのインバルと東京都響の共同作業の総決算として、そして、私が1987年から27年聴いてきたインバルの演奏の総決算として、一生忘れることのできないものとして心に刻み込まれました。これほどまで熱中することのできる音楽を私たちに聴かせてくれて、本当にありがとうございましたと感謝したいし、私たちの東京都響というオーケストラをここまでのレベルまで引き上げてくれてありがとうございましたと感謝したい。これからも、あなたの音楽をずっと聴き続けていきたい、どうかいつまでもお元気でいてくださいと言いたい。

     次に、ピアニストのイリーナ・メジューエワ








     
    私はここ何年か彼女の熱烈なファンで、何度もここに彼女の演奏について感想を書いて来ました。そして、私のリアルな友人知人や、ブログを読んで下さっている方はご存じだと思いますが、ご縁があり、彼女がリリースしたモーツァルトのピアノ・ソナタ集のライナーノート執筆をするという光栄に浴することができました。しかも、彼女の演奏するモーツァルトは、本当に素晴らしい演奏でしたので尚のこと。

     自分でライナーノート執筆を経験して分かったことは、やっぱりCDのライナーノートを書くというのは大変なことだということでした。演奏が素晴らしいので尚更書きたいこと、書かなければならないと思う言葉は次から次へと生まれるのですが、それを曲りなりにも人様に読んで頂けるものにし、かつ、対象とする音楽について少なくとも的外れなことは書かないようにするというのは、経験のない私には非常に骨の折れるものでした。日頃、何気なく聴いているCDが、ただ演奏者や制作者だけでなく、それ以外の人たちの多大な努力や労力によって作られたものだという、とても当たり前のことを痛いほど思い知りました。

     しかも、驚いたのは、CDのショップの方々も、バイヤーの方々ご自身の言葉で、あるいは私の書いたライナーやブログの言葉をうまく使って、セールスを展開していること。利潤追求のための行為と言えばそれまでかもしれませんが、でも、例えば、タワーレコード渋谷店で見かけたPOPなど、ああ、このバイヤーさんはこの演奏をちゃんと聴かれていて、一人でも多くの人に聴いてほしいと、立場を超えて考えておられるのだと、熱意が伝わってくるもので感動すら覚えました。私に素晴らしい音楽を届けてくれるメジューエワ、若林工房やCDショップの皆さんに、いやレコード業界の方々の皆さんに感謝したいです。

     メジューエワは、CDも旧譜を含めてたくさん聴きましたし、実演も2回だけですが聴きました。秋に代々木上原で聴いた実演や、その前後にリリースされた「展覧会の絵」や京都ライヴでは、彼女が音楽家として新しいステージへと一歩を踏み出したのではないかと思えるような深い音楽を聴くことができました。彼女が聴かせてくれる音楽そのものに感銘を受けるのは当然のことですが、それ以上に、彼女の音楽への向き合い方、音楽との関わり方、プロフェッショナルな音楽家としての生き方といった「ありよう」に打たれ、学ぶところがたくさんあります。これからも彼女の音楽を聴き続けていきたい、彼女の成熟を見ながら、聴きながら、私もその背中を追いかけていきたいと思わずにはいられません。イリーナさんに心からの感謝を。

     それからもう一人。今年3回ライヴを聴いた純名里沙。クラシックの音楽家ではありませんが、この方は外せません。



     私が聴いたのは笹子重治のギターなどとのコラボでのライヴでしたが、特に10月末に聴いたマイクなし、ギターとのデュオ・ライヴが素晴らしかった。精神的にも体力的にもかなり参っていた時に、彼女の声をじかに聴き、あたたかい音楽を、40人の聴衆と共有できたことは、私の中ではとても大きな力になりました。もともと彼女のファンで、テレビやCDで聴いた彼女の歌に魅了されていて、ナマで聴きたいと願っていた夢が叶った訳ですが、実物の彼女はテレビで見るより美しくて、声も美しい。歌も巧い。美女の美声に酔いしれるだけで元気になったとか、生きる力が得られただとか言うと、ただのエロオヤジだろうと思われるかもしれませんが、彼女のライヴを見た方なら、老若男女問わずに私に同意して下さるのではないかと確信を持っています。

     彼女がクリスマスのライヴで歌った「ウェストサイド」の「サムウェア」も心に響きました。思った以上にこの曲は歌いにくい、難しい曲なのかなという気もしますが、これから彼女が何度も歌い込むうちに、もっともっとこの曲の良さを引き出してくれるのではないかと思います。彼女にとって「ウェストサイド」はミュージカルを好きになるきっかけだったそうなので、是非、彼女の「持ち歌」として歌い続けてほしいと思っています。

     なんてことを書いているうちに、山田和樹が「フィンランディア」を振り終えて(TV東京のジルヴェスター)2015年がやってきました。

     前述の3人だけではなく、2014年に素晴らしい音楽を届けてくれたすべての人々に感謝したいです。今年はどんな音楽家に感謝することになるでしょうか。

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    2024.02.28 Wednesday

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