【私の好きな歌・12】スコットランド民謡 "The water is wide"

2015.01.04 Sunday

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     最近、シャンソン歌手のクミコさんの「広い河の岸辺〜The water is wide」がヒットしているそうです。少し前(2014年7月)にリリースされたものが売れた理由は、朝の連続テレビ小説「花子とアン」、そして「マッサン」と2作続けて、スコットランド民謡である"The Water is wide"(”O Waly, Waly"というタイトルでも歌われています)がドラマの中で歌われたからです。私も両方の場面をテレビで見ましたが、確かに印象的なシーンでこの歌が歌われていて、胸を打たれました。特に、「マッサン」でエリーを演じているシャーロット・ケイト・フォックスの歌は、彼女の声質の良さも相まって、ひとわ心に沁みるものでした。  この”The water is wide"は私は以前から大好きな歌でした。その理由は、ただメロディがシンプルで美しいからということ以外にありません。音の高低のレンジも狭い(1オクターヴ内に収まる)し、ただ同じメロディを繰り返すだけ。では詩が良いからかというと、いわゆるバラッドで恋人との別れを歌ったもので、確かに切ない内容に胸が締め付けられる思いもしますが、でも、やはり、このひたすらに素朴な旋律に心が和むというのが私の感覚です。  CDでも何人もの歌手が歌ったものを持っていますが、YouTubeで検索してみたら、本当にいろいろな人が歌っていることに気づき、聴いてみました。以下、いくつか気に入ったものをブックマークしておきます。

    ■The Water Is Wide-Niamh Parsons
    ・ニーヴ・パーソンズ



     









     私が検索で見つけた中では最もトラディショナルなスコットランド民謡の歌い方に近いものでした。声質は、60年代にそこそこ有名だったジーン・レッドパスの声に少し似ていますし、強拍に独特のアクセントをつけ、ちょっとコブシをつける節回しなど、日本人の私のDNAを刺激するものがあります。ただちょっとアレンジが「ナウい」ので、もっとシンプルにしてほしかったかなという気がします。

     ■B.Britten & P.Pears - O Waly, Waly
     
     
    ・ピーター・ピアーズ&ベンジャミン・ブリテン

     イギリス民謡を積極的に編曲していたブリテンと、公私ともにわたるパートナーだったピアーズとの名演。こちらも有名な映像なので何も言うことはありません。素晴らしい。

    ■O Waly, Waly - Kathleen Ferrier

    ・カスリーン・フェリアー

      何も言うことはありません。不世出のコントラルト歌手が遺した素晴らしいイギリス民謡のアルバムからのもの。この人の歌は、大人になってから良さを実感できるようになりましたが、このところ、尚更、彼女の歌が沁みてきます。アレンジは上記のブリテンのものを使っています。

    ■Pete Seeger - The Water is Wide
    ・ピート・シーガー







     フォーク界の大御所ピート・シーガーの歌。そもそも、この曲が広く聴かれるようになったのは、彼が歌ったからだそうです。「花はどこへ行った」同様に、こうしたトラディショナルな歌を、当時の世相に合わせてヒットさせた例ということでしょうか。大部分は混声合唱で、シーガーは1コーラスしか歌っていませんが、フォーク歌手がよくやるフレーズの頭で歌詞を先導する役割を担っています。そうした作法が、私が子供の頃にたくさんいたフォークギターを弾きながら歌う大学生の姿を思い起こさせ、ちょっと押しつけがましくて好きではありませんが、でも、確かにストレートに響いて来る音楽ではあります。

    ■Esther Ofarim- Oh, Waly Waly
    ・エスター・オファリム

     







     このイスラエルの歌手、オファリムという人は初めて知りましたが、とてもいい声だし、歌い方もロマンティックというか濃厚で、異質ながらなかなか味わい深くて聴き入ってしまいました。この人の歌、もっと聴いてみたい。

     ■Dusty Springfield - The Water Is Wide
    ・ダスティ・スプリングフィールド  

     



     この人、もともと大好きなので、この曲を彼女が歌っていると知って嬉しい。歌もアレンジも、「ザ・ダスティ・スプリングフィールド」。無駄にゴージャスな雰囲気に包まれるのも悪くありません。

    ■JOAN BAEZ with INDIGO GIRLS ~ The Water Is Wide:
    ・ジョーン・バエズ

     






     ピート・シーガーの流れで、ジョーン・バエズも歌っています。ただ、ジョーン・バエズ自身はコンサートではよく歌っていたものの、ソロアルバムには収録していなかったとのことで、動画もIndigo Girlsと共演したライヴ音源です。素朴な歌で、ケルティックな雰囲気よりも、ピート・シーガーの歌からの流れを継ぐ「フォーク・ソング」として聴けます。しみじみとした歌い口に心が安らぎます。

    ■JUDY COLLINS - "The Water Is Wide" 2005
    ・ジュディ・コリンズ  

     







     ジュディ・コリンズも歌っています。ただし、これは2005年の弾き語り。こちらは、ジョーン・バエズよりはスコットランドの雰囲気が強く、これもまた味わい深い。とにかく透明な声が美しい。途中の転調はちょっとびっくりしますが、なかなか巧い。

    ■The Water Is Wide(Traditional)with lyrics-Karla Bonoff
    ・カーラ・ボノフ






     これは1979年に大ヒットしたアルバム「ささやく夜」の中に収められているもの。当時、小6から中1あたりだった私は、あの「大人の女」を感じさせるジャケットを雑誌やレコード店で見て胸をときめかせていましたが、聴いていませんでした。今、こうして聴いてみると、とても落ち着いたいい歌だなと思います。ジェームズ・テイラーがギターで参加しているのも、「ピート・シーガーのフォーク・ソングをAOR風にアレンジして見ました」的な1980年代前半によくあったスタイル(アート・ガーファンクルとかクリストファー・クロスとか)を思い起こさせます。いろんな意味で懐かしい。

    ■Sheryl Crow - The water is wide (live)
    ・シェリル・クロウ
     






     こちらはロック歌手が歌った例ですが、シェリル・クロウは「バラード」として歌っています。ピアノの弾き語り(彼女はピアノも弾けるんですね)で、ストリングスの伴奏がつき、オリジナルからは随分とかけ離れた歌ですが、歌にこめられた切なさは伝わってきます。

    ■Lilith Fair 1997: Water Is Wide (Indigo Girls, Jewel, Sarah McLachlan)
    ・サラ・マクラクラン('97 リリス・フェア)
     

     




     私の大好きなサラ・マクラクランが主宰した女性ミュージシャンの祭典、リリス・フェアのライヴ。ここでもIndigo Girlsが歌っていますが、2コーラス目から、ジュエル(彼女は最近活動しているんでしょうか。結構好きだったんですが)、サラ・マクラクラン、そして全員が歌い継ぎます。ジュエルは意外に普通に歌っていますが、サラ・マクラクランは「サラ節」を聴かせてくれていて、その独特の歌い回しが出るたびに客席が湧いていて、「おお、この聴衆は分かっとるねえ」と思います。私はサラ・マクラクランの大ファンですから、これは感涙モノの動画でした。Indigo Girlsもギターの音色、歌、どちらも味わいがあっていい。

     ■The Water is Wide - Emiko Shiratori

    ・白鳥英美子









     巷で売れているというクミコさんの歌は聴いていないのですが、日本では白鳥英美子さんのバージョンが好きです。透明な声、シンプルな歌い口、まさにフォークの流儀で歌われた歌ですが、「四畳半」になっていないところがいい。

    ■The Water is Wide - Hayley Westenra
    ヘイリー  






     これはつい最近の人気歌手によるものなので何も言うことはありません。ほんとにきれいな声。

    ■Laura Wright - O Waly Waly
    ・ローラ・ライト  






     このローラ・ライトという人は私はどういう人か知らないのですが、彼女の歌もなかなかいい。押しつけがましくなく、かといって、表現に弱さがある訳でもなく、楚々とした抒情が心地良い。

    ■Sissel & Gheorghe Zamfir
    ・シセル・シルシェブー






     実は私がこの"The water is wide"という歌を知ったきっかけは、このシセルの歌う"Summer Snow"でした。何かのドラマの主題歌として使われたもので、タイトルは変えられ、千住明が編曲、パンフルートの巨匠ザンフィルとの共演。シセルの熱狂的なファンなのでこのCDシングルを買って聴き、美しい曲に魅せられて、毎日のように聴いていたのでした。上記ヘイリーやサラ・オレインなどの人気が出て来て日本ではほとんど顧みられなくなったシセルですが、クラシックの歌もこなし、ドミンゴやカレーラス、ターフェルとも素晴らしい共演をおこなっている彼女の歌は、今聴き直しても素晴らしい。編曲があまりにセンチメンタルかなという気もしなくもないのですが、彼女の天使のような声の前には結構どうでもよくなります。  

     以上、15種類のバージョンを挙げました。私としては、シセルに最も惹かれますが、フェリアー、サラ・マクラクランのリリス・フェアのライヴ、カーラ・ボノフ、ローラ・ライトがお気に入りです。そう、女性が歌う方が絶対にいい。他にもエミルー・ハリスや、シーカーズ、あるいは、ケルティック・ウーマンなどいろいろな人が歌っていますし、それこそヒット中のクミコさんの歌もある。本当に多くの歌い手、聴き手に愛されている曲なのだなと痛感しますが、この歌はプリミティヴと言って良いほどにシンプルな歌だからこそ、いろいろな歌手が歌いたくなるのは分かる気もしますし、聴く側としても感情移入がしやすいのだろうと思います。

     今ヒットしているクミコさんの歌は、人生に行き詰った人たちにとっての応援歌として聴かれているようですが、原詩から離れた聴き方も可能なのは、やはり音楽の持っているファンタジーが豊かだからなのだろうと思います。これからまた、いろいろな人の歌で味わいたいと思います。

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    2018.12.09 Sunday

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