【ディスク 感想】BACH IMAGINE ~ ジャン・ロンドー(harpsichord)

2015.01.25 Sunday

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     ・BACH IMAGINE
     ジャン・ロンドー(harpsichord) (Erato)

     →詳細はコチラ(Tower/HMV)




    J.S.バッハ:
    1)組曲(パルティータ)ハ短調BWV.997
    2)ソナタ ニ短調BWV.1003(964)〜W.F.バッハ編曲版
    3)シャコンヌBWV.1004(ブラームス編曲版)
    4)パルティータ イ短調BWV1013(ステファン・デフラス編曲版)
    5)イタリア協奏曲ヘ長調BWV.971
    6)ソナタ第3番ハ長調BWV1005(968)よりアダージョ〜W.F.バッハ編曲版


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     Eratoからリリースされた、フランス出身のハープシコード奏者のジャン・ロンドーのデビュー盤、「BACH  IMAGINE」を聴きました。収録されているのは、J.S.バッハの組曲BWV997、無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第2番、シャコンヌ、フルートのためのパルティータ、イタリア協奏曲、そして無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第3番のアダージョ。イタリア協奏曲以外はハープシコードに編曲されたもの。シャコンヌは、ブラームスがピアノのために編曲した左手用のものを、「両手」で弾いています(ハープシコードにはペダルがないので、それを補うために和音を抜いてしまうのを避けたかったからとの由)。

     素晴らしい。その一言に尽きます。

     ジャケット写真に見る彼の髪型のような奇抜な演奏が繰り広げられている訳ではなく、私にはとても「正統的」な演奏に聴こえるのですが、心が湧き立つような弾力のある、腹に響くような量感のある響き(録音のせいもあるでしょうが)、とにかく人間くさくて、親しみやすくて、愉しい音楽。バッハの音楽のもつ「生命」の躍動をこんなにも自然に愉しませてくれる演奏は他にそんなに多くはありません。今や巨匠となった古楽奏者たちのとんがった刺激的な演奏とも、その前の世代の重厚きわまりないロマンティックな演奏とも違う、ひたすら自然な感興を呼び起こさずにはいられない演奏には私はとても大きな魅力を感じます。何度聴いても飽きないし、耳が疲れない、しかし、ちゃんと心にずしりと感覚を残す強さももった音楽は、もう古楽かどうか、楽器が何なのかなどは「どうでもいい」、ただその音楽が鳴り響いてさえいれば、バッハという人、そしてロンド―という人の鼓動や息遣いが感じられる。そのことの幸せを実感できるアルバム。

     どれか一つと言えば、シャコンヌが最も印象に残ったでしょうか。ヴァイオリンで聴くのとは違った味わいがあるのは当然ですが、この尖りすぎず柔らかすぎずといういい塩梅の演奏を聴いていると、ああこれが今の若い世代のもっている「空気」なのかなという気もします。

     何だか全然ガッついたところがなく、ただひたすらナチュラルに音楽をやっている。好きだから、楽しいから、やるのが当然と思っているから、やる。とことん突き詰めて曲を掘り下げて演奏するが、この「好き」を忘れずに演奏をしたい。名声を上げよう、名盤を作ろうとかいうことではなく、ただ好きなことを没頭してやり、他の人にも聴いてほしい。その柔らかなスタンスは、肩ひじ張らずにごくごく自然に新しいビジネスを立ち上げて、やわらかに世の中を変えていく力のある若者にしかないもの。それを物怖じすることなくバッハの音楽を通してやるところが頼もしい。

     この風変わりなディスクのタイトルの意味は、ライナーノートを読んでみたのですが、あんまりよく分かりません。要するに、バッハのオリジナルの曲じゃなくて他楽器のために書いた曲の編曲版を弾くことで、バッハの音楽の「つくり」というかとても本質的なところが見えてくる、その見えてきたものから、バッハという人間の姿を「想像」してみようよというような聴衆への呼びかけが「イマジン」なのかなと読めました。ジャケットもなかなかに思わせぶりなもので、どういう意図で、蛍光燈とロンド―が写っていて、「今でしょ」みたいな手の格好をしているのかよく分かりません。本当は手に何かを持っているのだけれど実際には「ない」。何か想像してみようということなのでしょうか。

     しかしそんな御託はともかく、もうとびきりフレッシュで、とびきり楽しくて、とびきり親しみやすい演奏に私は魅了されてしまいました。このロンド―君の活躍をこれから追いかけたいと思います。

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    2019.06.03 Monday

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