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【ディスク 感想】アザラシヴィリ/チェロ協奏曲(1978) 〜 マキシミリアン・ホルヌング(Vc)アントネッロ・マナコルダ指揮ポツダム・カンマーアカデミー

・アザラシヴィリ/チェロ協奏曲(1978)
 マキシミリアン・ホルヌング(Vc)
 アントネッロ・マナコルダ指揮ポツダム・カンマーアカデミー
 (Sony Classical)

 →詳細はコチラ(Tower/HMV)
 
 
 最近めっきり更新頻度が落ちてしまってアクセス数も激減の当ブログですが、この数週間ほど、あるキーワードで検索してここにたどり着く方が結構多いようです。

 アザラシヴィリ。

 そう、当ブログでは何度か取り上げてきたグルジアの作曲家ヴァージャ・アザラシヴィリです。しかも、「アザラシヴィリ 無言歌」という検索ワードのアクセスが非常に多い。

 理由は分かっています。先日おこなわれた山田和樹指揮横浜シンフォニエッタの演奏会のアンコールで、このアザラシヴィリの「無言歌」が演奏されたからです。これは上田真樹さんという方がオーケストラ用に編曲したもののようですが、元はと言えば、チェロ・アンサンブルの曲として90年代に紹介されたのをヤマカズが聴いて感激し、自分たちで演奏できるようにした(耳コピ?)のだそうです。ただ、このブログでも書いたように、実はこの「無言歌」にはもともと歌詞の付いたオリジナル曲があって、それは「グルジアの歌」というのだそうです。このブログに、作曲家自身の歌や、グルジアの歌手たちの歌の動画を貼りつけたところ、早速、著作権侵害の申し立てがあったようで、リンクが無効になってしまいました。

 しかし、高々2、3回の横浜での演奏会で取り上げられただけなのに、これだけ検索されるということは、あの甘い甘いメロディに私のように心惹かれる聴衆がたくさんいるということなのでしょう。

 そのアザラシヴィリの音楽、私はできる限り聴きたいと発売されるCDは注意していますが、最近、久しぶりに彼の曲の新譜が発売されました。それは、以前、ギオルギ・ハラーゼとクレメラータ・バルティカの演奏したCDを取り上げた(※)ことのある、チェロと弦楽オーケストラのための協奏曲。1978年に作曲された13分ほどの短い曲で、アンダンテとアレグロの2楽章構成。演奏は、最近期待の新人として注目を集めているマキシミリアン・ホルヌング、バックは、シューベルトの交響曲シリーズで快演を聴かせてくれているアントネッロ・マナコルダ指揮ポツダム・カンマーアカデミー。SonyClassicalから発売された2014年3月にベルリンのイエス・キリスト教会(以前カラヤンとBPOが使用していた有名な教会)で録音されたもの。


※ハラーゼ/クレメラータ・バルティカ盤
 ("Cello Fiesta"所収、Profil盤)
 →詳細はコチラ(HMV/Amazon/Naxos)




 もともと、グルジアの音楽というよりは、ユダヤ風味のソ連音楽といった雰囲気の音楽で、ショスタコーヴィチのチェロ協奏曲第1番と弦楽四重奏曲第8番のある部分のエッセンスをベースにしつつ、ブロッホの「シェロモ」や「バール・シェム」の味付け(特に半音階の息の長い旋律)をしたようなところのある曲ですが、ホルヌングとマナコルダの演奏はかなり無国籍の音楽に近い味わいがあります。例えば、第2楽章の激しい音楽が鎮まった後に聴こえてくる濃厚な歌もサッパリ風味で、淡々と上品な歌がサラサラと流れていきますし、第1楽章もひたすら透明で純度の高い「嘆きの歌」になっています。殊更にユダヤ旋法を意識したような半音のとり方もしないし、ポルタメントも控えめ、D線やG線のハイポジションを多用してねちっこく歌うようなこともしない。まさにショスタコーヴィチ直系の音楽という風にしか聴こえてこない。

 こんな曲だっけ?と思って、ハラーゼ盤を聴き直してみたら、こちらはそこかしこに「ロシアとアジアの境目あたりの音楽」というテイストがむんむんする音楽になっていました。顔のつくりは西洋人なのだけれど、髪は黒くて、瞳も濃い、そして、眉が濃くて、どこかアジア人の面影を思わせる。そう、グルジア出身の美人ピアニスト、カティア・ブニアティシヴィリのあの美貌を思い出さずにいられないような妖艶な音楽に聴こえる。そして、淡彩なホルヌングに比べると、どことなく哀しみをたたえた、思いつめたような表情が印象的。だから、第2楽章の激しいトゥッティは、重量感たっぷりの破壊力抜群の音楽で、激しい怒りが込められているようにも思える。これは確かにあの「無言歌」の作曲家の音楽に間違いない。

 では、さっぱり、すっきりしたホルヌングの演奏が不満かというと、まったくそんなことはなくて、このアザラシヴィリの音楽が、グルジアのみで流通するローカルなものとしてくすぶっているのはもったいない、普遍的な魅力を持った素晴らしい音楽であって、こういう演奏を通してこそ、グローバルな聴き手に広くアピールするのではないかと思えます。

 とても印象的なアレグロでの軋むような同音の連打を、かなりのスピードで鮮やかに駆け抜けたり、超絶技巧とも言えるような重音の連続もスムーズに弾きこなしているし、静かなカンタービレで聴かせてくれる美しいカンタービレは、「歌うチェロ」の魅力をじっくり味わせてくれるものです。特に第2楽章後半、オケ内のチェロソロと絡みながら高い音を弾くあたりの、イメージが天高く羽ばたいていくような軽みを帯びた音の美しさはため息が出ます。

 私自身は欲張りなので、このアザラシヴィリの名曲を楽しむにあたっては、ハラーゼ盤とホルヌング盤の両方を必要としますが、多くの聴き手にとっては、ホルヌング盤の方がアピールするのではないかと思います。それに、ハラーゼ盤に比べれば、超メジャーレーベルから発売されるホルヌング盤の方入手は容易でしょうし。ただ、「あの無言歌の雰囲気を彷彿とさせる音楽を聴きたい」という方ならばハラーゼ盤の方がいいかもしれません。しかし、そこは聴く人の好みですから、全く違う聴き方も可能かもしれません・・・。

 さて、アザラシヴィリの音楽は、「無言歌」と「チェロ協奏曲」以外では、最近買った中古CDの中に収められた「ノクターン」を聴くことができました。

・アザラシヴィリ/ノクターン
 ギア・ケオシヴィリ(Vc)/篠原美樹子(P)

 (左図は私が入手した編集盤とは別のオリジナル盤?、ただし完売)
 →詳細はコチラ(ケオシヴィリさんHP)


 
 この曲は、とてもメランコリックな「ど演歌」になっていて、私にはツボでした。私が入手したのは、グルジア出身のチェリストで、1996年に来日してから日本に移住し、2001年より関西フィルの首席チェロ奏者として活躍していたギア・ケオシヴィリさんが2004年に録音した「チェロ愛奏曲集」というアルバムに収められたもので、篠原美樹子さんがピアノ伴奏したものです。どうやらアザラシヴィリとケオシヴィリさんは友人同士だったらしく、この「ノクターン」は、もとは弦楽四重奏曲だったのをケオシヴィリさんのためにチェロとピアノに編曲したものなのだそうです。動画を結構見かける(下記は演奏者不明の別ヴァージョン)のは、グルジアでは楽譜が出版されているのでしょうか。



 この人のチェロは、技術的には、細かいところでちょっと言いたいこともあるのですが、その濃厚・妖艶な歌い回しは、ホルヌングのようなインターナショナルな感性を持った人、さらには、ちょっと味が濃く聴こえるハラーゼでさえも淡白に思えてしまうくらいに、かなり特異な味わいを持っています。地酒のようなある種の独特な匂いがあり、慣れていないとかなり奇妙な音楽に聴こえるのかもしれません。しかし、このへんの「ど演歌」調クラシックに目のない私には、まさに「猫にマタタビ」の音楽。やにっこいグルジア節を聴いているうちに胸が熱くなってしまいます。ホルヌングやハラーゼ、あるいは、マイスキー(この人はラトヴィア出身ですが)あたりに弾いてほしいなあと思います。

 このケオシヴィリさんのことをネット調べたら、驚いたことに、2012年に河内長野でお亡くなりになっていたそうです。翌年には大阪で追悼の演奏会が持たれて、ケオシヴィリさんが得意にしていたアザラシヴィリの「ノクターン」のチェロアンサンブル版が初演されたようです。日本とグルジアの文化交流、そして世界平和を願って行動をされていた方のようで、グルジア出身の移民の方々(中には力士も)たちの世話もなさっていて多くの人たちに愛されていたようです。

・2013年9月7日大阪でおこなわれた、
 ギア・ケオシヴィリさんの没後1年の追悼音楽祭のチラシ

 (アザラシヴィリの「ノクターン」のVcEns版が演奏された)
 →出典はコチラ(ケオシヴィリさんのHP)

 ケオシヴィリさんというチェリストのことは以前から名前だけは知っていましたが、こんなに素晴らしいCDがあったこと、そして彼がアザラシヴィリと友人であったこと、そして残念なことにお亡くなりになってしまったことを一度に知り、ただただびっくりしています。今は完売しているというケオシヴィリさんのCDが復活し、そしてホルヌングのCDリリースを機に、アザラシヴィリの音楽がもっとたくさん聴けるようになりますようにと願っています。そして、グルジアと日本の文化の架け橋として多大な功績を残されたケオシヴィリさんの魂が安らかならんことを。

■アザラシヴィリ/無言歌 サンクト・ペテルブルグ・チェロ・アンサンブル


※2016.02.28追記
このエントリーを書いた後、無言歌の原曲にたどり着きました。
こちらのページに動画のリンクを貼っていますのでよろしければご参照ください。
アザラシヴィリの「無言歌」について 〜 原曲は "Dgeebi Midian"

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  • 2017.06.25 Sunday
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