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【ライヴ 感想】純名里沙&笹子重治Duo Live 〜Ottava Listner's Party〜 (2015.08.09 中目黒トライ)

・純名里沙&笹子重治Duo Live
 〜Ottava Listner's Party〜
 (2015.08.09 中目黒トライ)




 ネットラジオOttavaのプレゼンター、ゲレン大嶋さんがプロデュースする"Ottava Listner's Party"の第2弾として、中目黒のライヴハウス、トライでおこなわれた「純名里沙&笹子重治Duo Live」を聴いてきました。

 私は純名里沙さんの大ファンであり、同時にOttavaの開局以来のリスナーでもありますから、今日の企画は私にとってはとても嬉しいものでした。どうして聴きに行かずにおられましょうか。

 純名さんの声をナマで聴くのは昨年暮れのプリンスホテルでのライヴ以来、7か月ちょっとぶり。その間隔を「久しぶり」と言っていいのかはよく分かりませんが、本当は追っかけして全部のライヴを聴きたいと思っているくらいなので、今日は「ああ、やっと聴けた」と、彼女の歌を聴く幸せをしみじみと感じながら聴きました。

 この7か月の間に、純名さんの歌、ますます味わいの豊かなものになったように思います。本当に細部まで自分の歌を研究し、表現や声を磨いてきたんだなということが窺える、とことん練り上げられた歌。でも、彼女の歌の魅力的なところは、曲の歌詞の一つ一つの言葉が、今初めて生まれてきたかのような新鮮な力を持ったものとして、生き生きとした感情を込めて歌われているところ。これぞホンモノのプロという高水準の歌とギターを聴かせてもらい、そして、いつもながらに美しい純名里沙さんの姿をうっとりと眺めているだけで、まさに至福のひとときを過ごすことができました。

 40歳を過ぎたら自分の顔に責任持てと言われますが、彼女の歌を聴いている時の私の顔には絶対責任は持てません。きっと、デレデレと鼻の下を伸ばし、まことにだらしない顔をして彼女の歌に浸っていたに違いありません。平和ボケのお花畑のおっさんの姿。

 こういう緩みきった幸福な時間を、とても大切にしたいなと思いました。

 この幸福感は、聴く者の戦意を喪失させます。純名さん自身、「聴いてると眠くなるような歌ばっかり歌います」とMCで言ってましたが、眠くなるんじゃなくて、争いごとやもめごとをエスカレートさせるような「戦意」を、人心から喪失させる、士気を低下させる音楽。そんな音楽は、戦争のような非常時には真っ先に削られるはずなので、自覚的に大切にしていかないと、すぐに私たちは失ってしまうことになる。歴史に学べばよく分かること。

 憎悪に身をやつし、無益な闘いなんかしてる暇があったら、この甘くて切ない音楽を、愛する人と一緒にいつまでも愛でていたい。アンコールで歌われた純名さん作詞、笹子さん作曲の「キャンドル」なんて、まさにそういう音楽じゃないでしょうか。愛する人とベッドで抱き合いながら、キャンドルの炎のように互いに揺られ、委ねながら、いつまでも何をするでもなくだらだらと気怠くじゃれていたい、みたいな艶やかな歌。

 このアンニュイな幸福に味をしめてしまったら、この幸せは手放したくない。争いごとなんてやめて、愛し合いましょうよと、まるでジョン・レノンみたいなことを言いたくなってしまう。ある種の人たちからすると「軟派」「非国民」としか思えないような音楽かもしれませんし、どこぞの国会議員のように「戦争に行きたくないというのは利己的・自己中心的」だというようなセリフで非難されるのかもしれませんが、こういう音楽がちゃんと社会の中で生きていられて、我々が堂々と楽しむことができることこそが、社会が健康であることの証なんじゃないでしょうか。だからこういう音楽を大切にしたい。しなくちゃならない。

 その意味で、メインプログラムの最後に、美空ひばりの「一本のエンピツ」を彼女が歌ったというのは、とても有意義なことだったと思います。勿論、官能とは無縁の歌ですが、これこそが、真の意味で「戦意を喪失させる」音楽である訳で、今日の8月9日という日のライヴのラストを飾る曲としてこれ以上に相応しいものはなかったんじゃないかと思います。昨年、横浜でのライヴで聴いた時もとても感動しましたが、今日はまた格別に胸に沁みて、目から汗が噴き出してきて大変でした。本当にいい曲だし、しみじみと、一つ一つの言葉に祈りを込めて歌う純名さんの歌、良かったです。

 純名さんご本人は、最後にしんみりした曲をし過ぎて引いちゃったかしらと心配なさっていましたが、普段クラシックを多少とも聴く人たちならば、暗い曲調でしんみり終わるコンサートなんて普通に体験していますから、少なくとも今日は問題は何にもなかったんじゃないでしょうか。

 あるいは、客層が違えば、昨年末に歌った「ニューヨークニューヨーク」とか、あるいは、曲順を変えて「I Get a Kick Out of You」が最後でも良かったのかもしれないですが、今日は「一本のエンピツ」がいいと思いました(実を言うと、今日歌ってくれることを期待していました)。

 それにしても、純名さんも仰ってましたが、今日の客席は、本当に熱心に音楽に耳を傾けている人たちにしか作ることのできない「生き生きとした静寂」があって、演奏するお二人もとてもやりやすかったんじゃないでしょうか。残念なのはPAがちょっと不調だったことくらいでしょうか。

 また、いつも付け足しみたいになってしまうのですが、やっぱり笹子重治さんのギター、本当にいいです。緩くて、でも、力強い。やる気なさそうで、でも、生き生きしてる。シャイで寡黙、でも、表現力は豊か。そんな両義性をふんだんに持ち合わせた複雑な味わいを、とってもシンプルな音の身振りだけで楽しませてくれる。MCで飛び出すジョークも、ガクタイならではのシニカルさと、中年ゆえのいぶし銀の渋さがあっていい。どうしてこのイケメンとは言いにくいおじさんが、次から次へと美女を引き寄せてしまうのかとちょっとした敗北感を感じながらも、彼のギターをもっと聴きたいなと思いました。

 純名里沙さんと笹子重治さんのデュオ、Ottavaでオンエアされている音源は、10月にはCDで発売されるのだそうです。純名さんにとっても、ファンにとっても、前作「ミスティ・ムーン」から8年、笹子さんとのデュオを始めてから3年近く、待ちに待った満を持してのリリース。CDが売れない時代にご苦労は多いと思いますが、私は少なくとも買いますし、聴いた感想も是非書きたいと思っています。詳細はまだオープンにできないそうですが、とにかく聴くのが楽しみです。

 ところで、今回、私は、「純名里沙さん」と彼女のことを「さん」付けで書きました。理由は、今日、ライヴが終わってから直接言葉を交わす機会が、ほんの少しだけあったからです。こちらから一方的に親近感が湧いてしまったので、呼び捨てにできないのです。舞い上がってしまって、何をお話したのかよく覚えていないくらいなのですが、会場で即売していた「ミスティ・ムーン」のCDをサインをもらうためにもう一枚購入し、サインをもらって握手した時の、ちっちゃくてあたたかい彼女の手の感触は、今もまだありありと残っています。残念ながら、洗ってしまいましたけれど・・・・。

 幸せな、幸せな、ライヴでした。このライヴを企画して下さったゲレン大嶋さんには、心から感謝です。純名さんも仰ってましたが、ゲレンさんの声はラジオで聞く以上に「いい声」でした。しかも癒し系の倍音がいっぱい含まれていて、この人も「戦意喪失」系の雰囲気を持った方だなと思いました。とても得難い存在だと思います。

 ただ、もしかすると、ライヴ後のパーティは、主催者側でまだどういう風にするのかイメージを掴みきれてないのかなと思いますが(何にもすることなく手持無沙汰にポケーッとしている人が結構おられました。私も含め)、これから会を重ねるうちに、いいかたちへと落ち着いていくのではないかと思います。私も開局以来のOttavaリスナーとして、また機会があれば参加したいです。

 ライヴが終わって帰ろうとエレベータに乗ると、見知らぬ女性が後ろから入ってきました。女性は、純名さんが9月にピアノと組んで開くライヴの告知チラシを見ていました。そして、私と女性との間でこんな会話がありました。

 女性  :(エレベーターに入って来て、私の顔を見て一言)
      あら、ギタリストの方だわ。

 私(独白):ん?笹子さんはまだ会場にいるけどなあ。
      誰と間違えてるんだろう?
      ※女性が私に微笑みかけるが、知らない人なのでとりあえずスルー)

 女性  :(チラシを私に見せながら)あなた次回のライヴはお出にならないの?

 私   :(どうやらこの人は私を笹子重治さんだと思ってるらしいと悟り)
      あのー、私はただの一般人ですよ。

 女性  :あら、ごめんなさい。でも、あなたギターの方によく似てらっしゃるわ。
      だから間違えたのよ。ごめんなさいね。

 私   :いえいえ、笹子さんに間違えられるなんて光栄です!   

 そうか、私は笹子さんに似てるのか。確かに外見だけは、笹子重治さんに多少の親近感はあるなと思いました。帰宅してそのことを家族に告げると、娘が「確かに似てるかも」と言いました。そうなんでしょうか。でも、笹子さんは大好きなアーティストですから、とても光栄なことだと思いました。そこで、私は考えました。

 もしも笹子さんがどうしても都合がつかない時は、私がゴーストギタリストになって笹子さんの替え玉として出演したいと。そして、彼女の歌に溶け込んでしまいたいと。でも、私はギターを全然弾けないという現実に遭遇して、やっぱり戦意喪失してしまいました。

 ならば、純名さんと笹子さんがオフィシャルな写真を撮影する際、忙しすぎて自分のスケジュールを把握できていない笹子さんが撮影をすっ飛ばした場合には、私が影武者になって、純名さんとツーショットの写真を撮りまくってもらおうと。でも、私は笹子さん以上に笹子さんのスケジュールを把握していないという現実に遭遇して、これまたやっぱり戦意喪失してしまいました。

 幸せな一夜の、幸せな記憶でした。おしまい。

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  • 2017.08.16 Wednesday
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