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【ディスク 感想】Silent Love 〜 あなたを想う12の歌 〜 純名里沙(vo)&笹子重治(g)(Victor)

Silent Love 〜あなたを想う12の歌〜
 純名里沙(vo)&笹子重治(g)(Victor)
 →詳細はコチラ(Tower/Amazon)





・Amapola
・Tea For Two
・Embraceable You
・My Romance
・星影の小径
・So In Love
・Can't Help Lovin' Dat Man
・Unusual Way
・I Get A Kick Out Of You
・Someone To Watch Over Me
・candle


---

 純名里沙のニューアルバム「Silent Love 〜あなたを想う12の歌〜」を購入以来、毎日聴いています。

 「Silent Love 」は、ここ数年、彼女とずっとデュオを組んできた笹子重治のギターとのデュオによる、ジャズのスタンダードとしても歌われることの多いミュージカルナンバーを中心とした曲集で、純名自身が作詞し笹子が作曲したナンバー「candle」も収録されています。いずれも、彼女の最近のライヴでは必ず歌われる曲で、彼女らがこれまでに全国各地の小さなライヴハウスを周って、コツコツと地道に築き上げてきたものをひとまず集大成し、満を持して世に問うたアルバムと言えます。

 惚れ惚れするほどに美しい彼女の写真が掲載されたライナーノートには、純名里沙自身のメッセージが掲載されていますが、彼女は「何度でも聞きたくなる、ほっとする、癒されるアルバムを、アコースティックギター1本と声だけで創りたい、と、切に思って」いた、また、「お手元に届いたこのアルバムが、ご自宅の愛聴盤になれたら、こんなに嬉しいことはありません」と書いています。

 アルバムを購入してからまだ1週間経っていませんけれど、私の中ではこの「Silent Love」は既に愛聴盤と呼びたいくらいに、繰り返し聴かずにはいられないものになっています。

 繰り返し聴いているのは、ブログで文章を書くためではありません。ただひたすらこのアルバムに収められた音楽が好きだからです。聴いているとこの上なく幸せな時間を過ごせるからです。

 このアルバム、いつも私は夜に聴いています。それは単純に夜しか聴ける時間がないからという理由もありますが、何と言っても夜に聴きたいのです。勿論、昼下がり、ゆったりとしたティータイムを過ごすというような場面で聴いてもいいはずですが、比較的スローで静かなナンバーが多く、聴いていて気持ちが鎮まる方向に動いていくアルバムの雰囲気は、一日を終えた夜、就寝前のひとときに疲れを癒して心地良い眠りを準備するために聴くのにぴったりなのです。

 でも、このアルバム、私はただ耳に心地よい上質のBGMとして聴き流すことはできません。自分がアマチュアで多少音楽をやっている耳で聴いてしまうからだと思うのですが、そこここで、「技術的に凄く難しいことをいかにも自然に簡単そうにやっている」場面に出くわすからです。

 純名里沙というシンガー、笹子重治というギタリスト兼アレンジャーの二人の音楽的なボキャブラリーの豊かさは、ライヴで聴いていてもほとほと感心してしまうのですが、このアルバムでは、セッションを組んでじっくり取り組んだパフォーマンスゆえ、次々と繰り出される「技」の鮮やかさはより一層際立っています。一体、ここまで作り込むのにどれくらいのリハーサルと本番を繰り返し、いろいろディスカッションし、試行錯誤を繰り返したんだろうかと考えると気が遠くなってしまうのですが、そんな「技」の存在と、努力の形跡を聴き手に気づかれないように最高の「技」を投入しているというような佇まいがまた凄いし、実にかっこいい。痺れてしまう。

 彼女らのそんな「作り込んだ自然さ」に溢れた歌に触れていると、なぜか、純名里沙の、そして笹子重治の心に湧き起こった「嬉しい」という気持ちがそのまま私に伝播してきて、私自身も「嬉しい」という気持ちに満たされる気がします。

 純名里沙の、自分が前からやりたいと思っていた音楽、そして作りたいと思っていたアルバムを、自分が心酔するミュージシャン笹子重治と組んで作れているという嬉しさ。笹子重治の、これまでの自分とは遠い世界にいた人との共演を通じて、まったく新しい音楽を得ることのできたという嬉しさ。きっとこのお二人とも、何度も何度も共演を重ねてきた末に、共に目指してきたものがたしかに「かたち」になっていくことの嬉しさを感じながらこのアルバムを作っていたに違いない。
 
 そして、言うまでもなく、聴き手である私も、素晴らしい音楽に触れることの嬉しさと、ライヴを聴いて感動し、音盤で繰り返し聴きたいとずっと待ち望んでいたものが実現したことの嬉しさをやはり噛みしめながらアルバムを聴いている。

 そんなたくさんの「嬉しさ」が交差したところに「Silent Love」がある。だからこそ、このアルバムは私にとっての愛聴盤となるための条件をすべて満たしているんじゃないかと私は思います。

 また、何度繰り返して聴いてもいつも発見があるということも、「嬉しさ」の一つかもしれません。聴くたびに、純名里沙の歌にも、笹子重治のギターにも、ああ、こんなに細かいところまで気にして演奏したんだな、こんなに豊かな表現が隠れていたんだというような気づきが得られ、まるで宝探しで宝物を見つけたような気分になるのです。

 例えば、笹子が歌の間にギターソロを弾く場面。彼はそれまでの抑え気味の静かな伴奏から、複雑で非常に凝ったコード進行を使いつつ、じわじわと自然に気分を盛り上げていくのですが、そこにはまったく作為など感じられず、気がついたらヴォルテージがグッと上がっていたというような趣がある。そして、彼はそこで「客席をあっためておいたぜ」とでも言うようなクールさで純名里沙の歌にさりげなくバトンを引き継ぐ。そんなふうに、ため息が出るくらいに美しいコンビネーションを随所で聴くことができます。

 音楽することのピュアな喜びを、持てる最高の技術を駆使して、「お仕事感まったくなし」で表現する。これぞ本当のプロの仕事だよなと思います。それがあるからこそ、聴き手である私が、まるで純名里沙、笹子重治という二人のアーティストと直接言葉を交わし、同じ時間と空間を共有しているかのようなあたたかさを感じながら時間を過ごせるのでしょう。先週は、いつまでもこの幸せな感覚に包まれていたいと願い、数回繰り返して聴いてから寝るという生活を送っていましたが、まだしばらくはこのスタイルは続けるだろうと思います。

 どの曲が一番いいかと問われれば、「全部」としか答えようがありませんが、けしからんくらいに小悪魔的キュートさを身にまとった「Tea for Two(二人でお茶を)」、彼女がミュージカルのステージでも歌ったという「Unusual Way」、そしてオリジナル曲の「candle」は、いずれもライヴで聴いて感動していたので、音盤で聴けて本当に嬉しかった。

 また、このアルバムを通して、これまで知らなかった魅力的なミュージカルナンバーを知ることができたことに感謝したいと思っていますし、笹子重治という人にも俄然興味が出て、これまで聴いたことがなかった笹子重治の率いるショーロクラブの名盤「武満徹ソングブック」にも出会うことができました。たくさんの「嬉しさ」と「出会い」をもたらしてくれたアルバムに心から感謝したいと思います。

 純名自身が言うように、このアルバムはこれまでの活動のエッセンスをぎゅっと詰め込んだものであると同時に、これからの「ほんとうの旅」の始まりを刻み込んだものなのだろうと思います。ファンである私は、彼女が踏み出した第一歩を楽しみ、後からずっとついていきたいと強く希望します。

 彼女らのデュオは、これからタワーレコードなどCDショップでのインストアライヴを実行するのだそうです。私自身は11/25の渋谷のタワーレコードでのライヴ&サイン会の参加券をもらったのでそちらに行くつもりです。そこでまた進化した2人のデュオを聴けることを楽しみにしています。

 ところで、このアルバム、タワレコではJazz売場で扱われています。本当はJazzという括りからはみ出たアルバムだと思うのですが、J-POPというのもちょっと違う気がするし、ワールドでもないし、確かに分類しにくい面はあるかもしれません。でも、本当に上質な音楽が聴けるアルバムなので、クラシック売場に置いても結構売れるんじゃないかと思ったりもします。

 最後に。このアルバムのライナー、クレジット欄には”Special Thanks"として、これまで彼女らのライヴの場所を提供した人たちや、吉俣良さん(薬師丸ひろ子のツアーのバンマスやってたあの方でしょうか)の名前と並んで、「ライブに足をお運びくださったすべてのお客様に」という記載があります。私も昨年来、4回、彼女らのライヴ(アコーディオンやヴァイオリンとの共演もありました)に行きました。私の拍手の音(と、もしかするとブログの文章の言葉)が、このアルバム成立のために、たとえほんの小さなものであっても何がしかの力になれたのならそれ以上幸せなことはないし、このアルバムは「私たち」聴き手のものでもあると誇らしく思えます。次のアルバムに向けて、これまで以上にライヴに行って拍手をし、感じたことを言葉にしていきたいです。

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  • 2017.08.16 Wednesday
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