Langsamer Satz

クラシック音楽のことなどをのんびり、ゆっくりとお話したいと思います
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ますます人肌恋しくなるではないかどうしてくれる 〜 CINEMA MUSIC JAM(純名里沙、TOKU、溝口肇、サラ・オレイン)
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    ・CINEMA MUSIC JAM
     純名里沙、TOKU、溝口肇、サラ・オレイン
     (2015.10.29 六本木ヒルズ・アリーナ)



     先日、本屋で次に読む本を探していたら、タレントの壇蜜が文庫で書き下ろした「壇蜜日記2」というのが目に留まりました。本を手にとって面白そうだったので、前から気になっていた前作と合わせて購入することにしました。文章はちょっと不器用な印象だけど、切れ味鋭い言葉が胸に突き刺さるのです。

     これは買わねばと思いながらページをめくっていると、こんな言葉が目に飛び込んできました。

     「ますます人肌が恋しくなるではないかどうしてくれる」

     なんで彼女が人肌恋しくなるのかというと、2年前の秋、彼女がレギュラーを務めていた番組の終了が決まり、秋真っ盛り、別れを考えさせられたからなのだそうですが、確かに、秋は人肌が恋しくなるというのは分かるし、「どうしてくれる」という言葉を口にしたくなる気持ちも分かる。彼女の放った何気ない言葉に貫かれてしまいました。

     音楽を聴いていて人肌恋しくなるということもよくあります。そう、人肌恋しくなる音楽というのがある。

     前のエントリーで取り上げた純名里沙と笹子重治の「Silent Love」で聴ける音楽もそうです。毎日毎日聴いていると、まあ、秋という季節だからということもあるからでしょうが、お二人に「どうしてくれる」と言いたくなるくらいに何だか人肌恋しくなる。なのに、このお二人のライヴは最近どうもタイミングが合わなくて、来月のタワーレコード渋谷のインストアライヴまで聴きに行けない。人肌恋しい気持ちを一体どうしてくれる。

     そんな中、純名里沙が、今、六本木で開催されている東京国際映画祭と関連してJ-WAVEが開催した「CINEMA MUSIC JAM」という催しの一環に出演するというので聴きに行ってきました。ただ客席から彼女の歌う姿を見て、歌を聴くだけですから、決して人肌恋しさが解消される訳ではなく、むしろ人肌恋しさが高められるだけなんじゃないかという気もするのですが、そんなことはどうでもよろしい。彼女の声が聴きたかった。

     5日間連続でおこなわれるステージは、フリューゲルホーン奏者でヴォーカリストのTOKUがメインパーソナリティを務め、チェリストの溝口肇、最近売り出し中のヴォーカリスト、サラ・オレインが毎日のゲストとして出演、ピアノ、ベース、ドラム、そしてフリューゲルホーンという顔ぶれが揃ってパフォーマンスを披露し、純名里沙がスペシャルゲストとして登場する。

     TOKUのクールなあたたかさをたたえた音、音楽的なキャパシティの大きさを感じさせる雰囲気(シナトラの「夜のストレンジャー」、アズナブールの「She」)。

     溝口肇の弾くチェロの音から沁み出してくるそこはかとない哀愁(ベット・ミドラーの「ローズ」、「ニューシネマパラダイス」)。

     弾けんばかりのパワーを放射したサラ・オレインの歌(「ニューシネマパラダイス」(w/サラ・オレイン)、「ポカホンタス」、「オールウェイズラブユー」)。

     そして、純名里沙。(「虹の彼方に」「I Get A Kick Out Of You」「リトルマーメイド」)。

     最後には全員がチャップリンの「スマイル」。

     いや、どいつもこいつも、俺を人肌恋しくさせやがって。まったく、どうしてくれる。

     聴いてる私がこんなに人肌恋しくなるんだから、演奏してる人たちはもっと人肌恋しくなるんじゃないか?彼女ら、彼らの人肌恋しさは誰が癒してあげてるんだろうか?

     そんなどうでもいいことを考えて音楽を聴きながら、いろいろと私の好きな映画音楽のことを思いました。いろいろあるなあと。つい最近聴いた鈴木大介のアルバム「キネマ楽園」を思い出したり、今年見た映画「野火」「この国の空」「あの日のように抱きしめて」の音楽を思い起こし、大好きな映画の音楽に思いを馳せ。

     私が一番好きな映画の音楽って何だろうか?と考えたのですが、やっぱりチャップリンの「モダンタイムズ」の中の「スマイル」は外せない。私がチャップリン・フリークであるという理由もありますが、この曲は、本当に何度聴いてもいいなあと思います。誰がやっても。

     「モダンタイムズ」のラストシーンを思い出す。絶望から逃れて新しい道を歩もうとするチャーリーと少女。くじけそうになる彼女に、チャーリーは右手を口の横にもっていて微笑み、「ほら、笑ってごらん」と語りかける。そして、二人は、何もない荒野の道を手をとって歩いていく。忘れ難い二人のシルエットが脳裏に浮かびました。

     これぞ人肌恋しくなるシーンだし、そこに流れる音楽は輪をかけて私を人肌恋しくさせる。3人がリレーして紡ぐ歌に心があたたまる思いをしつつ、誰かの手のぬくもりがほしくなる。まったくどうしてくれる。

     ライヴが終わって六本木ヒルズを歩いていると、そこかしこにハロウィーンの飾りつけがあって、私に親しげな視線を投げかけてくるのだけれど、私は全然関心がないので「俺んちは仏教だ」とカボチャどもを無視して歩いていると、頬に当たる秋風が寂しい。通り過ぎる人たちは私とはまったく無関係だし、お互いに無関心。

     ますます人肌恋しくなる状況ですが、何をやっても満たされることはなさそうなので、おとなしく家に帰ることにしました。家族と話をして人肌恋しさは一瞬忘れることができましたが、彼女らが床に就いた後、一人でまた純名里沙のアルバムを聴く。

     今日聴いた「虹の彼方に」を聴きたくて、純名里沙の直筆サイン入り前作「ミスティムーン」を聴き、最近のヘビーローテーション「Silent Love」を続けて聴く。
     
     やっぱり人肌恋しくなる。どうしてくれる。
     
     仕方がないので、今日のステージで見た彼女の姿を思い起こすことにする。

     彼女がTOKUの紹介でステージに上がった時の、私の周囲に起こった「うわーっ」というどよめき。華のある人が登場した時に起こる、あれです。私も彼女の姿を見た瞬間に、溶けました。美しい。

     最近の、笹子重治と一緒に「ちっちゃなところでひっそりと濃密に歌う」というスタイルとは違って、結構な大人数の前で、しかも野外ステージで、客席のすみずみまで届くように歌い上げるというシチュエーションでしたけれど、「ミスティムーン」と「Silent Love」の両方の良さをブレンドしたような歌もまた良かった。特に曲の盛り上がりでリミッターをかけずにピンと張る彼女の声の魅力を満喫できるのがいい。

     こういうステージに出たり、他のアーティストと組んで音楽をやったりすることで、彼女の中で音楽がもっと深まり、笹子重治とのデュオがさらに味の濃いものになるんじゃないでしょうか。

     そして、私は妄想する。今度はどんな曲を歌ってくれるんだろうか?もし歌ってほしい曲があるとしたら何だろうか?これから彼女はどんなシンガーになっていくのかな?彼女の中にはまだどんな魅力が潜んでいるのかな?

     そんなことを考えているうち、どんどん人肌恋しくなる。どうしてくれる。

     どうにもできないし、誰もどうもしてくれないので、とりあえず寝ることにしました。

     10月のある日のお話でした。


    | nailsweet | 純名里沙 | 03:28 | comments(0) | trackbacks(0) |
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