Langsamer Satz

クラシック音楽のことなどをのんびり、ゆっくりとお話したいと思います
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【気になる演奏家・26】イザベル・レナード(Ms)
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    ・イザベル・レナード(Ms) Isabelle Leonard






     
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    ・Preludios −スペイン歌曲集ー
     イザベル・レナード(Ms) ブライアン・ゼガー(P)

     →詳細はコチラ(Tower/HMV)





    <<曲目>>
    1) モンポウ:夢の戦い〜君の上には花ばかり
    2) ファリャ:ロンダのパン
    3) ファリャ:前奏曲(Madres, todas las noches)
    4) ファリャ:幼子を腕に抱きしめる母たちの祈り
    5) ファリャ:大波
    6〜12) ファリャ:7つのスペイン民謡
    13) ロルカ:セビリャの子守歌
    14) バベルデ:クラベリートス
    15) ロルカ:巡礼者
    16) グラナドス:麗しき人
    17〜21) モンサルバーチェ:5つの黒人の歌
    22) トラディショナル:スペイン民謡の子守歌


    ・ラヴェル/歌劇「子供と魔法」
     小澤征爾指揮サイトウ・キネン・オーケストラ
     イザベル・レナード(Ms)ほか

     →詳細はコチラ(Tower/HMV)




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     昨日の新聞の広告を見てびっくりしました。先だってアメリカのグラミー賞をとった小澤征爾とサイトウキネンのラヴェルの「子供と魔法」のCDが、結構なスペースで宣伝されていたのですが、何だかものすごい「感動のストーリー」テイスト満載のものになっていたからです。しかも、いくつか紹介されていたリスナーのコメントが味わい深くて、このCDの内容に感動してコメントを寄せたとは思えないものばかりが掲載されている。

     何となく居心地の悪さを覚えました。グラミー賞をとること自体はそれはそれでおめでたいことで、私も素晴らしいことだとは思うのですが、そんな何でもかんでも、「賞をとっておめでとう!感動した!勇気をありがとう!」みたいな空気にもっていく必要なんてあるのかと疑問なのです。このディスクは賞とったから価値あるっていう訳じゃないでしょ?いいアルバムだから賞もらったんであって、そこの順番逆にしたらダメなんじゃないか?一過性の聴き手しか獲得できなくなるのでは?と。

     でもまあ、いいでしょう。きっとこうしなければならない事情があり、こうすべきだと判断して宣伝を打ったのでしょうし、実際にそれで売り上げも上がるのでしょう。

     私も件の小澤のラヴェル、聴きました。グラミー賞はまったく関係なく、小澤の指揮するオケの音色のパレットの豊かさ、柔軟ですみずみまで生命の通ったリズムがただただひたすら美しく、何と味わいの濃い演奏だろうかと深い感銘を受けました。歌手もスターはいませんが、皆実力の高い人たちばかりで、極上のオケの響きに包まれた美声が心地良く、まさに耳の御馳走としか言いようのない音楽になっていました。しかも、ただ音が快く通り過ぎていくのではなく、主人公の子供の無邪気、無垢と、それゆえの残酷さ、あるいは、子供をとりまく自然の恐ろしさと包容力という、相反するものたちがそのまま音で表現されていて、聴き終わった後に私の心に何がしかザラッとした感覚を残していってくれるという点が凄いと思いました。このオペラ、ちゃんと聴くのは初めてでしたが、カラフルなオーケストレーションや美しい旋律の背後にあるものの含蓄の深さに、ほとんど衝撃に近いものを受けました。これが賞を受けるなんてのは当たり前のことというくらい。

     ところで、小澤の「子供と魔法」で主役の子供を演じていたイザベル・レナードというメゾ歌手、私はとても気になっています。実は、小澤のディスクを購入する前に、彼女のデビュー盤となる"Preludios"というアルバムを聴いていて、とても気に入っていたのです。

     Delosから発売された"Preludios"はスペイン歌曲集で、モンポウ、ファリャ、ロルカ、サンファン、グラナドス、モンサルヴァーチェらの歌曲、アンコールとして古謡の子守歌と、計22トラックの歌が収録されています。

     ふるいつきたくなるような魅力的な選曲を、レナードは深みのある、しかし決して品位を失わない香しい声で、生き生きと歌っています。音域によって声のムラがなく、声にも歌い方にも変なクセがないのですっと耳に入ってくる。

     特に、有名な「7つのスペイン民謡による歌」を含めて11トラックが収録されたファリャの歌がとろけそうになるくらいにセクシーなのと、モンサルヴァーチェの「5つの黒人の歌」が底抜けに楽しいのが嬉しい。

     ファリャは最近私にとって特に大切な作曲家の一人で、いろいろ聴いているつもりではいるのですが、歌曲はその「7つの歌」以外はさほど印象に残っていませんでした。しかし、こんなにも甘美さとほろ苦さが絶妙に混じり合い、情熱と倦怠がないまぜになった歌なのだということをレナードの歌で初めて教えてもらった気がしています。

     モンサルヴァーチェも、「とにかく聴いてみて!」と人に勧めたくなるような躍動感があって、この作曲家はどうして日本では全然人気がないんだろうかと不思議になります。特にトラック21の「黒人の歌」。コンサートのアンコールでやったら大ツケはずです。YambamboとかMamatombaなんて言葉が連呼されるのを聴くと、どうしても天気予報番組のテーマ曲を思い出してしまいますが。

     アルバム冒頭のモンポウの哀愁漂う歌も心に沁みる。モンポウの歌曲というと「魂の歌」という名曲がありますが、この「君の上には花ばかり」も名曲と呼ばれるに相応しい内容をもった歌じゃないでしょうか。そしてなめらかなレガートと、柔らかなヴィブラートでしっりとした情感を伝えてくれるレナードの歌、私はのっけからノックアウト状態です。

     そして、最後のトラックのほとんど地声で歌われた子守歌が何だかいい。たった48秒の短い歌ですが、これはオトナの子守歌なんじゃないか、ああ、私も耳元でこんな歌を囁かれながら眠りにつきたい。そう思わずにいられない。

     ピアノ伴奏のゼガーも、レナードの歌をさりげなくサポートしていて素晴らしい。何より、たっぷりとした潤いを保った響きが、レナードの歌に彩りを添えていて。

     彼女は今はMETの看板歌手の一人として活躍していて、特に「フィガロの結婚」のケルビーノ役で高い評価を受けているらしい。「コジ・ファン・トゥッテ」「皇帝ティトゥスの慈悲」「ジュリアス・シーザー」「セビリアの理髪師」「チェネレントラ」「カルメル修道女の会話」などでも各国のオペラハウスに出演。錚々たる指揮者とオケとの共演もある。映像もティツィアーティの「フィガロ」などいくつかリリース済みとのこと。大学生の時にお父様をガンでなくしたとのことで、前立腺癌の研究基金のサポーターにもなっているとか。

     その声だけでなく、写真や動画で見るレナードは、美しい。惚れ惚れするくらいの美女です。小澤のラヴェルではその美貌はメイクで目立たなくなってしまっていましたが、彼女のHPで見るケルビーノやロジーナ、セストに扮した彼女は美しい。可愛い。

     やっぱりこの人もナマで是非聴きたい。勿論、彼女の美貌をこの目で確かめたいということもありますが、それ以上に、この余りにも魅力的なスペイン歌曲の数々をずっと聴いていたい。モンポウやファリャの美しい歌曲、モンサルヴァーチェの愉しい歌を聴きたいです。

     小澤とサイトウキネンの素晴らしい「子供と魔法」のディスクが、小澤という押しも押されぬ巨匠指揮者や、世界にも名の知れたサイトウキネンという一流オケだけでなく、レナードのような若くて才能のある音楽家への我々聴き手の関心を高め、このアルバムで聴ける数々のスペイン歌曲のような、さほど知られているとは思えないけれども、間違いなく深くて多様な楽しみを与えてくれる素敵な音楽が、幅広い層にも届くといいなあ、などと言うとまったくもって偉そうなのですけれど、でも、私は心からそう思います。

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