Langsamer Satz

クラシック音楽のことなどをのんびり、ゆっくりとお話したいと思います
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【ディスク 感想】ルーファス・ウェインライト "Take All My Loves"
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    ・"Take All My Loves - 9つのシェイクスピアのソネット"
      ルーファス・ウェインライト 、アンナ・プロハスカ他(DG)
     →詳細はコチラ(Tower/HMV)


     
    <<曲目>>
    1) ソネット43〜シアン フィリップス(語り),
    2) ウェインライト:When Most I Wink(ソネット43)〜アンナ・プロハスカ(ヴォーカル),
    3) ウェインライト:Take All My Loves(ソネット40)〜ルーファス・ウェインライト(ヴォーカル),
    4) ソネット20〜フレイリー・ハインズ(語り),
    5) ウェインライト:A Woman's Face(ソネット20)〜アンナ・プロハスカ(ヴォーカル),
    6) ウェインライト:For Shame(ソネット10)〜アンナ・プロハスカ(ヴォーカル),
    7) ソネット10〜ピーター・エア(語り),
    8) ウェインライト:Unperfect Actor(ソネット23)〜ルーファス・ウェインライト(ヴォーカル),
    9) ソネット29〜キャリー・フィッシャー(語り),
    10) ウェインライト:When In Disgrace With Fortune And Men's Eyes(ソネット29)〜フローレンス・ウェルチ(ヴォーカル),
    11) ソネット129〜ウィリアム・シャトナー(語り),
    12) ウェインライト:Th'Expense Of Spirit In A Waste Of Shame(ソネット129)〜アンナ・プロハスカ(ヴォーカル),
    13) ウェインライト:All dessen mud〜ルーファス・ウェインライト(ヴォーカル),
    14) ウェインライト:A Woman's Face (Reprise)(ソネット20)〜ルーファス・ウェインライト(ヴォーカル),
    15) ソネット87〜インゲ・ケラー(語り),
    16) ウェインライト:Farewell(ソネット87)〜アンナ・プロハスカ(ヴォーカル)


    ---

     昨年、オペラ「プリマドンナ」でドイツ・グラモフォンから作曲家としてデビューしたアメリカのシンガーソングライター、ルーファス・ウェインライトの新盤"Take All My Loves"を聴きました。

     これはシェークスピア没後500年を記念して発売されたもので、ウェインライトが、稀代の戯曲家の残したソネットに音楽をつけた9曲を収録しています。曲間にはいくつかのソネットの朗読が挿まれている。

     今回はルーファス自身がヴォーカルとして参加している(ソロ2曲、バックコーラス3曲)ほか、最近はすっかり名歌手として認知されたソプラノのアンナ・プロハスカ、シンガーソングライターのフローレンス・ウェルチ、女優のヘレナ・ボーナム・カーターという豪華メンバーが歌っています。またアルバム全体は、アメリカの有名な舞台演出家ロバート・ウィルソンの協力の下制作されたとのこと、アルバムのコンセプトなどはウィルソンと相談しながら作り上げたものなのかもしれません。

     ルーファス・ウェインライトの曲は、いくつかの曲はビートの入ったロック調の音楽ですが、ほとんどの曲はBBC交響楽団のメンバーが参加するなど、基本的にはクラシック音楽の流儀で書かれ演奏されています。それらをクラシック音楽ファンの立場から見れば、はっきりとした調性をもち、甘美とさえ言える旋律が印象的な「分かりやすい」音楽と聴こえます。しかし、ポップ・スターが背伸びしてクラシックに挑戦したというような代物では決してなく、独創的なファンタジーに溢れた美しい音楽だと私は思います。相変わらず意外な転調が心地良い刺激を与えてくれるし、何よりも、この伸びやかで、心の琴線に触れるメロディーには完全に「持っていかれて」しまいます。特にイギリス歌曲(特にディーリアス)を思わせるような静謐な美しさをもった歌を聴いていると、心震えるのを止めることはできません。

     いや、そんなのは私の好みに過ぎないのは分かっているのですが、それでも、音楽学的、音楽美学的にも、これらの曲の価値は、定量的に説明できるのではないか、そんな気がしてなりません。ドイツ語で歌われるソネット第66番でのユダヤ人のクレツマー的な音楽も強く印象に残る演劇的な作品です。

     アンナ・プロハスカが歌う5曲がやはり素晴らしい。ウェインライトの曲を好んで歌ったディーヴァと言えば、ルネ・フレミングの歌が有名ですが、私は透明な声と清楚な歌い口が身上のプロハスカの歌は、ことシェークスピアのソネットを歌うという目的においては、地声に近い状態で歌っていた先輩よりも、より好ましい結果を生んでいるのではないでしょうか。

     また、このアルバムで初めて知ったフローレンス・ウェルチの歌がいい。ちょっと硬質な声で、リリカルに、のびやかに歌う彼女の歌は、私の脳を直撃しました。この人の歌、是非ともきちんと聴かねばならない気がしてきました。

     どうなのでしょうか、クラシック音楽ファンからこのルーファスの新盤はどのように受け容れられるのでしょうか?拒絶されるのでしょうか?クロスオーバーものだろ、と低く見られてしまうのでしょうか?こんなの作ってるから最近のグラモフォンはダメなんだと言われてしまうのでしょうか?

     それは私には分かりません。いろいろな聴き方、考え方があって良いと思いますし、それらの意見は尊重するつもりです。ただ、私自身は、私がここ数年来彼のファンであるということを差し引いても、実に刺激的で心に響くアルバムであると非常に好意的に迎えています。前作も含め、彼がグラモフォンからクラシカルな音楽をリリースしたことはとても良いことだと思います。クラシック音楽畑のミュージシャンも、きっと彼の音楽から何らかの影響や示唆を受けていると思うからです。勿論、ウェインライト自身が、クラシックの音楽家と共演することで一番影響を受けているのかもしれない。これこそ最良の意味でのクロスオーバーだと思います。

     ですから、是非とも、彼のクラシック音楽作曲家としての今後を見守っていきたいです。また、彼のSSWとしての魅力的な側面も楽しませてもらいたいと切望しています。あの"Poses"のようなポップなアルバムも聴かせてほしい。このところ彼は、私の敬愛してやまないポール・サイモンやビリー・ジョエルに認められ、各地で共演も果たしていますから、そこで得た経験を活かし、さらに味わいを深めた歌を聴かせてほしいと思います。
    | nailsweet | クラシック音楽 ディスク | 02:19 | comments(0) | trackbacks(0) |
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