Langsamer Satz

クラシック音楽のことなどをのんびり、ゆっくりとお話したいと思います
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【雑記】アマチュア・オーケストラの未来について考えたこと
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     少し前のことですが、妻が出演するアマチュア・オーケストラの定期演奏会を聴きに行きました。

     

     出演者の思いがこもった熱い演奏を聴きながら、満席とはいかないまでも相当に埋まった客席を、舞台上手のバルコニー席から ぼんやりと眺めていたのですが、聴きに来ている人たちの年齢層が思ったよりも高いことに気づきました。アマオケの聴衆は出演者の縁故関係者が多いので、出演者も毎年律儀に高齢化している以上は当然のことかとその時は思ったのですが、あとで聞いたところでは、ホール近辺にお住いの方々が結構聴きに来られているのだそうです。
     また、そのしばらく後で、大学時代のオケ仲間と偶然街中で出会い話をする機会があったのですが、彼からも同様のことを聞きました。彼が最近出演したアマオケでも、新しめのチャレンジングな曲を演奏したにも関わらず、やはり地元の高齢者が多く聴きに来ていて驚いたというのです。
     以前はプロオケを聴いていたけれど、都心のホールは遠くて行くのがしんどい、あるいは、年金暮らしでプロの演奏会のチケットには手が出ない、そんな理由から、日曜の午後、近所のホールで開かれる無料(もしくは廉価)のアマオケの演奏会に足を運ぶ高齢者の方が多いのでしょうか。

     

     アマオケの演奏会を聴きに来る人の数が増えていて、しかも急速に高齢化している。そうなると、この10年後、20年後には客席の風景はどうなっているのだろうかと考えずにはいられません。

     演奏会に来てくれている人たちの次の世代の聴衆がホールを埋め、今と同じように年齢層の高い聴衆の多い客席の景色が広がっているのでしょうか。それとも、これから去っていく人たちの席は埋まることはなく、閑散とした雰囲気の中で演奏会がおこなわれるのでしょうか。そのもっと先、例えば私の子供達が大人になる頃にはどうなっているのでしょうか・・・。
     私はその未来予想図を描くことはまったくできませんが、これから日本は少子高齢化が進み、全体の人口も減っていくのが確実な状況では、クラシック音楽に興味を持つ若者の割合が激増するという奇跡でも起こらない限り、放って置けば自然と空席が増えていくのは間違いないだろうと思います。

     

     これは聴衆だけの現象ではありません。オケの出演者側にも、平等に、そして確実に、少子高齢化の波が押し寄せてきます。市民オケの母体である大学オケはこれから学生がどんどん減っていく訳ですから、スムーズな世代交代が難しくなる方向へと向かっていくことも間違いありません。

     それに、出演者の中では、私以上の中年世代になると、親や配偶者の介護でオケ活動を続けるのが難しくなる人が増えてくるかもしれないし、責任のある仕事を任されて忙しくなったとか健康に問題があるとか、そういった人それぞれの切実な理由でオケ活動を続けることが難しくなり、やがて離れていかざるを得ない人も出てくることでしょう。そうなると、活動を縮小したり、近隣のオケと合併するなどの対応を迫られるオーケストラも出てくるでしょうし、最悪の場合は消滅してしまうケースもあるのかもしれない。

     

     そんな風に、弾き手も聴き手もスムーズな世代交代が難しく、縮小以外のシナリオが想像しにくいという現実に思いを致すと、もしかするとアマオケはこのまま絶滅危惧種になっていくのだろうかと一瞬不吉な思いが頭をもたげてきます。

     

     でも、私は楽観しています。確かにこれからアマオケ界隈では縮小や複数団体の合併などの再編が起こり、室内楽へとシフトしていく人たちも増えるなどして、全体としては活動の場が小さくなっていくのかもしれません(首都圏や大都市以外ではもう始まっているのかも)が、アマオケの存在を求める人が決してゼロになることはなく、その存在意義はこれからも維持される、あるいはさらに高まっていくと信じるからです。
     オーケストラをやりたいという人は、たとえ少数でも絶対になくならないだろうし、その動機が縁故だったり経済的なものだったりしても、アマオケの演奏会に足を運ぶ人が絶えることはないはず。さらに、アマオケは、特に若手指揮者を育てる場としても機能していて、経験の浅い指揮者が自分の腕を磨く貴重な機会を与えてもいる。ですから、どんなに状況は厳しくなっても、その存在を求める人がいる限り、アマオケの内外で、何とか苦境の中を持ちこたえ生き永らえていこうという努力はなされ、その灯はいつまでも消えることはないだろうと確信します。

     

     ただ、そうは言っても、アマオケは脆い存在でもある。社会の状況が悪くなれば、真っ先にその活動が制約を受けるであろうことは容易に想像がつきます。基本、運営は出演者の自腹で、各出演者の家計にある程度の余裕がなければオケ活動の優先度は落ちるだろうし、たとえアマオケの経済状況が悪化しようともプロオケとは違って公的な助成金は出ず、所詮は趣味なんだから潰れるのは自己責任だと突き放されてしまうかもしれません。

     また、国をとりまく環境が最悪の状態になってしまえば、アマオケなどは贅沢だ、日本人ならそんなことにうつつを抜かすなどできないはずだ、というような空気だって醸成されかねない。悲観的に考えすぎと言われてしまうかもしれませんが、自粛とか忖度という言葉がいまだに現役である日本の現状を思えば、まったく現実味のない話とも言えない。


     であるなら、これはアマオケに限らず音楽を始めとする芸術・文化全体にも当てはまることですが、たとえ社会がどんな状況になろうとも、いや、むしろ苦しい時にこそ、音楽は社会にとって必要不可欠なインフラなのであって、アマオケもその中で一定の役割を担っているのだという合意をこれまで以上に広くとりつけていくことが必要なのではないでしょうか。


     そのために具体的に何をなすべきなのか、と問われればたちまち答えに窮してしまうのですが、結局は、我々アマチュア音楽の担い手が、アマオケが身近なところにあることで自分たちの生活がどんなに豊かになっているか、どれほど力を得ているかということを、今まで同様に、いや、今まで以上に社会の中で示し続けることに尽きるのではないかと思います。

     音楽を生きる糧として楽しみ、音楽をこよなく愛する人たちが、忙しい日常の合間をぬって集まり練習を重ね、演奏会でその成果を発表する。かけがえのない音楽体験を経て心身ともにリフレッシュして現実に戻り、生き生きと毎日を生きていく。活躍できているかとか、かたちとして何が残るかというような損得勘定は脇に置き、アマオケに関わる人々の心にある音楽とともに生きることの喜びと幸せが、周囲の人たちにも何となくでも伝わっていく。そんな音楽を通した幸せのお裾分けが広がり、幸福のトリクルダウンが起きる。そんな風になればいい・・・。


     大きな風呂敷を広げた割に、結局はこんな抽象的なスローガンしか言えず忸怩たる思いですし、オケは長年開店休業状態で、日頃は負のオーラしか発していない陰気な私がそんなポジティブなことを口にするのも変な話ですが、でも、結局のところ、そんなところにしか、愛する音楽や文化を守っていくための鍵はないのではないでしょうか。

     

     私が聴いたアマオケの団員(私の古くからのオケ仲間)は、練習期間中にこんなことを言っていたそうです。

     

     「自分はいつも全然弾けなくてホントは落ち込まなきゃいけないんだろうけど、楽しくてしょうがない。いいのかなっていうくらい楽しい」

     

     アマオケの弾き手の中に広がる「楽しい」という気持ちが周囲の人たちをも巻き込んでいき、「音楽って社会になくてもいいけど、あったらあったで、きっといいことはあるんだろうな」という緩やかな合意が生まれる。音楽によって幸せになる大人たちを見て、子供達も音楽に興味を持ち、自分で楽器を弾きたいと思い、未知の音楽に触れてみたいと願うようになる・・・。

     

     そんな風になればいいなとぼんやりした夢を巡らせつつ、いつものことながら、何のオチもなく、何の主張もなく、何の建設的な批判もなく、穏やかにこのエントリーを閉じることとします。

    | nailsweet | クラシック音楽 雑記 | 02:37 | comments(0) | trackbacks(0) |
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