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アザラシヴィリの「無言歌」 〜 「音楽の友」(2016.07)記事掲載、クァルテット・エクスプローチェによる新盤発売
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    ・クァルテット・エクスプローチェ〜響炎する4本のチェロ

     アザラシヴィリ/無言歌

     →詳細はコチラ(Tower/HMV)

     

     

     


    ・ヴァージャ・アザラシヴィリ Vaja Azarashvili



     

     

     

     私がかねてから偏愛する曲で、今年の冬に指揮者の山田和樹氏が出演するFM番組で放送されて大きな話題となったジョージアの作曲家ヴァージャ・アザラシヴィリの「無言歌」について、2つのトピックを備忘のために記しておきます。

     

     まず、「音楽の友」の先月(7月)号の山田和樹氏の連載「私的音楽論考−指揮台から見えること」の「アザラシヴィリと著作権」という記事。
     そこには、彼が高校生の時にサンクト・ペテルブルク・チェロ・アンサンブルの演奏する「無言歌」と出会ったきっかけと、オーケストラ編曲するに当たって著作権をクリアするためにピアニストの碓井俊樹氏にジョージアまで行ってアザラシヴィリ本人に許可を取りに行った時のエピソードなどについて生き生きとした筆致で書かれています。
     私も山田氏同様にこの「無言歌」に魅了されて、チェロのパートの「耳コピー」をやった(途中で挫折)ところまでは同じですが、さすがに彼は音大出身、仲間に依頼して楽譜を作ってもらい、果ては作曲家本人とコンタクトをとるところまでやっている。この記事のメインテーマは著作権のようなのですが、山田氏のこの曲への深い深い愛情を感じて、心の中で小さく「同志!」と叫びながら嬉しい気持ちで記事を読みました。
     しかも、このカラーページの記事には「無言歌」の自筆譜の写真まで掲載されています!もっとも、その譜面は私が熱望したチェロアンサンブル用の編曲ではなく、チェロのソロと弦楽五部(Vn×2,Va,Vc,Cb)、ピアノ伴奏のためのものでしたが、私が途中まで耳コピーして楽譜に起こしていたものと大体同じ(Cbのピチカートは想定外ですが)で、雑誌を手にとってこれを見た時には感無量でした。思わず涙が出てしまいました。
     ところで、アザラシヴィリに会ったという碓井氏というのは、山田が率いる横浜シンフォニエッタのジェネラル・マネージャーであり、かつ、最近プログレ・ロックのピアノ編曲を収録したCDをリリースしたピアニストですが、この方自身も「無言歌」をピアノ編曲して演奏しておられるなど、相当にこの曲を気に入っておられるらしい。碓井氏はアザラシヴィリから日本での楽曲の著作権管理を任されているそうで、彼の作品の楽譜が公開される日を待っているとのこと。
     山田氏は記事の最後で「いつの日か、アザラシヴィリ・ブームが到来することを夢に見」ていると書いておられますが、一介のちっぽけな音楽ファンとして、そしてアザラシヴィリの音楽を懸命に追いかけてきたファンとして、彼の言葉に諸手を上げて賛成ですし、山田氏や碓井氏の演奏するアザライシヴィリの音楽を実演、ディスク問わず是非聴きたいと思います。非常に印象深い記事、読めて良かったです。

     

     アザラシヴィリの「無言歌」についての次のトピックは、新譜CDで、クァルテット・エクスプローチェという4人のチェロ・アンサンブルのデビュー盤「クァルテット・エクスプローチェ〜響炎する4本のチェロ」です。クァルテットのメンバーはいずれも在京オケのチェロ奏者で、市寛也(N響)、高木慶太(読響)、辻本玲(日フィル)、森山涼介(都響)。彼らは大学時代からの音楽仲間(大学は別々)だそうで、2013年から活動を始めた由。
     プロフィールに「チェロアンサンブルで表現可能なプログラムを熟考し、新たに編曲を依頼することにより、グループのオリジナル性・チェロアンサンブルの極限性を追求」とある通り、このアルバムでは、我々アマチュアのチェロ弾きにはお馴染みのL.ヴァルガ編のバッハの「シャコンヌ」や、トーマス=ミフネ編の「アルビノーニのアダージョ」始め、小林幸太郎氏が新たに編曲した曲が7曲収められていて、アザラシヴィリのアレンジもその小林氏の手によるもの。90年代前半のサンクトペテルブルクの演奏するCDを制作・発売したキングレコードが、山田氏が放送で取り上げたことに伴うCDのリバイバルヒットで気を良くして制作したアルバムなのではないでしょうか(商売上手!)。

     購入してからまだアザラシヴィリを聴いただけですが、こうした甘美で濃厚な味わいを持った音楽の演奏にありがちな、暑苦しさ、押しつけがましさ、あるいは、演歌まがいの下世話な表情などは微塵もなく、みずみずしい感性に裏打ちされた爽やかでしなやかなカンタービレが魅力的です。ピアノ伴奏が欠けている分、あの豊かでセンチメンタルなハーモニーが失われて単調になりがちなのではという聴く前の危惧は、まったくの杞憂に過ぎませんでした。勿論、サンクト・ペテルブルクの演奏の魅力が色褪せることはまったくあり得ませんが、この和風の演奏を聴きたくなることはたびたびあるだろうと思います。

     

     ただ、このアルバムで一つ残念だったのは、ライナーノートの「無言歌」についての楽曲解説。「オリジナルは、ピアノとチェロのソロパートを含む弦楽6部」「オリジナルのチェロのソロパート」というフレーズがあって、前述の山田氏の記事だけをソースとしていればそれは間違いではありませんが、この曲の「オリジナル」を長年探していた私にはちょっと違和感があります。
     私は、この曲がFMで放送されて騒然となった時期に本ブログで書いた記事で触れた通り、この曲はもともとは歌詞のついた「有言歌」だと考えています。タイトルは"Dgeebi Midian"で、Googleで検索すると"The day has passed"という英訳が見つかったので、「過ぎ去った日々」とか「日々は過ぎて」とかそんな感じのもので、歌詞はMoris Potskhishviliという人が書いた。また、YouTubeにUpされたいくつかの音源の中で、録音年が分かっている一番古いものは1975年にレコーディングされたもので、それは歌とオーケストラによる演奏でした。一方、この曲の存在を我々に知らせてくれたチェロ・アンサンブルとピアノのための「無言歌」、あるいは チェロと弦五部のバージョンは、件のサンクト・ペテルブルクのCDや動画以外にはネット上でどこにも見当たらない(現在も捜索中ですが)。

     

     オリジナルは歌なのかどうかという疑問を解くヒントが、アザラシヴィリの友人で、大阪活躍したチェリスト、故ギア・ケオシヴィリ氏のHPのこんな記載にあります。

     

    今回初めて、同氏作曲の「DAYS ARE PASSING」をチェロアンサンブルにより演奏しました。この曲は「無言歌」としてCDが市販されていますが、演奏に先立ちアザラシヴィリ氏に問い合わせ(編曲を依頼)したところ、本当の曲名は「DAYS ARE PASSING(英訳)」であることが判ったものです。

    (ブログ「グルジアのチェロ奏者  ギア・ケオシヴィリ 」【第2回音楽祭の様子】より)

     

     これは2015年8月30日にケオシヴィリ氏を偲んで開かれた音楽祭の第2回の報告記事で記載されたものなのですが、これを読むと、1975年以来脈々とジョージアで「歌詞を付けて」歌い継がれている "Dgeebi Midian(DAYS ARE PASSING)" こそが原曲であ って、「無言歌」はそれを後から器楽に編曲したものと考えるのが自然なんじゃないでしょうか。チェロ用の「無言歌」が先で、後で歌詞がつけられたとすると、「本当の曲名」などという言葉が作曲家本人の口から出てくることと整合性がとれない気がするのです。チェロ版がオリジナルであるという記載に引っかかってしまったのはそうした理由によります。

     

     いや、もし仮にオリジナルが歌なのか器楽曲なのかという議論は横に置いたとしても、せめて、この曲はジョージアでは "Dgeebi Midian"というタイトルで愛唱されているという「事実」についての記載くらいはあっても良かったのではないかと思います。一般的にはあまり知られていないマイナーな作曲家の作品なのですから、山田氏の記事だけを鵜呑みにするのではなく、もう少しご自分で丁寧に曲のことを調べて解説を書いて頂きたかったなと少々残念です。私自身はプロの評論家が調査して掴んだ"新事実"が書かれているのではと期待してCDを買ったという側面もあって、この曲に思い入れのない方から見れば厳しすぎる注文かもしれませんけれども、それが正直なところです(CD1枚3000円は結構高いですしね)。

     

     ところで、前述の昨年のケオリヴィリ音楽祭での「無言歌」の演奏では、こんな光景が見られたそうです。

     

    聴衆の方が初めて聴く曲であるにもかかわらず、主旋律の再現部では、口ずさむ声が聴かれました。

    ブログ「グルジアのチェロ奏者  ギア・ケオシヴィリ 」【第2回音楽祭の様子】より

     

     その場面を想像するだけで熱いものがこみ上げ来るのですが、そう、この一度聴いたら忘れられない甘い甘いメロディは、やっぱり歌いたくなるのです。もしかすると、日本語の歌詞をつけて誰か歌えば、そこそこヒットするんじゃないでしょうか。例えば、そうですねえ、私の好きな人なら、薬師丸ひろ子とか、純名里沙とか。あるいは、平原綾香とか、JUJUとか、サラ・オレインとかいった人が歌ってもいいのかもしれない。ともかく、どことなく昭和歌謡曲の匂いのする、レトロで、あったかくて、懐かしい「有言歌」が広く愛されるようなことになればいいなと思います。コアなクラシック音楽のファン、いわゆるクラヲタさんたちにとってはあんまり関心のない音楽には違いないでしょうけれども。

     

     それにしても、アザラシヴィリ氏は、山田氏や碓井氏を始め、旧友のケオシヴィリら、日本でも自作が熱烈に愛されていることを知ってさぞかしお喜びのことなのではないかと想像します。山田氏の記事の最後の一文に倣えば、いつの日にか、彼が日本の地にやってきて"Dgeebi Midian"を歌い、聴衆みんなが日本語で唱和するなんていう素敵な時間が過ごせればと願いつつ、このエントリーを閉じます。

     

    <<アザラシヴィリの「無言歌」についてのエントリー>>
    ■珠玉の小品 その4 〜 アザラシヴィリ/無言歌
    ■アザラシヴィリ/無言歌(グルジアの歌)
    ■アザラシヴィリ/無言歌をめぐって

    ■アザラシヴィリの「無言歌」について 〜 原曲は "Dgeebi Midian"


    <<アザラシヴィリのチェロ協奏曲についてのエントリー>>
    ■Cello Fiesta ! 〜 クレメラータ・バルティカ
    ■【ディスク 感想】アザラシヴィリ/チェロ協奏曲(1978) 〜 マキシミリアン・ホルヌング(Vc)アントネッロ・マナコルダ指揮ポツダム・カンマーアカデミー

    | nailsweet | アザラシヴィリの「無言歌」 | 04:10 | comments(2) | trackbacks(0) |
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      無言歌すごく探しました
      こちらの解説が詳しく書かれていて
      とても勉強になりました
      | yoosun | 2016/09/01 6:30 PM |
      管理者の承認待ちコメントです。
      | - | 2016/10/07 5:50 PM |









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