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【映画 感想】「花芯」(2016) 〜 村川絵梨、林遣都、安藤政信ほか

・映画「花芯」(2016)

 瀬戸内寂聴原作、安藤尋監督、黒木久子脚本

 村川絵梨、林遣都、安藤政信、藤本泉、毬谷友子

 →詳細はコチラ(公式HP)

 

 

 

 

 

 

 本屋へ行くと、夏の風物詩「sexできれいになる」という特集の女性雑誌が発売されています。

 男の私は、残念ながら読んでみたところでどうなる訳でもないので読んでませんが、正直なところ、「女はいいよな、セックスすればきれいになるんなら」と思います。性欲にまみれた男はギラギラしてギトギトと脂ぎったオッサンになるか、ケムリも出なくなって枯れるだけなんじゃないかと。それが証拠に、男性雑誌で、「sexでカッコよくなる」みたいな特集なんて見たことはない。どうやって女を口説くか、歓ばせるかみたいな指南書はありますし、劣情をそそるようなものは吐いて捨てるほどありますが。


 不公平じゃないかと思います。男は女性を歓ばせようと結構頑張ってるんですが(そうじゃない人もいるでしょうけど)、女性ばっかりがキレイになっていく。こっちは汗水たらし、発射し(しないこともあるかも)、あとは干からびていくだけ。でもまあ、男の心の中には女性に対して「いただきます、ごちそうさまでした」みたいに思っているところはあるので、まあそれはそれでいいのですが。

 

 先日、映画「花芯」(瀬戸内寂聴原作、村川絵梨主演、安藤尋監督)を見ながら、そんなことを思いました。

 

 この映画の主人公の園子(村川)は、親の決めた相手(林遣都)と愛のない結婚をし、子供ももうけますが、夫が転勤になり、赴任先に付いていった先で越智(安藤政信)という男に熱烈な恋をし不倫に走ります。やがて家庭は崩壊し、夫は園子の妹である蓉子(藤本泉)と結ばれ、越智との関係も切れ、園子は一人で作家として生きていきます。

 

 結婚も出産も、園子はもとより関心はなく、ただ親から与えられた義務をこなしただけ。性的には成熟していき「オンナ」にはなるのだけれど、一向に夫への愛情は生まれない。不倫相手と肌を重ね、さらに彼女は深い官能に身を沈めていきますが、最初に結ばれた時に既に心は醒めてしまっている。
 夫は妻を抱いて満足し、二人の愛の絆は深まったと信じ切っているのだけれど、実はそんなことはない。愛の悦びに悶えていたはずの妻は、激しく交わった後で「愛がなくても感じるのよ、他の人で試したから分かった」と言い放つ。夫は激昂して妻の首を絞めてしまうが、殺せない(ヴェリズモ・オペラならそこで殺人が起きる訳ですが)。

 一方、人目を盗み、離れた土地で逢瀬を重ねる不倫相手の男は、自分は女から愛されていると思いたい。二人で一緒に深淵を見てしまったのだと思いたい。しかし、当の女は、愛してるって言ってもいいけど、それはあくまでからだだけのこと。心はもう燃えていないと言う。男は、愛がないのならと失望し、金を投げ捨てて帰っていく。

 

 園子という女性は、愛を感じていない男たちに抱かれるだけ抱かれ、男のあらゆるものを吸い込み、男を骨抜きにしてしまうのだけれど、本人は「愛」など幻想だと知っている。そして、映画の最後の方では、こんなふうに考えて生きるようになっているみたい。
 

 男は女を征服し、自分のものにしたがる。交わりの激しい高まりの中で、「一つになった」と思いたがる。だけれど、女性は必ずしもそんな風には感じていない。所詮、男女なんて他人、所有されることも、融け合うことも、あり得ない。気持ちいいから「する」けど、それ以上のことは望まないで。私は私、一人で生きていけるのだし、男に隷属するなんてまっぴらごめんだわ。


 そう悟った園子は、ラストシーンで最高の笑顔を見せる。美しい。男の性欲など寄せ付けない、清々しい、いや、崇高なまでに美しい笑顔。その輝いた表情を見せるために、この映画は、村川絵梨という朝ドラ女優を、裸にし、白い肌と、豊かな乳房を露出させ、ピンク色に体を染めて身体を貫く快感に溺れるさまを映した。男の体液も愛情も余さず吸い尽くし、でも、甘い蜜を吸い終わったら、もうあとは自分一人でのびのびと自由に生きていく。その自由を手に入れたところで、彼女はいちばんきれいになる。そして挙句の果てに、「私が死んで焼かれる時には子宮だけが焼け残るんじゃないか」という園子のナレーションが追い打ちをかけ、アコーディオンが奏でるサティの「ジムノペディ」が流れる中、映画はFineとなる。

 

 これじゃ男の立つ瀬がありません。しかも、この映画で園子を演じている村川絵梨が、切なくなるくらいにしっとりした「艶技」を見せた挙句、ラストシーンでまあ呆気にとられるくらいに素晴らしい笑顔を見せてくれるのです。 結局、女にとって男ってなんやねんと思います。夫も不倫相手も、ただ女をきれいするだけの存在だったのかと。人生を狂わされ、傷つき、とことんまで自尊心をめちゃくちゃにされたのに。

 なるほど、林遣都の演じる夫は情けない。妻が自分に対して愛情を感じていないことに気づけなかっただけでなく、その「性技」の拙さには、老婆心ながら、「それじゃあかんやろ」とイライラする。初夜で失敗したのはともかくとして、そんなやり方じゃ女性は歓ばないよと口をついて出そうになってしまう。勿論、自分のことは思いっきり棚に上げてますが、とにかく情けない。セックスしても全然カッコよくない。

 安藤政信演じるカッコいいはずのプレイボーイ越智も情けない。こいつも園子の気持ちなんて分かっちゃいなかった。なのに自分は愛されていると勘違いしながら園子を抱いていた。棚に上げていた自分を下ろしてきて、どこまで男はバカなんだとつくづく思う。
 映画を見終わって、「女は魔物だ」「男ってやつはよー」と哀しい気持ちを引きずりながら新宿の夜の街を歩いていた私はどんなツラしてたのかと思いますが、そんなふうにションボリしてしまうのは、映画の受け手としては正しいのかどうかは分かりません。

 

 私がメロメロになった村川絵梨(朝ドラの頃から彼女は好きでした)の演技がどうのというところも、本当のところ、巧いのかどうかは分からない。もっと言葉の実感が伴ってもいいんじゃないかと思うところもあったような気がするけれど、彼女の立ち居振る舞いから香り立つ「オンナ」に眩暈しそうになりっぱなしだったので、演技としては良かったんじゃないかという気もする。
作者(原作者、監督)の狙いとは全然違うところで独りよがりな感想をぶちまけているだけのような気もします。客観的にいい映画なのかどうかなんてもっと分からない。

 

 でも、これだけは胸を張って言えます。


 それでも、男は女が好き。女を愛する。女がいないと生きていけません。

 

 ところで、私の好きな女性タレントの「朝ドラ出演率」はとても高いのですが、あの人もあの人も激しい濡れ場を演じていて、それはそれで必然なんだろうと思います。村川絵梨がこういう役に挑戦するのもある意味当然だと思いますし、こうやって映画を観に行った以上は、歓迎します。彼女の美しい肢体を拝めたのは素直に嬉しい。でも、あの人やあの人は、そういう濡れ場はやらないでほしいなあなんて思うのは、単なる私のわがままでしょうか・・・。

 

 それから、今回の映画の安藤監督、少し前に見た「海を感じる時」の監督さんだったことを見終わってから知りました。あの映画の最後も、主人公の女性が「強く生きていく私」を見せて終わってました。偶然なのかどうかわかりませんが、女性の脱皮、成熟をテーマにした映画が続いているのは興味深いところです。ただ、ちょっと考えるのは、安藤監督がいい悪いの話じゃ全然なく、これを女性映画監督が撮ったらどんな結末を描いただろうかということ。もう少し違う雰囲気の中で映画が完結するのかもしれません。

 

 全然感想になっていない感想、以上。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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