【ディスク 感想】テレマン/無伴奏ヴァイオリンのための12のファンタジア  ファビオ・ビオンディ(Vn)

2016.08.21 Sunday

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    ・テレマン/無伴奏ヴァイオリンのための12のファンタジア

     ファビオ・ビオンディ(Vn) (Glossa)

     →詳細はコチラ(Tower/HMV)

     

     

     

     

     ファビオ・ビオンディがグロッサ・レーベルに録音したテレマンの「無伴奏ヴァイオリンのための12のファンタジア」を聴きました。2015年6月にイタリアのニゴリネ・ディ・コルテ・フランカのサンテウフェミーア教会で録音されたもので、ビオンディは1767年製のフェルディナンド・ガリアーノを弾いています。

     この曲集、私はDENONレーベルから出ている寺神戸亮の録音がとても好きで、あんまり素晴らしいので、先日亡くなった宇野功芳氏がよく言っていたように「これさえあれば他はいらない」という気になっていたのですが、ビオンディが弾くとなると話は別、前言撤回して、やはり矢も楯もたまらず購入して聴いてみました。

     

     ビオンディは、全曲を快調なテンポで駆け抜けていきますが、興味深いのは、ラルゴとかアダージョと指定されたゆったりした楽章はかなり早いテンポで切り詰めた表現を聴かせるのに対し、急速な楽章では心持ちテンポをゆったり目にとってニュアンス豊かに弾いていること。私の愛聴盤である寺神戸とそのあたりはまったく逆で、寺神戸の方が緩急のコントラストが大きいのがとても意外でした(全体の演奏時間がビオンディの方が短いのは想定の範囲内でしたが)。

     

     とにかく自由闊達で雄弁、遊び心に満ちた愉悦感いっぱいのテレマンに私はすっかり魅了されてしまいました。思ったよりもヴィブラートを多用して朗々とカンタービレを歌いあげる場面が多いのが私の好みにぴったりなのと、残響を多く取り入れた録音も味方して、豊かな肉体性をもった官能的なヴァイオリンの音色が存分に楽しめることが何より嬉しい。

     ロック・ミュージックのようなアグレッシヴでタテノリのヴィヴァルディの「四季」の録音で名声を博したビオンディの、音楽家としての、そして、人間としての大きな「変化」を感じます。勿論、それはとても良い方向への変化だと感じていますが、特にフーガの楽章での、音楽の構造を立体的に示しつつ、いつも血の通った人間の感情の動きを感じさせるような豊かな表現を聴かせてくれるあたりには舌を巻きます。そして、全体に、古楽などというアカデミックな枠組みを遥かに超え、「いま」を生きる私たち人間のリアルタイムの音楽として生き生きと呼吸する音楽としてテレマンを聴かせてくれるのが素晴らしい。

     モダン楽器奏者の側からモダンと古楽をあっさり融合してしまったアリーナ・イブラギモヴァがいて、その対極として、古楽奏者の立場からモダン奏法を包摂した音楽を作り上げているファビオ・ビオンディがいて、私たちは今、古楽というもののとても新しいあり方が築き上げられつつあるのを目の当たりにしているのではないかという気がします。

     

     惚れ惚れするような美音と、朗々と歌いあげるカンタービレ、そして遊び心いっぱいの変幻自在な語り口が魅力的なビオンディの天才的な演奏によってテレマンのこの曲集への愛着をさらに強めることができました。寺神戸の演奏への思いはまったく変わらないので、ビオンディの天才的な音楽と、寺神戸の秀才的な音楽、両方を楽しんでいきたいと思います。

     

     心から、素晴らしいアルバムだと思います。

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    2018.05.25 Friday

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