【私の好きな歌 ・ 14】 ボブ・ディラン/Make You Feel My Love

2016.10.17 Monday

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    ・ボブ・ディラン/Make You Feel My Love

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     ここ数週間、”To Make You Feel My Love”という歌をずっと口ずさんでいました。この歌が収録されたビリー・ジョエルの”Greatest Hits Vol.3”を久しぶりに聴き、かねてから偏愛するこの曲への愛情がメラメラと再燃したからです。

     

     この“To Make You Feel My Love”の作詞作曲はビリー・ジョエルではなくて、ボブ・ディラン。実は、ビリー・ジョエルの件のベスト盤の方がディラン本人のバージョンより先(1997)にリリースされたのですが、その後、アデルやガース・ブルックスらもカバーして大ヒットしたのは記憶に新しいところ(アデルらのバージョンではタイトルは、”Make You Feel My Love”)。

     

    「僕からの愛を感じてもらうためにだったら、僕はなんでもする」

    「腹を空かせ 青あざをつくっても 人ごみをかき分けてでも 僕は君のもとへと行く」

    「僕は君を幸せにできる 夢を叶えてあげられる 世界の果てまでだって行く」

     

     日本語にしてしまうとちょっと感覚が変わってしまいますが、何ともぶっきらぼうで、不器用な、でも心のこもった歌詞のラヴ・ソングだと思います。

     

     愛する相手への優しい思いやりと愛情表現のこもった贈り物のような歌という趣がありますが、美しい包装もなければ、気の利いたポエムの書かれたメッセージカードもない。どんなに柔らかいアレンジで、甘く優しく歌っても、いつもその言葉のどこかに、骨のある、というか、骨っぽい、ザラッとした感触が残って、決して消すことはできない。

     

     そんな歌を、ビリー・ジョエルは、ボブ・ディランの声や節回しを幾分意識しつつも、最終的には彼自身のヴォーカルの型へと見事に昇華して、あたかもビリー自身の歌であるかのように生き生きと感情を込めて歌う。 ハモンドオルガンとハーモニカをフィーチャーした伴奏は、この曲の持つザラザラ感を強めながら、ビリーの歌を見事に引き立てている。私がビリー・ジョエルのフリークだからという点は多分にあると思いますが、ビリー・ジョエルのシンガーとしての魅力を余すところなくとらえた素晴らしいパフォーマンスだと思います。

     

     同時に、この曲は、聴くたびに、つくづく「男の歌」だなと思います。男の考え方、愛する対象への想いの表現方法、ありとあらゆる面で。ですから、アデルや、最近では私の大好きなシセル(・シルシェブー)のような女性が優しくこの曲を歌っているのが本当は不思議です。でも、実際にはその歌を聴くと、何の違和感もなく、すんなりと聴けてしまう。そこが、この曲のもつ「普遍性」の証明になるのではないかと思います。

     

     この歌はさらに、自分という人間の最も基本的なありように厳しく問いかけを投げかけてきます。私がこの曲の「私」のように、誰かを全力で愛する気持ちを持てているだろうか。年々、恋愛というようなものから遠ざかってしまった私でも、この歌の主人公のように「君のためなら何でもする」と伝えたくなる相手はいるだろうか。そんなことを考えてしまうと、いささかションボリしてしまいますが、いやいや、恋愛などは関係なく、自分の子供たちのためになら、「やれることは何でもする」というふうに思えるなと希望を持ったりもする。

     

     "To Make You Feel My Love"は、そんなふうに私の思考を刺激してやみません。何度聴いてもしみじみと「いい曲だなあ」と思います。初めて聴いて20年近く経った今でも。

     

     ・・・というようなことを改めて考えているときに、先日、ボブ・ディランがノーベル文学賞を受賞したというニュースを知りました。以前から下馬評は高かったとはいえ、いざ現実になるとちょっとびっくり、しかし、彼の書く詩のもつ、とてつもない力を思えば、とても素晴らしい決断だなと思います。

     

     正直言うと、私はディランのよい聴き手ではありません。シンガーとしての彼の声や歌い回しにどうしてもなじめないからです。あまり自分から進んで彼の音楽を聴こうとは思いません。

     いや、いくつかの曲は、とても好きなのです。例えば、サイモン&ガーファンクルがデビューアルバムでカバーした「時代は変わる」とか、彼の代表曲である「風に吹かれて」。後者は、大学時代のドイツ語の授業で独訳した思い出もあり、思い入れがあります。何より歌詞に共感するところも多いし、シンプルで力強いメロディも強く印象が残ります。でも、やっぱり彼の歌を積極的に愛するというところまではいかない。

     

     そんな私は、この”To Make You Feel My Love”は、ボブ・ディランの無数の曲の中「極私的最高傑作」なんじゃないかと思っています。彼のファンからは随分と甘口の曲を選ぶねと言われるかもしれませんけれども。

     

     彼は、確かに、音楽を通して社会や政治の矛盾や歪みを直接告発したりもしましたが、いつも正義を主張する政治的な音楽ばかりを書いていたのではない。こんなにも心のこもった、あたたかい音楽も書いている。それがいつも彼の歌の根底あるからこそ、彼の音楽は多くの人たちから熱狂的に支持を集めるんじゃないだろうかと、ボブ・ディラン音痴の私は考えたりしています。

     

     とある新聞は、ボブ・ディランについて、「ロックを芸術に昇華した」などと称賛し、ファンから猛反発を受けて炎上しています。私も反発しています。優れた音楽が、分類として芸術なのかどうかなんでもいいからです。敢えて言うならボブ・ディランの歌のように本当に優れたものは、最初から既に芸術なんじゃないでしょうか。それを「昇華」などと、クラシック音楽とかゲイジュツの目線で形容しようとするとおかしなことになる。ただただシンプルに人に訴える力があるということ、それが彼の音楽の価値なんだろうと思います。

     

     ディランのノーベル文学賞受賞を機に、彼の音楽をもう少し詳細に追ってみようと思います。人生の折り返し地点を過ぎた、いまの私にとって、彼の音楽や詞がどんなふうに響くのか、何かまた価値のある新しい出会いができるだろうか、とワクワク感じながら。

     

    ■ビリー・ジョエル版 "To Make You Feel My Love"

     

    ・ボブ・デイラン版 "Make You Feel My Love"

     

    ・ADELE版 "Make You Feel My Love"

     

    ・シセル・シルシェブー版 "Make You Feel My Love"

     

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    2018.12.09 Sunday

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