アナトーリ・ニキティンの死を悼む (アザラシヴィリ/無言歌の紹介者)

2017.03.01 Wednesday

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    ・アナトーリ・ニキティン(1931.4.27 - 2017.2.27)

     

     

     

     

     

     

     

    ・ヴァージャ・アザラシヴィリ/無言歌
     サンクト・ペテルブルク・チェロ・アンサンブル

     →詳細はコチラ(Tower/HMV)

     

     

     

     

     ノーマン・レブレヒト氏のブログで、チェリストのアナトーリ・ニキティンが亡くなったことを知りました(ロシアのニュースページにも訃報が出ています)。


     ニキティンは、1963年からほぼ40年にわたってレニングラード・フィル(現サンクト・ペテルブルグ・フィル)のチェロ・セクションを率いたチェロ奏者。ソリストとしても、多くの人材を育てた教育者としても知られていますが、わが国では、今は、サンクト・ペテルブルグ・チェロ・アンサンブルの創設者として、有名です。

     

     そう、昨年、山田和樹がFM番組で紹介して以来、一躍人気曲になった、ジョージア(グルジア)の作曲家ヴァージャ・アザラシヴィリの「無言歌」を、CD、来日公演を通して日本に紹介してくれた人なのです。今のアザラシヴィリの「無言歌」人気は、このニキティンがいたからこそ巻き起こったものであり、彼が演奏していなければ、もしかすると、日本でこれほどまでに知られることはなかったのかもしれず、彼は、この「無言歌」にとっては、大恩人であるという訳です。

     

     サンクト・ペテルブルグ・チェロ・アンサンブルは、都合2度、この「無言歌」を録音していますが、そのソロを務めたのはニキティンでした。以前存在していたニキティン自身のHPでは、彼がソロで弾いたバージョンがUpされていたので、よほどこの曲を気に入っていたに違いありません。

     

     ニキティンの弾く「無言歌」は、なるほど、ムラヴィンスキーの指揮するレニングラード・フィルのあの響きをずっと支えてきた人の音なのだと納得してしまうほどに、濃厚で、ノスタルジックで、力強くて、大きい歌に満ち溢れています。
    弓には相当な圧力をかけ、駒の近くで軋む寸前のところ弾き、ヴィブラートをたっぷりかけて熱っぽく歌うスタイルは、彼の師匠にあたるロストロポーヴィチを彷彿とさせますが、ニキティンの方がより筋肉質で剛毅な音がする。演歌すれすれのウェットな曲である「無言歌」には合わないんじゃないかというくらいに、逞しいチェロですが、なぜか相性が抜群にいい。ゴルゴ13か、タイガーマスクかというような、コートの襟を立て、孤独を身にまとって歩いていく男の美学というか、ダンディズムというか、そんなものを感じさせるからでしょうか。

     

     この他、以前、ここでもとりあげたシュヴァルツの「エレジー」や、バッハの「パストラール」といった曲で彼が聴かせるソロも同様に素晴らしいし、コミタスの「小さな雷鳥」の小気味よい歌も面白い。また、超快速でゴリゴリと熱っぽく突き進むヴィラ=ロボスの「ブラジル風バッハ第1番」も、他には聴けない独特のもの。

     

     1994年秋に、ニキティンは、サンクト・ペテルブルグ・チェロ・アンサンブルを率いて来日しました。私はとても聴きに行きたかったのですが、たぶん、結婚の準備で忙しくて夢はかなわずでした。その際も、アザラシヴィリなどを弾いて大好評だったそうですし、確かNHKでもBSで放送されたはず。ニキティンを偲び、アザラシヴィリの「無言歌」をより多くの人に聴いてもらうためにも、その時の録画を是非とも再放送してほしいものです。

     

     アザラシヴィリの「無言歌」をこよなく愛する者として、その紹介に力を尽くしたニキティンの努力に心から感謝したいと思います。そして、それだけでなく、私がこよなく愛するムラヴィンスキーが遺した数々の名演を支えた功績に対しても、敬意と愛情を表さずにはいられません。

     

     どうか、彼の魂の安らかならんことを。

     

     


     

    この動画でソロを弾いているのはニキティンの後継者 Dmitry Eremin

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

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    2018.05.25 Friday

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