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アザラシヴィリ/無言歌 〜 3枚の新盤リリース

・寺下真理子(Vn) 須関裕子(P) 深川甫編曲版

 (ロマンス」所収)

 →詳細はコチラ(Tower/HMV)

 

 

 

 

 

 

・山田和樹指揮横浜シンフォニエッタ

 (2015.1.29 横浜フィリアホールでのライヴ録音)

 →詳細はコチラ(Tower

 

 

 

 

 

・米良美一(Vo)

 (「無言歌 〜 ベスト・オブ・米良」所収)

 →詳細はコチラ(Tower/HMV)

 

 

 

 

 

 

 

 ジョージア(グルジア)の作曲家ヴァージャ・アザラシヴィリの「無言歌」の新盤が立て続けに三枚リリースされました。この曲をこよなく愛する私としては聴かない訳にはいかず、CDを購入して聴きました。

 

 最初は、ヴァイオリニストの寺下真理子の三作目となる「ロマンス」というアルバムに収められた、深川甫編曲、須関裕子のピアノ伴奏によるもの。

 

・寺下真理子(Vn) 須関裕子(P) 深川甫編曲版

 (ロマンス」所収)

 →詳細はコチラ(Tower/HMV)

 

 

 

 

 

 

 これはサンクト・ペテルブルク・チェロ・アンサンブルのバージョンをほぼそのままヴァイオリンとピアノのために編曲したものと言って良いかと思います。
 寺下のヴァイオリンは、アルバム全体を通して聴いて、クセのないピュアな音色と、のびやかなカンタービレの自然な息遣い、そして「私が、私が」と自らを前面に出しすぎない謙虚さが魅力的だと思いましたが、その彼女の音楽の特質が、アザラシヴィリの音楽のある種の臭みを解消していて、とても聴きやすい「無言歌」になっているように思いました。それを「薄味」とか「淡白」と言うことも可能ですが、この気品あふれ、背筋のピンとのびた若々しい音楽は、耳も心もくたびれた、ポンコツのおっさんには一服の清涼剤として響きます。

 

 次は、日本でこの「無言歌」を広めるのに一役買っている山田和樹指揮横浜シンフォニエッタによる弦楽合奏版で、編曲は上田真樹。2015年1月29日、横浜フィリアホールでのライヴ録音で、横浜シンフォニエッタの自主製作盤。

 

・山田和樹指揮横浜シンフォニエッタ

 (2015.1.29 横浜フィリアホールでのライヴ録音)

 →詳細はコチラ(Tower

 

 

 

 

 

 こちらのアレンジは、結構自由に味付けがされていて、ドラマティック。クライマックスは、グリーグの「過ぎた春」のような雰囲気もあって、にやりとしますが、とにかくこの「無言歌」を愛し抜いた指揮者の熱意が、オーケストラを揺さぶって、熱い歌を聴くことができるということが最大の魅力です。検索してみると、先月末に山田がこの曲を指揮した際には、コンサートゴーアーからの信頼がとても厚く、追随者の多い評論家のブログには「私はこの曲はちょっと」みたいなコメントが出ていて、もしかすると、同様にコアなクラシック・ファンからもあんまり受け容れられていないのかもしれませんが、まあ、それはそれ、きっと多くの聴衆がこの曲を楽しんだだろうと確信するに足る、とても中身の濃い演奏だし、熱い拍手です。
 このCD、リアルではなぜかタワレコの渋谷店でしか入手できないようで、なんだかもったいないなあと思います。FMで山田が出演してこの曲のCDをオンエアした際、あれだけ大きな反響を巻き起こした音楽なのですから、山田のコアなファンのみならず、「きらクラ」リスナーや、横浜シンフォニエッタのファンなど、このCDを喉から手が出るくらいに欲しい人たちは少なくないはずだと思いますが、どうなのでしょう。

 

 最後は、少し前にくも膜下出血で倒れ、最近ようやく復帰したカウンターテナー歌手の米良美一のベスト盤「無言歌」に収められたもので、文字通り、これまで彼がキングに残してきたアルバムの中から選ばれた曲の中に収録された唯一の新録音曲。

 

・米良美一(Vo)

 (「無言歌 〜 ベスト・オブ・米良」所収)

 →詳細はコチラ(Tower/HMV)

 

 

 

 

 

 

 私は昨年、この曲に関して、原曲と思われる歌“Dgeebi  middian(過ぎ去った日々)”にYouTubeでたどりついたと書きましたが、ここにきてようやく、この曲本来のかたちである「有言歌」として聴くことができました。歌詞はモリス・ポッキシヴィリの原詩を翻訳したものなのでしょうか、許瑛子による日本語歌詞。轟千尋編曲によるピアノと弦楽合奏による伴奏で歌われています。
米良の歌、私はとても久しぶりに聴きました。私は、ハッハ・コレギウム・ジャパンがBISにカンタータ録音を始めた当初、ごく初期に彼が参加した録音を聴いて、日本にもこんなに素晴らしいカウンターテナーが出てきたのかとびっくりしたのですが、例の「もののけ姫」以降の活動にはどうも興味を持てずに来ていました。

 その彼が、CDデビュー20周年、カムバック第一弾として、どうしてこの曲を選んだのか経緯は分かりません。推測するに、この新録音でプロデュースをしている松下久昭氏が、強力にプッシュしたのではないかと思います。というのは、寺下はインタビューで「プロデューサーから勧められ」てアザラシヴィリを取り上げたと言っているのですが、そのプロデューサーこそ、この松下氏だからです。もしかすると、この松下氏は、サンクト・ペテルブルク・チェロ・アンサンブルやクァルテット・エクスプローチェとも深い関わりがあるのかもしれません。いずれにせよ、昨年の「きらクラ」以来、問い合わせの多いアザラシヴィリの音楽をなるべくプッシュしようという、ある意味の「商魂のたくましさ」にはニコニコしてしまいます。これでアザラシヴィリの音楽がもっと広く聴かれるようになればいいなと思います。

 米良のアザラシヴィリ、まずその第一声に腰を抜かしました。カウンターテナーじゃなくて、彼の「地声」が聴こえてきたからです。しかも、テノールとかいうのでもなく、完全に「歌謡曲」のようにマイクを手にして歌うような唱法。病気を克服して、かつての歌い方はもうできなくなってしまったのかもしれませんが、その歌は、とても味わい深いものです。これでこそ、アザラシヴィリの音楽が生きるというくらいに、心がこもっていて、演歌すれすれのウェットな情緒があって。嫌いな人は死ぬほど嫌いでしょうが、好きな人にとってはたまらない魅力のある歌。これでいい、と私は思います。

 残念ながら、ベスト盤の本体の方はまだ全部は聴けていなくて、既に聴けたものに関して言えば、私のあまり理解できない世界だなあという消極的なものしかありませんが、この人の日本語の美しさには傾聴すべきものがあるとは思ったので、時間を見つけてゆっくり聴いてみたいと思います。

 

 さて、今回の三つの録音の中でどれが一番好きかと聞かれれば、やっぱりヤマカズ盤でしょうか。何と言っても、彼は、アザラシヴィリの「無言歌」普及委員会の会長みたいな人ですし、これだけ熱い演奏を聴かせてくれるのですから、やっぱり聴いていて胸が熱くなります。CDのメインであるシューベルトの交響曲第5番も、豊かなボディをもった音楽に頬が緩みましたし、ほんとにこれは今のような限定的な販売方法じゃもったいない!と思います。

 

 これからも、「無言歌」が、一人でも多くの人の耳に触れますように。

 

 


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  • 2017.06.25 Sunday
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