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レコード芸術 創刊800号に思う

・レコード芸術 2017年5月号

 創刊800号−『レコード芸術』の過去・現在・未来

 →詳細はコチラ(音楽之友社HP/Tower/HMV)

 

 

 

 

 

 

 

 レコード芸術誌が、2017年5月号をもって、創刊800号を迎えました。

 

 「『レコード芸術』の過去・現在・未来」と題された記念特集は、山崎浩太郎氏による「創刊号とその時代」と題された記事、浅里公三、満津岡信育、山野雄大の三氏による鼎談、そして、レコ芸執筆者による「私の開眼体験」「わたしと『レコード芸術』」というアンケート記事で構成されていて、プロの評論家の方々が、読者視線でレコ芸の思い出を述べている記事もあったりして、面白くて、あっという間に読んでしまいました。また、記念すべき1952年3月の創刊号の完全復刻版(これが素晴らしくよくできた復刻!)が付録としてついていて、これも貴重な読みものでした。加えて、Ottavaのプレゼンターとして活躍中の飯田有抄さんが、鼎談記事や創刊号復刻に携わっておられ、Ottavaリスナーとしては嬉しい人選。

 

 私が「レコード芸術」を初めて読んだのは、1976年4月号でした。表紙は花畑に咲く白い花で描かれたシューベルトの肖像で、特集はルネッサンス音楽。その後、5,6月号は飛ばして、7月以降は毎号欠かさず読んできましたから、合計491冊、割合からすれば創刊以来6割近くのレコ芸を読んだことになります。よくもまあ飽きもせず読んできたなと思います。時には文句をブツブツ言い、ブログに不満を書いたりもしてきましたが、レコ芸のない音楽生活なんて考えられないくらいに愛読してきました。

 

 やっぱりレコ芸は面白い。毎月、巻頭インタビュー、月評、特集、海外盤レビュー、どれも夢中で読んでしまいます。未知の音楽、名前も知らない音楽家と出会うきっかけを得たり、自分がこれまで考えもつかなかった「音楽の聴き方」「音楽の楽しみ方」を教わったりして、ささやかな音楽の楽しみを、少しずつですが、広げています。41年間にわたって。

 

 レコ芸が面白いと思えるということは、興味をそそるCDが次々と出ているということと同義です。聴いても聴いてもまったく追いつけない状況なのに、レコ芸で、毎月、これでもか、これでもかと聴きたくて仕方のない音盤が紹介される。聴きたくて居ても立っても居られず、ついつい音盤に手が出てしまう。この10年くらいでしょうか、最近は、その面白さがエスカレートしているように思えてなりません。でも、世間一般ではCDは売れない、斜陽業界だなどと言われていて、レコ芸の読者も減少し高齢化しているとのこと。どうしてそんなことになるのか、私には不思議でならない、と、ぼんやり考えていたとき、CDジャーナル今月号の片山杜秀氏の連載を読みました。


 その記事の中で、片山氏は、イギリスのマイナーレーベル、リリタを例に挙げて、メジャーレーベルの時代は終わり、少人数のスタッフがマニアックで良質な盤を少数作って売るのが主流、しかもそれがめっぽう面白くて、実は業界は非常に活性化していると書いています。

 

 そう!と思わず膝を打ちました。

 

 今、国内外ともに、いわゆるマイナーレーベルが本当に元気で、メジャーレーベルでは絶対に出せないような凝ったCDを次から次へとリリースしているのです。業界全体から言えば売り上げはどんどん減少していて、しかも、CDが売れているのはもはや日本だけみたいな状況とも聞きますが、でも、世界各国の極小レーベルから、あっと驚くようなユニークなディスクが毎月発売されていて目移りしてしまいます。そして、その中から確実に新しいスター音楽家が生まれてきている。アリーナ・イブラギモヴァの例を挙げれば十分でしょうか(Hyperionをマイナーレーベルと言って良いかは疑問ですが)。

 

 そんな状況は、言うまでもなく、レコ芸という雑誌の中でもはっきりと、かたちとして表れています。「こんなん誰が聴くんやろか」と思うようなCDたちも、きちんと海外盤Reviewで取り上げられているし、国内のマイナーレーベルの意欲的なCDも月評の俎上に載ります。その評価の内容は、賛同できるものも、できないものもありますが、信頼できる評者の書いたレビューを参考にして購入するかどうかを決めるケースはよくあります。

 

 私は、この状況は、きっと今後も続くだろうなと、漠然とですが、思います。メジャーレーベルが息を吹き返してきても(ソニークラシカルに予兆を感じないでもない)、マイナーレーベルが最先端を走ってクラシック音楽の世界を、豊かに、深く、広げていき、業界全体を活力づけていくという形は変わらないんじゃないか。そして、それでいいのだと私は思っています。だって、その方が絶対面白いから。そんな状況認識をしているので、前述のCDジャーナルの片山氏の連載、その最後の一文には深く共鳴するのですが、なかなかそういうふうに考えるのは難しいのでしょうか。

 

 そうだとすれば、このとっても面白い状況を、レコ芸という雑誌の枠の中でもっとヴィヴィッドに伝えることができる方法があればいいのになあと思います。具体的には、実現可能性を度外視してしまえば、月評を国内盤だけに書くのではなく、輸入盤も一緒にしてしまうのが良いのではという気がします。ただ、月評執筆者の負担が半端ではなくなってしまうので、きっと無理なことなのでしょうけれど、国内のレコード会社に向き合った「ジャパン・ファースト」的雑誌作りというのも、今の状況ではもはや通用しにくいんじゃないかなあなどとも思ったりします。何を偉そうに上から目線で言ってるんだよ、と言われるかもしれませんけれども、CDをせっせと買い続けるファンで、同じようなことを考えておられる方は、私以外にも結構いるんじゃないかと思います。ただ、その役割は、今はショップのHPやSNSが果たしている部分もあるのかもしれませんが。

 

 数年前、タワーレコードのクリアランスセールでCDを漁っていた時、たまたま片山氏が来店し、私のすぐ横でCDを物色されていたことがあります。その時、氏は、連れの男性と談笑しながら、「こういう、どマイナーなCDは、昔随分と雑誌なんかで紹介したんですけどね、売れないんですよね。何にもならなかった・・」と寂し気に呟いておられました。

 

 そのとき、私は、「片山さん、何をおっしゃいますか!私が、あなたの文章を読んで、どれだけのCDを買ったかご存知ですか!あなたの文章ほどに面白くないものもいっぱいありましたけど、片山さんが紹介して下さらなければ出会えなかった音盤は数えきれません!あなたに感謝している聴き手は、私以外にもたくさんおられるはずです!」と伝えたかったのですが、何しろ性格がシャイなもので恥ずかしくてできませんでした。

 

 でも、片山氏に限らず、散財させるのもほどほどにしてくれ!と悲鳴を上げつつも、同じようなことをお伝えしたいレコ芸の執筆者の方はたくさんおられます。どうかこれからも、たとえ規模が縮小されてでも、レコ芸が引き続き刊行され、私の音盤生活を豊かにしていってくれることを心から願っています。私は、レコ芸の第何号まで読むことができるか分かりませんが、1000号到達はこの目で確かめたいものです。

 

 ということで、最近聴いて感銘を受けたマイナーレーベルのCDのいくつか、ジャケット写真だけ貼り付けておきます。これのどこがマイナーやねん、十分メジャーやないかい、と言われそうですけれど。

 

 

 

 因みに、私はレコ芸に過去4回、名前が載ったことがあります。そのうち2回は、若林工房のCDのライナーノート執筆者の一人として、巻末の一覧に名前が載ったのですが、あと2回は、今はなき読者交換欄でした。

 そこで私は、レナード・バーンスタインのベルリン・フィルとのマーラーの9番のエアチェック・テープのダビングと、同じくバーンスタインのビデオ(79年の東京,85年の大阪、広島の来日公演)のダビングのお願いを出しました。前者はイスラエル・フィルとの来日公演の直後で、CD化されるよりずっと前のこと。早速、親切な方がダビングをして下さり、私の宝物になりました。そして、私の投書を見て、自分にもダビングしてほしいというお願いのハガキを下さった方もおられました。住所と電話番号を記載した個人情報ダダ漏れの欄で、今思うと、のんびりした時代だったなとしみじみしてしまいます。また、ネットもSNSもない時代、面識のない方と、突然、バーンスタインについて手紙で熱く語り合うことになったケースもあり、それはそれで楽しかったなと思います。

 あと、読者投書欄にも投稿したことがあります。1990年前後、ハンス・ロットの交響曲を初めて知って、その音楽の面白さと、マーラーの音楽との深い関連に狂喜乱舞し、是非、識者の方に論評してほしいと書いたのですが、ボツでした。まあ、私の文章力、アピール力からすれば当然なのですが、そこからロットの音楽が認識されるまで随分時間がかかったのは、ちょっと残念でした。でもまあ、それもまた私の若き日の思い出です。


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  • 2017.06.25 Sunday
  • -
  • 01:15
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コメント
こんにちは。
私もレコ芸を初めて買ったのは1976年ごろで、
シューベルトの顔のお花畑、覚えがあります。
あの時期の表紙は毎号作曲家の顔の隠し絵で、凝っていましたね。
私は2000年ごろからだんだん買わなくなってしまいましたが、
今回の800号記念は久しぶりに買ってみようかな。
片山杜秀氏には私もお世話になりました。
というか今もNHK-FMの「クラシックの迷宮」は欠かさず聴いてます。

私が読んでいた時期で印象に残っている月評氏は中野和雄氏です。
形容詞や擬音を多用したリズム感のある自由な文章で、読んでいて実に面白かったです。
はじめまして。失礼いたします、“スケルツォ倶楽部”発起人です。
とても素晴らしい記事で、nailsweetさんの文章に胸が熱くなりました。私もまた 木曽のあばら屋さんがたと たぶん同じ頃からレコード芸術誌を購読してきたもののひとりです。
これからのレコ芸の在り方についてのご提言、「実現可能性を度外視してしまえば 」とおっしゃってますが、実は私も全面的に同感です。この歴史ある良い雑誌が末永く出版され続けるよう 購買層側も支援していかなければと、今月号を目当てに 私も書店へ向かいました(笑 )。
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