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デ・ラ・パーラ指揮のオール中南米プロの演奏会が聴きたい
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    ・アロンドラ・デ・ラ・パーラ(指揮者)

     

     

     

     

     

     

     

     数日前、私がかねてから注目しているメキシコ出身の指揮者アロンドラ・デ・ラ・パーラの名前が、SNSでたくさん流れてきてびっくりしました。何ごとかと思いましたが、彼女がこの週末に名古屋フィルに客演し、演奏会を指揮したことを初めて知りました。

     

     演奏会のプログラムは、前半はモーツァルト、後半は、彼女の十八番である自国の音楽、モンカーヨのウアパンゴ、マルケスのダンソン第2番の2曲と、最近人気の高いヒナステラの「エスタンシア」組曲が演奏されたとのこと。ツイッターのTLに流れるコメントからは、会場がどれほど盛り上がったか、聴衆がどれくらい音楽を楽しんだかが、ひしひしと伝わってきました。数年前のオーケストラ・アンサンブル金沢への来演時に引き続き、彼女が中南米音楽をメインにしたプログラムで会場を湧かせたと聞き、聴きたかったという悔しさ以上に、嬉しい思いでTLを眺めていました。

     

     同時に、どうしてこれを東京でやらないんだろう?と思いました。

     

     彼女は、これまで東京フィルとN響に来演しています。でも、メインはいずれも王道の名曲。私は彼女が「ウアパンゴ」を演奏会のオープニングで取り上げるのを聴きましたが、その時のメインも、ブラームスの1番でした。その時のブラームスも素敵な演奏でしたが、「ウアパンゴ」は、東京フィルから魅力的なグルーヴを引き出していて楽しかった。全編、ラテン系の管弦楽曲で埋め尽くしたプログラムで、彼女の指揮する演奏を聴いてみたいと思ったのを、今もよく覚えています。そう、ニューイヤーコンサートのラテン版みたいな演奏会が聴きたい、と。

     

     メキシコ出身の指揮者だからと言って、中南米の「本場モノ」の音楽を振らせるなんて、考え方が古いよという考え方もあるかもしれません。チェコの指揮者だから「新世界」や「モルダウ」を振らせ、ロシアの指揮者だからチャイコやショスタコをやらせるのと同じでしょ?と。
     しかし、うんざりするくらいに演奏される「新世界」「悲愴」と、普段、滅多に聴くことのできない中南米の音楽とを、同一平面状に置いて考える訳にはいきません。なかなか聴けない音楽を得意とする指揮者が来演するのなら、その機会を逃すのはもったいないと思うのです。

     

     しかも、です。指揮者は、世界各地のオーケストラでこれらの曲を指揮して高い評価を受け、着実にファンを増やしている話題の人。ルックスも抜群。音楽に派手さはないけれど、楽曲の持ち味を歪めることのない真摯で堅実を聴かせてくれる。曲の途中で、客席が湧くような「仕掛け」を用意して、洒落たエンターテイメントを発揮するサービス精神も持っている。トークも上手、ユーモアやウィットにも富んでいて、FBにアップする動画も楽しく、人を喜ばせる才能の持ち主。さらに、彼女は、幼い息子さんを育てながら、世界を飛び回るママさんでもある。


     そんな話題の指揮者が、得意のレパートリーを引っ提げて開催する演奏会には、各方面から注目が集まり、名古屋や金沢のように中南米の音楽が会場の熱狂を生み出せれば、口コミで広がって新しい聴衆を呼び込むこともできるかもしれない。

     例えば、彼女の指揮する演奏会の模様が、テレビで放映されたらどうでしょうか。「NHK音楽館」や「題名のない音楽会」で、彼女がN響や東京フィルを振った「ダンソン第2番」「エスタンシア」が紹介されたとしたら。彼女の颯爽たる指揮姿と、会場全体を巻き込んだ楽しい演奏に触れ、知られざるレパートリーや、クラシック音楽そのものに開眼する人だっているかもしれない。
    それに、オーケストラの側も、新しいレパートリーに取り組むことで、音色のパレットを豊かにし、表現力に磨きをかけることができるかもしれない。

     というような可能性に賭けて、彼女の「勝負曲」を思う存分やらせてあげればいいのにと素朴に思うのですが、そんな「おいしい」機会が、在京のオーケストラではなぜないのか、不思議でならないのです。

     

     在京のオケにとっては、例えば、デ・ラ・パーラ指揮するラテン系楽曲メインの演奏会なんて全然おいしくなくて、芸術的、商業的に成功は見込めないのでしょうか?少し前にツイッターでも話題になりましたが、ウラジミール・フェドセーエフのような巨匠でさえ、在京オケでは保守的なプログラムしか組まないのですから、推して知るべしなのでしょうか?
     でも、最近は、複数の楽団が同時期に同じ曲を取り上げる機会が多く、マーラーとブルックナーというドル箱作曲家の作品に集中しがちな在京オケの定期のプログラムを思うと、こういう変わり種で勝負するオケがあってもいいのにと思ってしまいます。「エスタンシア」なんて「マランボ」に限らず美しい曲も満載、アマオケがやっても会場が湧くくらいの人気曲。都響で粘り強くスークやマルティヌーの作品を取り上げ、認知度を上げたヤクブ・フルシャのような例もある。やってやれないことではないと思うのですが。

     

     それとも、名古屋や金沢の聴衆はノリがよくて、東京の聴衆は真面目で、沸点が高いからでしょうか。耳が肥えていて、多少のことでは満足しないのでしょうか?
     でも、名古屋や金沢の聴衆も、東京に負けず劣らず質の高い演奏を定常的に聴いている訳で、その人たちが大いに喜んだのですから、東京で受けない訳がないと思うのですが、それは、私のあまりにも彼女への贔屓の過ぎる甘い見込みなのでしょうか?

     

     ということで、在京オケのどこかで、デ・ラ・パーラ指揮のオール・ラテン・プログラム、やってくれないでしょうかねえ。いや、ヒナステラの「エスタンシア」だけでもいい。とにかく、演奏会の中核に中南米の音楽を置いた演奏会をやってほしい。

     もし私がどこかのオケのオーナーで、採算度外視できるくらいの金持ちなら、いの一番に企画するんですけども、実際のオケでは気楽にああだこうだと好みだけで企画するわけにはいかない。オーケストラの定期演奏会のプログラミングって難しいだろうなとつくづく思います。

     

     因みに、デ・ラ・パーラのCDは、デビュー盤以降、2枚、現代作曲家のCDが出ています。一つは、エンジョット・シュナイダーの管弦楽曲集(Wergo)、もう一つは、ステイシー・ギャロップの「ミソロジー(神話)交響曲」(Cedille Records)。どちらも聴きやすい現代音楽で、音楽の抒情を十全に引き出した美しい演奏を楽しませてもらいました。なおのこと、彼女の音盤がなかなか増えないのがとても残念です。

     

     

     

     

     

    | nailsweet | クラシック音楽 雑記 | 02:26 | comments(1) | trackbacks(0) |
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      デ・ラ・パーラさんと名フィルの2日目を聴いてきました。
      ご推察のとおり、彼女の素晴らしい音楽性とパフォーマンスにより、保守的な名古屋の聴衆とは思えぬ熱狂的な演奏会となりました。
      しかし、彼女が得意とする後半の中南米プロに対し、有名ソリストを迎えた前半のモーツァルトでは控えめで(ソリストアンコールでの動画撮影というパフォーマンスはありましたが)、プログラム全体としては、木に竹を継いだような感があったことは否めません。
      おそらく彼女はオール中南米プロにしたかったのでしょうが、集客の点でオーケストラ側から待ったが掛かったのでは?と思います。
      また、彼女の即時的なSNSによる情報発信が、今後日本のオーケストラで定着すると、これは凄く面白い展開になろうかと思いました。
      日本人指揮者ですと、川瀬賢太郎さんあたりが先鞭を付けてくれそうな気がしております。
      | gijyou | 2017/07/24 4:16 PM |









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