【ディスク 感想】J.S.バッハ/ソナタ&パルティータ  ディッタ・ローマン(5弦チェロ・ピッコロ)  ファッサン・ラズロ(org)

2018.02.19 Monday

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    ・J.S.バッハ/ソナタ&パルティータ

     ディッタ・ローマン(5弦チェロ・ピッコロ)

     ファッサン・ラズロ(org) (Hungaroton)

     →詳細はコチラ(Tower/HMV)

     

     

     

     

    <<曲目>>

    J.S.バッハ:
     1. ヴァイオリン・ソナタ第3番ホ長調 BWV.1016(ローマン&ラスロによる5弦チェロ・ピッコロ&オルガン編曲版)
     2. 無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番ホ長調 BWV.1006(ローマンによる5弦チェロ・ピッコロ編曲版)
     3. 無伴奏フルートのためのパルティータ イ短調 BWV.1013(ローマンによる5弦チェロ・ピッコロ編曲版)
     4. ヴァイオリン・ソナタ第2番イ長調 BWV.1015(ローマン&ラスロによる5弦チェロ・ピッコロ&オルガン編曲版)

     

    −−−

     私が最近最も贔屓にしているチェリストの一人、ディッタ・ローマンのデビュー以来4作目となるバッハの編曲アルバムがリリースされました。同じバッハの無伴奏が実に素晴らしい演奏でしたし、前作のジプシー音楽を収めたアルバムも素敵だったので、楽しみにして聴きました。レーベルはいつもの通り、ハンガリーのフンガロトン。

     

     収録されているのは、バッハのヴァイオリン・ソナタBWV1015,1016の、無伴奏フルートのためのパルティータと、無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番。彼女はすべての曲を5弦のチェロ・ピッコロで弾いています。無伴奏の二曲はアンナー・ビルスマによる名盤が存在しますが、ガンバ・ソナタではなく、ヴァイオリン・ソナタをチェロで弾く試みは珍しい気がします。そこで共演しているオルガニストは、ファッサン・ラズロ。

     

     これ、私がCDショップの店員だったら、毎日ヘビーローテーションで店内BGMでかけまくります。ローマンの演奏が素晴らしいからなのですが、これをかけたら絶対売れるんじゃないかと思うからです。いや、私ごときがそんなことを言っても全然説得力はないし、実際にやってみて本当に売れるとは限らないのですけれど、私が何にも知らずにこのCDが店内に流れているのを聴いたら、その瞬間に何のディスクがかかっているか店員さんに聞き、即座にディスクを買うだろうことは確信をもって言えます。

     

     彼女の弾くチェロの音色の美しさ、愉しい躍動感は大切にしながらも、決して刺激に傾きすぎず、落ち着いた風格さえ感じさせる音の運び、緩徐楽章でのしっとりとした抒情、すべてが魅力的。

     

     ちょっと話が飛びますが、最近、人間は、音を細胞レベルで認識しているかもしれないという論文が、学術雑誌に発表されたそうです。可聴域の音刺激を与えた細胞のうち、いくつかで遺伝子応答が起きたのだとか。人間は耳からの情報を脳で統合解釈して初めて「音を聴く」のだという常識からすると、それは驚くべき結果ですが、このアルバムを聴いている私こそまさに細胞で聴いているのかもしれない。もうただただこのローマンが奏でるバッハの音楽が、美しくて、愉しくて、心が湧きたってしまうのです。

     

     そこには古楽もモダンも、概念として存在しない。ただただ、躍動する生命としての音楽がある。聴き手を選ばず、まさに細胞の遺伝子レベルに作用するような音楽がある。そこに深遠なもの、形而上学的なものを見いだして沈思黙考しても良いし、愉悦感あふれるリズムに踊っても良いし、チェロと一緒に口ずさみ歌っても良い。それはすべて聴き手に委ねられている。

     

     そんなバッハ・アルバム、これまでにもたくさんあったじゃないかと言われればそれまでで、確かに、あああれも、これもとすぐに思い浮かぶのですが、でも、やっぱりこの嬉しさは何か言葉にせずにいられない。

     

     オルガンとの共演によるヴァイオリン・ソナタの、豊かな響きの中から湧きおこる、ピンと背筋の伸びたチェロの響きにも惹かれますが、もはやどっちが原曲だろうかと思えてしまうくらいに自然な無伴奏作品は、あのビルスマ盤の存在さえも忘れてしまうくらいに鮮烈な演奏で、愛聴盤確定です。

     

     こうなると、彼女の弾くバッハの編曲もの、もっと聴きたくなるのが人情というもの。あと4曲のヴァイオリン・ソナタ、無伴奏ヴァイオリンのソナタとパルティータ、ガンバ・ソナタ、リュート組曲、そして、既に北欧のガンバ奏者による録音が存在するフランス組曲のいくつかなど、彼女に挑戦してほしい作品はいくらでもある。宗教曲の中の歌を編曲したものを弾くのもいいかもしれない。とにかくこのシリーズが今後も続くことを願ってやみません。

     

     と、ついつい興奮して書いていますが、実際にはこのディスクは、店頭では入手が難しいようです。タワレコの渋谷店に入荷していた一枚を私が買ったことで、タワレコの全ショップの店頭在庫が切れてしまったようです。何ということだ!タワレコともあろう店が、どうしてこんなにいいアルバムをもっと宣伝しないのか!という気もしますけれども、こんなに騒いでいるのは私だけかもしれないので、やっぱりそれなりのディスクなのでしょうか。

     

     でも、それでもいい。私はこのアルバムを、目に入れても痛くないくらいに溺愛しようと思います。そして、いつの日か、ディッタ・ローマンのナマを聴ける日がやってきますようにと切に願います。武蔵野市民文化会館あたり、いかがでしょうか。

     

     

     

     

     

     

     

    このリゲティ、素晴らしい!!彼女のインプロも面白いし、現代ものももっと聴いてみたいものです。

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    2018.05.25 Friday

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