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2019.06.03 Monday

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    【演奏会 感想】Opus One Concert 2019(2019.1.25 Hakujuホール)

    2019.01.26 Saturday

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      ・Opus One Concert 2019
       (2019.1.25 Hakujuホール)

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

      (出演)

      ・笹沼 樹(たつき)(Vc)

      ・古海 行子(やすこ)(P)

      ・秋田 勇魚(いさな)(G)

      ・鈴木 玲奈(れいな)(S)

      ・石上 真由子(Vn)

       

      (曲目)

      ・ベートーヴェン/ピアノ三重奏曲第1番第1楽章Op.1-1(古海、石上、笹沼)

      ・フォーレ/夢のあとに、ポッパー/演奏会用ポロネーズ(笹沼、入江一雄(P))

      ・シューマン/ピアノ・ソナタ第3番〜第3,4楽章(古海)

      ・アルカス/椿姫の主題による幻想曲(秋田)

      ・R.シュトラウス/アモール、トマ/「ハムレット」〜「私も遊びの仲間に入れてください」(鈴木、篠宮久徳(P))

      ・ヤナーチェク/ヴァイオリン・ソナタの第1,4楽章(石上、船橋美穂(P))

       

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       アンチエイジングという言葉が嫌いです。老化防止と言うが、10代の頃から「おっさん」「親父」「おとうさん」などと呼ばれていた私はどうすれば良いのか。失うべき若さをもとから持ち合わせない私は、もはや幼児退行するしかないのか?

       

       大体、世間一般「若さ」に価値を置きすぎです。テレビや映画の出演者は若い人ばかり。なぜ薬師丸ひろ子や原田知世が主演の素敵な恋愛映画が制作されない?いや、そんなことより、どうして中年の私は若い女性にモテないのか。どうして私よりも若い社員たちが、どんどん活躍して出世していくのか。

       

       日本語で言えることを、何でもかんでも英語にするのも嫌いです。コンプライアンス、ガバメント、モチベーション、マインドセット・・・。仮に日本語ではなかなか正確に言えない概念だからと言って、英語にしてみたところで本当に意味は通じるのか?わかったわかった詐欺にしかならないのでは?

       

       最近はCDも嫌いです。理由は分かりませんが、我が家ではCDが増える一方で、一向に枚数が減らないからです。サブスクリプションサービスも導入したのに、おかしい。一体CD不況なんてどこの世界の話でしょうか?CDが減らないことで、ふと聴きたくなった一枚のCDを探すのにどれだけの時間を費やしていることか。おかげで変なところが筋肉痛になるし、時間ばかりとられてやりたいことはできないし、CDが私の生産性低下に大きく貢献しているのは間違いない。訴えたいくらいです。

       

       ですから、コロムビアが立ち上げた新しいレーベル“Opus One”など、私にとってはもってのほかです。何しろ、二十代の若い音楽家のデビューCDを一挙5枚リリースするというのですから。「若い、英語、CD」三拍子揃っています。中堅から超ベテランの知られざる巨匠のデビュー音源を配信限定でリリースする「作品一」という企画は、どうしてできなかったのか。

       

       大体、これ以上、私の家のCDを増やしてどうしてくれるというのか。この新レーベルで発売された全5枚、発売前日にCDショップに出向いて入手してしまったではないですか。

       

       いや、こういう企画、ずっと待っていたのです。

       

       今回コロムビアからデビューしたのはヴァイオリンの石上真由子、チェロの笹沼樹、ピアノの古海行子、ギターの秋田勇魚、ソプラノの鈴木玲奈。いずれも華々しいコンクール受賞歴があったり、活発な演奏活動を続けていたりして、既に高い評価を受けている人たちだそうですが、CDは皆さんデビューとなります。

       

       新しい5枚のCDについてはまた別のところで書くつもりですが、その「新人」さんたちがHakujuホールに勢ぞろいして、“OpusOne”発売記念コンサートを開くというので、聴きに行ってきました。

       

       チケットを購入したのは演奏会直前でしたが、そのすぐ後に完売したらしく(危なかった・・・)、ホールはまさに満員。若い聴衆も結構いて、会場はなかなか華やいだ雰囲気でした。

       

       コンサート冒頭、ピアノの古海、ヴァイオリンの石上、チェロの笹沼が演奏したのは、ベートーヴェンのピアノ三重奏曲第1番の第1楽章でした。この曲は、楽聖ベートーヴェンの作品番号1-1、つまり彼の生涯で最初に出版された記念碑的な作品(三曲セットになってますが)、すなわちOpusOneですからなかなかシャレのきいた選曲。端正でありながらのびのびと自己主張する若者たちの和気あいあいとしたアンサンブルは爽快そのもの。

       

       そこから、笹沼の弾くフォーレの「夢のあとに」、ポッパーの「演奏会用ポロネーズ」、古海の弾くシューマンのピアノ・ソナタ第3番の第3,4楽章と続き、休憩を挟んで、秋田がアルカスの「椿姫の主題による幻想曲」を弾き、鈴木がR.シュトラウスの「アモール」、トマの「ハムレット」の「私も遊びの仲間に入れてください」を歌い、最後に石上がヤナーチェクのヴァイオリン・ソナタの第1,4楽章を弾く。つまり、冒頭のベートーヴェン以外は、今回リリースされた5枚のCDに収録された曲が演奏された訳です。ピアノ伴奏もまたいずれもCDと同じ人たちが担当。

       

       ただひたすらに嬉しい、愉しい時間を過ごしました。もうそれ以外の言葉で表現したくないというくらいに。

       

       嬉しいというのは、何より若くて未知の音楽家と出会えたこと、そして、その出発点(と言っても皆さんコンサートでは既に実績はおありですが)となるコンサートに居合わせられたということ。どの人の演奏も、CDで聴くのとはやはりちょっと違う感触があって、彼ら彼女らの未知の姿に触れられたことがまた嬉しい。


       愉しいというのは、まったくもって幼い言葉を使いますが「音楽っていいな」という実感を噛みしめながら演奏を聴けたこと。どの人も共通して、演奏にも、ステージマナーにも、頑張ってます、必死で勉強しました、いっぱいいっぱいですというような悲壮感はどこにもない。数年間、この曲だけを練習してきましたというような「狭さ」もない。ピリピリとした余分な緊張感もなく、良い意味で脱力できている。精神的にも技術的にもゆとりをもって演奏を楽しんでいるばかりか、失敗のリスクを恐れずに踏み込んだ表現を果敢に追求しているのがありありと伝わってくる。お稽古事の苦しくて遠い延長線上にある音楽とは無縁の、ムジツィーレン(音楽をする喜び)が満ち溢れていた音楽を聴いて、愉しくならない道理がありません。

       

       それぞれの演奏家の音楽について感じたことをメモっておきます。

       

       すべてにおいて剛毅で柄が大きく(身長もすごく高い)、振れ幅の大きい表現と、大きなヴィブラートを武器にしたエスプレッシーヴォなカンタービレが身上の笹沼。アマチュアのチェロ弾きとしては、彼の演奏をあれやこれやと聴いてみたいです。CDで「親愛の言葉」を収録していたカサドの無伴奏なんかも良さげだし、いずれはやはりバッハを。そして他人がどう言おうが、トークで披露したオヤジギャグを磨いてほしい。オヤジギャグは世界を救うからです。

       

       シューマンの底なし沼のロマンに頭から突っ込み、精緻な分析力と堅固な構築力、硬質な音色を武器にして、そこに見える風景とその移り変わりを描き尽くそうとする古海。どちらかというと通好みの渋い曲を、みずみずしく弾ききった快演、これも全曲聴きたいし、シューマンの他の曲も聴きたい。でも、シューベルトがどんなことになるか非常に興味がある。ショパンやリストは言うまでもなく、かっちりしたフォルムを持った曲が得意そうなので、古典派も聴いてみたい。

       

       羽毛のような軽い響きの中に、こわれもののように繊細なニュアンスを盛り込んで、豊かな詩情を歌いこむ秋田。今回の「椿姫」も良かったけれど、CDでのアサド兄弟のヴァルセアーナが絶品でしたから、静かで優しい調べの曲を、小さな場所で膝を突き合わせてじっくり聴きたい。アッセルボーンのような「新しい」曲も聴きたいし、バッハもいい。

       

       目も眩むような華麗なアジリタ、強く張りのある超高音、ホール全体を楽器にして共鳴させてしまう豊かな倍音など、生来のコロラトゥーラ歌手としての才能を全開させた鈴木。ホールの壁がビリビリと共鳴するさまに震撼した歌は、また聴きたい。彼女は将来、「ホフマン物語」の三役や「ナクソス島のアリアドネ」のツェルビネッダ、あるいは、ベルカント・オペラの主役を歌って満場の拍手を得るプリマドンナになるはずです。

       

       そして、ヤナーチェクの独特の語法を完全に自分のものとし、切っ先鋭い音を鑿にして、その根源にある「音の言葉」を彫りだすかのような厳しさと凄みを聴かせた石上。このソナタ、CDでも素晴らしい演奏だったので、是非全曲聴きたい。同じくCDの幸田延のソナタがびっくりするくらいにいい曲だったので、そちらも聴きたい。近現代のとんがった曲か、思い切ってバロック音楽か、聴きたい曲はいくらでもある。弦楽アンサンブルでも活躍しているようなので、室内楽も聴きたい。病院で彼女の診察も受けてみたい(彼女は医師免許をお持ちだそうです)。

       

       よくこれだけの逸材がいるものだ、よくこれだけの人たちを見つけ出してきたなと感心してしまいます。日本のクラシック音楽界の層の厚さを実感しました。西洋に追い付くためにインプットばかりを重視してきた時代から、それらを熟成させて「応用の時代」「アウトプットの時代」へと突入したということなのかもしれない。

       

       どの人たちを見ていても、その演奏する姿勢、ピンと背筋の伸びた立ち姿の美しさに目を奪われました。その立ち居振る舞いは、アスリート的であると同時に、能や狂言の演者のような静けさもあって、うっとりと見惚れてしまう。皆さん、等しく体幹がブレないのです。無理のない姿勢から力むことなく、豊かな音を生み出している。進化した音楽教育の成果ということもあるのでしょうか。体格の向上もあってか、舞台で「映える(ばえる)」「絵になる」人たちばかりというのにも、昭和生まれの私にはまぶしかった。

       

       ピアノの伴奏を務めた人たちも、優れた音楽家揃い。単なる伴奏なんかじゃなく、ソリストと対等な位置で艇々発止のやりとりをしながら音楽を奏でている。特に石上のパートナーの船橋美穂のピアノは、ヤナーチェクの曲で重要な役割を果たすヴァイオリンとの好ましい「対話」を生んでいて好感を持ちました。

       

       アンコールでは、鈴木が秋田の伴奏でヘンデルの「私を泣かせてください」を装飾音たっぷりで様式感たしかに、しかしのびやかに歌い、笹沼と秋田によるピアソラの「単語の歴史」から「Cafe1930」で、ヴォルテージをグッと上げてお開き。2時間のコンサートですが、本当にあっという間に過ぎていきました。

       

       5人の演奏家、皆さんの活動をこれからも追いかけていきたいと思います。今年後半からは、このHakujiホールで一人一人のリサイタルもあるようなので、是非聴きたい。

       

       素晴らしい演奏の数々の余韻を味わい、演奏者たちの近未来を妄想し期待に胸を膨らませながら、ホールの会場を後にしました。もちろんその後は、いつもの通り、渋谷の黄色に赤字の看板のCDショップへ吸い込まれて行ったわけですが。

       

       今後、OpusOneは、新しい人材発掘を続け定期的にCDをリリースしていくのだそうです。これからのこのレーベルの動向、目が離せません。既にファンの間でも話題になっているようなので、広い年齢層からさらに大きな関心を呼ぶことでしょう。もちろん、だからといって「これで日本のクラシック音楽界の未来は安泰」などとは言えません。これから押し寄せてくる超少子高齢化の波がどんな影響を及ぼすのか未知数は余りにも多い。暗い材料ばかりが目に付く。

       

       けれども、私たちより若い世代の音楽家、聴き手が、ここから何か新しくて魅力的な「場」を作り始めてくれるのではという嬉しい予感はあります。もしそれが的中するなら、このくたびれた中年の私も、鈴木が歌ったアリアではありませんが、「遊びの仲間に入れて」もらいたいものです。そして、コンサート会場で知った若い才能を、このレーベルの新人公募のページに提案できるようにもしたい。

       

       そのためにも、加齢に抗ってアンチエイジングに努め、若者に負けじと流行の横文字を華麗に使えるように鍛錬し、若い音楽家の佳麗なる音楽が詰まったCDをせっせと聴いて感性を若く保ちたいと思います。

       

       

      ・親愛の言葉

       笹沼樹(Vc) 入江一雄(P)

       →詳細はコチラ

       

       

       

       

       

       

       

      ・シューマン/ピアノ・ソナタ第3番ほか

       古海行子(P)

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      ・AQUARELLE

       秋田勇魚(G)

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      ・Bell Song

       鈴木玲奈(S) 篠宮久徳(P)

       →詳細はコチラ

       

       

       

       

       

       


      ・ヤナーチェク/ヴァイオリン・ソナタ他

       石上真由子(Vn) 船橋美穂(P)

       →詳細はコチラ

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

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