珠玉の小品 その24 〜 ポンセ/間奏曲

2009.02.23 Monday

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    ・ポンセ/間奏曲
     シプリアン・カツァリス(P) (Piano21)
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     最近、メキシコの作曲家マニュエル・ポンセの音楽に興味を持っています。ポンセというとこれまでは有名な「エストレリータ」しか知らなかったのですが、このところ、ギターのためのソナタ「フランツ・シューベルトを讃えて」などのギター曲を初めとして、例によってOttavaで流れてくる彼の作品に耳を奪われることが多いのです。

     そんなポンセの作品の中で私が最も気に入っているのが、ピアノのために書かれた「間奏曲Primer Intermezzo」という2分ほどの短い曲です。構造は至ってシンプルで、少し不安げな和音が静かに連打された後、ミシェル・ルグランの「ある愛の詩」の主題歌にちょっと似た雰囲気の旋律が哀しげに歌われ、哀感と情熱が交錯しながらギターがかき鳴らされるように熱く盛り上がった後、静かに音楽が消えていく、ただそれだけの音楽です。しかし、ポルトガル語でいう「サウダージ」とも通じるような哀愁に溢れた音楽は、音楽的甘党の私にはたまらない魅力をもったものです。そして、この音楽の後に一体どんなドラマが始まるのか、あるいはその前にどのような物語があったのか、いろいろと想像をめぐらせたくなるようなファンタジーに溢れた美しい「間奏曲」だと思います。

     このポンセの「間奏曲」のディスクですが、私は、昨年来日して音楽による世界一周旅行のような多彩なプログラムを披露してこの曲も演奏したシプリアン・カツァリスのCD「メキシコのピアノ音楽集」に入っているものを愛聴しています。カツァリスが、単に超絶技巧の持ち主というのにとどまらない、非常に洗練された詩情を持ち合わせた音楽家であることは言うまでもありませんが、この短いポンセの曲でも、カツァリスの作り出す音楽の美しさを存分に味わうことができます。「ある愛の詩」っぽい主題の歌いだしのぞくぞくするような清らかな美しさ、左手の伴奏音のつながりの中からくっきりと「旋律」を抽出して歌う味わい深さ、これらはまさにカツァリスからしか生まれ得ない独自の個性と風格を持った音楽です。こういう小品で素敵な演奏をしてくれる演奏家こそ私は好きですし、音楽家として信頼したいと思います。因みに、このカツァリスのメキシコのピアノ音楽集、カンポス編曲のメキシコ民謡集(有名なシェリト・リンドも収録)や、ローザスの「波濤を超えて」など素敵な曲と演奏が満載のチャーミングなアルバムだと思います。昨年の彼のリサイタルに行けなかったのが返す返す残念です。

     折りしも、先般のドゥダメルの来日公演がTVで放映され(アンコールの楽しかったこと!)ましたが、彼らの人気ぶりを見ていると、ラテン・アメリカ系の音楽への関心が世界的に盛り上がってくるような気がします。そんな中で、私の好きなグアスタビーノやヒナステラ、そしてこのポンセらの音楽ももっと頻繁に聴けるようになることを期待します。

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