珠玉の小品 その25 〜 シュワルツ/エレジー
2009.03.23 Monday
先日BSで放映された黒澤明監督の映画「デルス・ウザーラ」(1975、日本&ソ連)を録画してほんの少しだけ見ました。今をさかのぼること30年ほども前、この映画が封切られた時には、なぜか母に連れられて映画館で見たのですが、虎が出てくる場面や、隊長を「カピターン!(Captain)」と呼ぶところなど、ところどころ鮮明に記憶しているところがあって驚きました。
が、それはともかくとして、私がこの映画の録画を少し見た理由は、その映画音楽を聴いてみるためでした。この映画の音楽はイサク・シュワルツというソ連の作曲家が書いたのですが、私は彼が書いた「エレジー」という曲を偏愛しているのです。
シュワルツの「エレジー」は、以前アザラシヴィリの「無言歌」のエントリーで取り上げた、サンクトペテルブルグ・チェロ・アンサンブルが彼らのアルバムの中で取り上げていた曲で、「ロシアの憂愁」を絵に描いたような哀しくて切なくて美しい音楽です。オリジナルがチェロ・アンサンブルの曲なのかは不明ですが、複数の独奏チェロが音域を変えながらせつせつと幅広く歌われる旋律は、基本は何かに対する果てしない憧れを秘めたような長調の調べです。しかし、時折哀しい短調のモチーフへと沈みこむあたり、まさに胸がキュンとするような「ロシアの歌」ですし、甘さと翳りの入り混じったハーモニーと、繊細で心の襞に優しく沁みこんでくるような高音のオブリガートの美しさ、そして音楽が盛り上がっていき旋律がユニゾンで歌われるあたりはつい涙腺が緩んでしまいます。1970年代という時代にも、よくもこんな美しい旋律が書けるものだと感心してしまうほどです。
シュワルツが「デルス・ウザーラ」のために書いた音楽は、この「エレジー」ほどの甘美な音楽ではないようですが、それでも、オケを使用した音楽からは独特の「幅広さ」と豊かさをもった旋律と、豊饒なハーモニーが聴かれて、さすがにチャイコフスキーやラフマニノフの国の人の音楽だなあと思います。
昨年TVで見たNHK音楽祭の実況で、ヴァイオリニストの庄司紗矢香がチャイコフスキーの協奏曲のアンコールとして、1970年代のソ連の美しい映画音楽を無伴奏で見事に弾いてのけて、客席以上に舞台上のサンクトペテルブルグ・フィルの団員からやんやの喝采を受けていたのが印象に残っていますが、昔のソ連時代には、こうした美しくて誰にでも親しめるような音楽がいっぱいあるのだろうと思います。是非、他にもいろいろと聴いてみたいものだと思います。
因みに、映画「デルス・ウザーラ」の情報をネットで調べていたら、サントラで指揮をしていたのは、一部のショスタコ・ファンにはおなじみのグルジアの指揮者ヴァフタン・ジョルダニア(1943-2005)だったことが分かりました。彼がロイヤル・フィルを指揮したショスタコの11番は私のお気に入りのディスクの一つですので、何だか少し嬉しかったです。
話が随分それてしまいました。シュワルツの「エレジー」、本当に美しい曲ですので、いつかナマで聴いてみたいですし、機会があるのなら是非演奏してみたいと思います。現在廃盤のサンクト・ペテルブルグ・チェロ・アンサンブルの素晴らしいCDが復活してくれれば、そんなチャンスもできるのではないかと思ったりしますが、どうでしょうか。
(2017.07.23追記)
本日のNHK-FMの番組でこの曲がオンエアされたそうです。アザラシヴィリの「無言歌」に続き、ヒットするでしょうか。検索してこのブログにたどり着いた方のために、ネットで見つけた動画をリンクしておきます。原曲が使われたと思しき映画の一場面があり、なかなか胸に迫ります。
■現在のサンクト・ペテルブルグ・チェロ・アンサンブルによる演奏
■映画で使われたシーン?
■チェロとピアノ伴奏による演奏
■チェロとアコーディオン・アンサンブルによる演奏
■バラライカ・オーケストラによる演奏
■チェロ、ヴァイオリン、ベース、ギターによる演奏
St.PETERSBURG CELLO-ENSEMBLEのCDは持っています(^^♪
シュワルツのエレジーの楽譜が欲しくてここにたどり着きました(^_-)-☆遠くの恋人にも聴いてもらえます・・・