珠玉の小品 その27 〜 バーデン・パウエル/ブラジリアン・ポートレート

2009.06.23 Tuesday

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    ・バーデン・パウエル/ブラジリアン・ポートレート
     ジェラルド・ガルシア(g) (Naxos)
     →詳細はコチラ(HMV/Tower/Amazon)





     最近、一時期少し距離を置いていたショスタコやマーラー、ブルックナーといった大曲を立て続けに聴きましたが、やはり歳のせいもあってか、毎日ステーキばっかり食べると胃もたれしてあっさりしたものが欲しくなるのと同じで、聴き疲れしない美しい小品を聴きたくなります。

     そんな私には、ネットラジオOttavaは、私の未知の領域の「珠玉の小品」との出会いを作ってくれる場です。もっとも、リピートしてオンエアされる曲がほとんどですし、4月の番組改編で番組数が減ったせいか、全く知らない曲に出会う確率は減ってしまっていますが・・・。

     そんなOttava経由で知った最近のお気に入りの小品は、ブラジルの名ギタリスト、バーデン・パウエル(1937-2000)の書いた「ブラジリアン・ポートレート」。 私が聴いたのは、その曲名がアルバム・タイトルになった、ジェラルド・ガルシアの弾くNaxos盤で、1988年という同レーベル最初期のアルバム。以前、音楽之友社から出ていたムック「名盤大全 器楽曲編」で、音楽ライターの山尾敦史氏が取り上げておられたディスクです。

     この「ブラジリアン・ポートレート」という曲は、私好みの、甘く切ない哀愁に彩られた静かで美しい音楽です。冒頭の胸をキュンとさせるようなマイナーコードの中で歌われる旋律の美しさには深いため息が出ます。さらにその歌はふとメジャーに転じ、曇った空の向こうにある青空に思いを馳せるような希望を孕んだ歌が、ふわっと広がります。一瞬、心を下向きに引っ張る重力から解放されるような気がして、埃にまみれた日常に疲れた私の涙腺は、ついつい緩んでしまいます。しかし、希望に胸をざわつかせるひとときはあっという間に過ぎて行き、歌は再び冒頭の哀愁の中へと淡く消えて行きます。その余韻に浸りながらまた新たな涙がこぼれ落ちるのを感じずにいられませんが、それにしても何と美しい音楽なのだろう、何と優しいまなざしを持った音楽なのだろうと思います。この曲に出会えたことを幸せに思います。

     この曲のオリジナルが、バーデン・パウエルのどのアルバムに収録されているのか、ネットで検索しているのですが、まだ探し切れていません。いつかパウエル自身の弾く「ブラジリアン・ポートレート」を聴きたいです。そして、このアルバムを聴いていると、私の大好きなアストラッド・ジルベルトやジョアン・ジルベルトのボサノヴァのアルバムを聴きたくなります。もう夏ですし。

     ところで、ガルシアの弾くこのアルバムは、パウエルの曲の他に、ボンファやジョビンの曲があるかと思えば、ヴィラ=ロボスの曲も収められていて、ジャンルをまたいだごった煮状態の選曲ですが、それらがとても良いコンビネーションを生んでいて素晴らしいです。ガルシアの演奏もクールな中にパッションを心の奥底に秘めたもので、とても胸に響きます。特に、ヴィラ=ロボスの「我が街で」なんていう曲は、これも珠玉の小品と呼びたくなるような美しい曲です。

     Naxosから出ているガルシアのディスクでは、以前から「ラテン・ギター・フェスティヴァル」というのは持っていて、特に「アルフォンシーナと海」が気に入っていますし、彼の弾くアランフェス協奏曲もなかなかの演奏で好きです。まだこの人が活動しているのかどうかは知りませんが、とても素敵なギタリストだあなと思います。

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    2019.08.15 Thursday

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