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私のシューベルティアーデ(126) 〜 3つの小品、楽興の時他 トゥルーデリーズ・レオンハルト(Fp)

 ・3つの小品、楽興の時ほか
 (ピアノ作品集Vol.6)
 トゥルーデリーズ・レオンハルト(Fp)(GLOBE)





<<曲目>>
・3つの小品D.946
・8つのレントラーD.681
・2つのレントラーD.679
・コティヨンD.976
・楽興の時D.780


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 昨年暮れに注文していたトゥルーデリーズ・レオンハルトさんの新譜2枚が、今日スイスのレオンハルトさんご本人から届きました。そのうちのシューベルトのピアノ作品集Vol.6を早速聴きました。収録されているのは彼女の再録音となる3つの小品D.946と、楽興の時がメインで、レントラーD.681とD.679、そしてコティヨンD.976という30秒ほどの曲が11曲収録されています。丁度一年前、2009年2月に彼女の住むサン・シュルピス(ローザンヌ近郊の街)で録音されたディスクで、いつもながら彼女のパートナーであるミヒャエル・アムスラー氏がプロデュースされています。そして使用している楽器も、いつもと同じ1815/20年のザイドナー製のフォルテピアノ。

 私がレオンハルトさんの演奏に出会って丁度二年ほどが経ちますが、今や私にとって彼女の音楽は、私の生活になくてはならない生活必需品のようになっています。彼女の演奏するシューベルトやベートーヴェンは、私の心に養分や水分を補給してくれるものであり、あるいはその時々の私自身の心の状態の変化を忠実に映し出す鏡のようなものでもあります。今、私が私であることを規定するものが、レオンハルトさんの音楽を聴いた時に私の内部で励起する「変化」であり、彼女の音楽を聴くという行為自体が、今の自分を最もよく表現している行為であるとさえ言えるのではないかと思います。そう言ってしまいたくなるほど、彼女の演奏を聴いていると、私自身が私であることをあたたかく肯定し、受け容れ、許してくれる存在がここにあると感じられるのです。そしてそれが、私に生きる喜び、生きる活力というものを思い出させてくれるのです。

 今回の、待望の3つの小品と楽興の時の再録音も、まさにそのような音楽でした。

 3つの小品は、冒頭の第1曲は、意外なくらいに武骨といってよいほどにゴツゴツとした手触りを感じさせる荒削りなリズムが強調された音楽で、いつも音楽が空気と摩擦しながら進んでいくかのような感覚を感じさせます。そのいささか不均一な音楽の進み具合が、シューベルトの心の揺れをそのまま表現しているかのようです。その結果、ほんのちょっとした音の運びの揺らぎが、私の心に波紋を投げかけてきて、私はその波紋の広がりを見つめることになります。一陣の風が吹き抜けるかのようにさっと弾かれることの多いこの曲が、実はこんなにたくさんの「言葉」を孕んでいる音楽なのかと驚くほどに雄弁で多彩な表情をもった音楽。しかも、この第1曲でシューベルト自身がカットした部分も演奏されているのですが、その部分が絶対にこの曲にはなくてはならないもののように、しっかりと居場所が与えられて演奏されていることにも私は驚きました。

 そしてあの美しくて哀しい第2曲は、心に涙をためたような音楽に胸を締め付けられます。この曲は、彼女の旧録音も本当に素晴らしかったのですが、今回の演奏はより味わいが深まっていて、再録音の意義を強く感じさせてくれました。前回の録音から恐らく20年近くが経過して、その間にレオンハルトさんが音楽家として人間として、どんなに美しい時間を重ねて来られたかが如実に刻み込まれているような気がします。

 第3曲も、よくあるようなはしゃいだ感じの演奏ではなくて、あくまで中間部の静謐な音楽の雰囲気を中心に据えた演奏で、これもやけに胸に沁みます。彼女の演奏があたたかく血の通ったものであればあるほど、それと同じ分だけシューベルトの音楽に内在する「痛み」や「哀しみ」が表現されていることが本当に嬉しい。これこそシューベルトの音楽を聴く醍醐味だと思わせてくれます。ああ、これこそ私が聴きたかった音楽だ!と聴いていて嬉しく思えましたし、心の底から幸せを感じました。

 「楽興の時」も同様で、こちらも、時にゴツゴツとした骨のあるリズムを見せ、時に沈み込むような表情を見せて立ち止りながら、シューベルトの「言葉」を、そして「声」を存分に聴かせてくれて心を動かされました。3つの小品のユニークな表現に比べればよりオーソドックスなものと感じられますが、しかし、その複雑で深い味わいを孕んだ音楽は、美しく充実した齢を重ねている人にしか生みだせないものであろうと思います。ため息をつきながら心ゆくまで「楽興の時」を楽しみました。

 あとレオンハルトさんお得意の舞曲ですが、こちらはより自在で自由なイメージの飛翔を内に持ち合わせた音楽で、興に乗ってくるとだんだん音楽が熱気を帯び、テンポが速くなったりするのが愉しい。若い男女が手を取り合って踊りながらだんだんヴォルテージを上げていき、互いに顔を赤らめ、そして徐々により密着度を高めて距離を近づけていく、そんな場面を想像したりしながら愉しく聴きました。

 前回の新譜から1年、録音済みという知らせをレオンハルトさんから伺い、聴けるのをずっと楽しみにしてきましたが、実際に聴いてみたら想像以上に素晴らしい演奏でほんとうに嬉しかったです。

 一緒に送られてきたベートーヴェンのアルバムを明日聴くのがとてもとても楽しみです。そのためにも明日の仕事、頑張って終わらせたいです。

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  • 2017.03.01 Wednesday
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