Langsamer Satz

クラシック音楽のことなどをのんびり、ゆっくりとお話したいと思います
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トゥルーデリーズ・レオンハルトさんについて その1
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    ・トゥルーデリーズ・レオンハルトさん(Fp)






     私のこのブログは、シューベルトについてのエントリーが多い他は、特定の演奏家についてのエントリーもいくつかあります。バーンスタインは別格として、マーク・ウィッグルスワース、アリーナ・イブラギモヴァなど、あまりメジャーではないけれど私の大好きなアーティストついてのエントリーを書いてきました。中でも、フォルテピアノ奏者のトゥルーデリーズ・レオンハルトさんは、私が心から敬愛する演奏家なのでいくつか文章を書きつけてきました。彼女は、日本ではあまり流通していないマイナーレーベルからしかCDが出ていませんし、来日したこともないので、日本ではまだ一部のファンの方々にしか知られていない存在ですが、私は彼女のシューベルトの演奏を心から愛しています。彼女の弾くシューベルトを聴いて、どれだけ辛い時期を乗り越えるための力をもらったか分かりません。

     すっかり彼女のファンになってしまったので、私は彼女が録音したすべてのCDを揃えてしまいました。彼女自身のHPからCDをオーダーした関係で、彼女と直接メールで話すことができ、彼女の御自宅から直接CDと直筆のカードを送って頂きました。私にとって彼女はとてもとても親しみのある存在でもあるのです。

     残念ながら、彼女のことを書いた記事というのは、世界的に見てもあまりないと思います。Googleで検索してもさほどたくさんはありません。ですから、私がこれまで書いてきたブログの記事だけでも記事の数だけは「世界一」を誇れるのではないかと自負しています。が、CDについては入手可能なものはすべて感想は書いてしまい、次に発売予定のモーツァルトのCDも未発売という状況ですので、私が知っているトゥルーデリーズさんという人について、ポートレートのような記事を書いておきたいと思います。

     まず、彼女のバイオグラフィから。

      トゥルーデリーズ・レオンハルトさんは、オランダの大富豪の家に生まれました。兄は有名なグスタフ・レオンハルト(もう一人の御兄弟も音楽家とのことですが詳細は不明)、御両親が無類の音楽好き、レオンハルト家にとって音楽は単なる「嗜み」などではなく、生活の一部であったようで、家には毎日のように有名な音楽家が出入りしていたそうです。それも、さながら「音楽サロン」のようなホームコンサート、しかも驚くほど高レベルなものが開かれていたとのこと。

     そんな家庭環境に育ったトゥルーデリーズさんは、御両親やピアノの先生、そして2人の御兄弟から常に刺激を受けていて、幼少の頃から自分は将来音楽家になるものだと信じて疑わなかったそうです。そして、成長した彼女はアムステルダムで音楽の勉強を始めました。彼女が師事した人の中で、最も重要な位置を占めるのは、20世紀前半のオランダで活躍したピアニスト、ネリー・ワーヘナールで、彼女からの影響を強く受けているそうです。さらに、彼女はパリに留学して有名なピアニスト、マルグリット・ロンとイーヴ・ナットにも学びました。彼女に言わせると、ロンはとても厳しくてなかなか褒めてもらえなかった、一方、ナットの方はとにかく非常に情熱的な教師だったそうです。

     アムステルダム音楽院在学中、エリーザベト・エヴァーツ賞を受賞して卒業した彼女は、プロとしての演奏活動を開始し、チューリッヒ・トーンハレ管、ロンドン・モーツァルト・プレーヤーズ、ローザンヌ室内管弦楽団などとの共演を果たしています。彼女は、1815年ベニグヌス・ザイドナー製のフォルテピアノを愛用し、主にシューベルトやベートーヴェンの作品を複数のレーベルに録音しています。特にシューベルトの演奏にかけては知る人ぞ知る名手であり、Divertimento、Jecklin、Cascavelle、Galloなどからかなりの枚数のディスクが発売され、特にヨーロッパでは高い評価を得ています。

     というのが公式バイオグラフィーに、私がトゥルーデリーズさんとのメールのやりとりで直接伺ったことを追加した彼女の略歴。そして、以下に彼女と交わしたメールの内容を記しておきます。

    Q:私はあなたの弾くシューベルトの演奏、とても好きです。聴いていると生きる力を得られます。

    A:ああ、あなたは私と同じようにシューベルトの音楽を愛しておられるわね。嬉しいわ。私はきっとたくさんの人々がシューベルトをもっと古典的なアプローチで演奏されるのを好むと確信してるわ(昔はできなかったけれど)

    Q:最近聴いた15番の「レリーク」も本当に美しい演奏で心に残りました。

    A:あれは本当に宝物のような音楽ね。でも、一番美しくて、偉大で、印象的なのはD.959だと思うわ。特にアンダンティーノ(第2楽章)はシューベルトの書いた最も素晴らしい音楽よ。

    Q:あなたとシューベルトの音楽との出会いについて教えて下さい。

    A:そう、私がまだ8歳か9歳の頃だったかしら。ある日、シューベルトの「楽興の時」を両親の居間で練習していたの。そこはオーストリアのビーダーマイヤー調の内装がしてあってね、ウィーンに住んでいた御先祖さまの写真なんかが飾ってあったわ。すると、突然とても強い幸福感が私の心に溢れて来たの。ああ、この瞬間がいつまでも永遠に続いてほしいと心から願ったわ。そしてね、その幸福感は今もずっと続いているのよ!まるで魚が水を必要とするように、私にはシューベルトの音楽が必要なの。シューベルトの出会いって、こんな単純なものだったわ。

    Q:いつも弾いておられるザイドナーのフォルテピアノの音、ほんとに素敵で大好きです。

    A:ありがとう。私の弾いているザイドナーのフォルテピアノは、シューベルトの兄弟のイグナツが持っていたものと同じタイプなの。ウィーンのシューベルト博物館に展示されているから御覧になるといいわ。

    Q:トゥルーデリーズさんは、シューベルトの音楽を演奏されている時はどんな感覚になるのでしょうか?

    A:私の英語ではなかなかニュアンスが伝えきれないのだけれど・・・。彼の音楽を弾いていると、ノスタルジー、予期せぬ転調、大きな呼吸、拍子やリズム、メランコリー、舞曲のウィーン風の魅力とか、もっともっといろいろなものを感じるわ。彼の音楽は人間の内面を育ててくれるわね!

    Q:私はあなたの弾くシューベルトを聴いて救いを得られました。雲が立ち込めた辛く暗い日々を乗り越えることができました。

    A:シューベルトの音楽によってあなたが黒い雲の中から出られたと聞いてとても幸せよ。人生そのもの、喜びと哀しみ、日の光とたちこめる雲は私たちを強くする力を与えてくれるわ。そう、あなたは雲のことを書いてたわね。そうなの、成熟して賢くなるためには、雲の中で過ごした時間は決して無駄なんかじゃないのよ。シューベルトも(ベートーヴェンもね!)、哀しみとは何なのかを熟知していた人だわ。哀しみが彼の力となり、刺激になっていたの。とにかく、私(と特にシューベルトの音楽!)の音楽が、あなたの心の中の雲を晴らすことができて、再び生きる力を見出す手助けができたことは本当に幸せよ。演奏家は人を幸せにすることが仕事なんですから!

    Q:ありがとうございます。でも、あなたのシューベルトを聴いていると、不思議と自分の中にある雲はあくまで私自身のもので、同時に私の「友だち」でもあると感じられました。そんなことに気づかせてもらえて本当に嬉しかったです。ありがとうございます。

    A:そうね。あなたが言うように、雲はある意味「友だち」なのよね。その雲が私たちを成熟させてくれるのだものね。

    Q:トゥルーデリーズさんには、シューベルトの録音を今後も続けて頂きたいです。

    A:うーん、でも、もう大体の曲は録音しちゃったわ。「さすらい人幻想曲」、あれは男性のための曲。私には到底弾く力がないから録音はするつもりもないし。

    Q:ベートーヴェンの後期のソナタなんかはいかがですか?30番、31番なんかはとても聴きたいです。

    A:それらは本当に素晴らしい音楽だけれど、弾くにはもう私は歳を取り過ぎたように思えるの。残念だけれど。その代わり、今はモーツァルトの演奏に集中してるの。そのために新しいフォルテピアノも見つけたわ。(2010年4月録音済みのはず)

    Q:そのディスクはいつ発売ですか?

    A:分からないの。とにかく発売までに時間がかかるのよね。あなた、日本の方で、優秀で真面目な編集エンジニア、御存知ない?

    Q:録音以外の活動は何をなさっていますか?

    A:シューベルトやベートーヴェンの音楽についてのレクチャーは今も続けています。とても刺激的よ。そう、私自身にとって、ね。

    Q:是非日本に来て演奏して頂きたいです。

    A:それはどうかしらね。

    Q:どうもありがとうございました。この文面、私のブログに掲載してよろしいでしょうか。

    A:どういたしまして。ブログへの掲載は構わないですが、私のことに興味を持つ方なんておられるのかしらね。
     というようなやりとりをして、私はレオンハルトさんのことがもっと好きになりました。是非、日本に来て頂きたいと言うと、いつも素っ気ない返事でがっかりですが。

     次のエントリーではレオンハルトさんのディスコグラフィーを書きたいと思います。
    | nailsweet | T.レオンハルト | 15:59 | comments(0) | trackbacks(0) |
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