Langsamer Satz

クラシック音楽のことなどをのんびり、ゆっくりとお話したいと思います
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私のシューベルティアーデ(2) 〜 プルーデルマッハーのソナタ全集
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    ・シューベルト/ピアノ・ソナタ全集(8CD)
     (第1,4,6,7,9,13〜21番、即興曲D.935、楽興の時から)
     ジョルジュ・プルーデルマッハー(p)

     →詳細はコチラ(TowerRecord輸入代理店マーキュリー)



     ここ何日間か、フランスの名匠ジョルジュ・プルーデルマッハーの演奏する、ピアノ・ソナタ全集のCD8枚組をじっくりと一枚一枚聴いていました。

     この全集の大きな特徴は、大きく3つあります。

     1)未完の作品への取り組みがユニーク
      →第6番がロンドD.506と合わせて演奏されている
      →第15番「レリーク」がプルーデルマッハー自身の補筆版で演奏されている
     2)使用している楽器が珍しい
      →4ペダル(※)のスタインウェイを弾いている
       ※ハーモニック・ペダル:鍵盤を押している音だけにペダルがかけられる
     3)すべてライヴ録音である
      →2001年8月と2002年9月、ランス国立音楽院及びフラヌリー音楽堂でのライヴ

     プルーデルマッハーの演奏ですが、4ペダルのピアノの威力というべきでしょうか、響きの混濁が一切なく、一つ一つの音が恐るべき明晰さをもっていることに驚嘆します。ですが、その明晰さは、華麗な技巧の追求や、機械的な楽譜の再現といった行為とは無縁で、音楽の内包する「言葉」をより克明に引き出そうとする姿勢から出てきたものという印象です。

     あたたかで柔和さを失わないタッチや、決して大言壮語しない平明な歌からは、演奏者自身がシューベルトの言葉を借りて、聴衆との親密な対話を楽しんでいるような、まさに「楽興の時」とも言うべき至福のひとときを感じることができます。前回引用した喜多尾氏の言葉を借りれば、「孤独のよろこび」さえもが、会場のすべての人々から、あたたかい共感を引き起こすかのように作用するさまが、演奏にも、演奏終了後の拍手にもあらわれているような気がして感動しました。

     いずれの曲も実に素晴らしい演奏で、しかもライブとは思えない完成度の高さですが、強いて言えば、第20番のまさに自然に湧き起こる感興に強く惹かれました。この曲の第2楽章中間の突然の絶叫は、演奏によっては非常に唐突に感じる部分ですが、彼の演奏ではごく自然な感情の発露として起こったものに聴こえて心に響きました。また、第14番の前と後で、シューベルトの作風には大きな転換点がありますが、全曲(欠けている曲もありますが)を大きなパースペクティヴでとらえていて、作風の変化が「連続した断層」になっているところも私にはとても魅力的です。

    それから、この全集の売りの一つ、15番「レリーク」の補筆はほとんど違和感なく安心して聴けるものでした。ライナーによると残された断片からの復元は少し想像すれば結構簡単にできる、のだそうです。多少現代的な感覚が入りこんでいる場面もありますが、シューベルトの心の「痛み」が聴こえる点で、私はなかなかに説得力のある補筆だと感じました。

     この8枚組のディスクを聴くことによって、シューベルトの音楽が、より身近で親しいものになったことはプルーデルマッハーに感謝したいと思いますし、既にマニアの間では有名なベートーヴェンやドビュッシー、ラヴェルの演奏、今更ということかもしれませんが、是非聴きたいと思っています。もちろん、ナマも聴きたいと切望します。
    | nailsweet | シューベルト | 23:42 | comments(2) | trackbacks(0) |
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      こんばんは。

      ハーモニック・ペダル使用…というのも興味津々ですが、
      ピアニスト自身の補筆版で演奏されている…というのにびっくりしました。

      > 私はなかなかに説得力のある補筆だと感じました。

      「シューベルトっぽい終わり方」になっていましたか?(笑)

      楽譜は持っているので、
      第3,4楽章の「さわり」はわかるのですが、
      実は、補筆版をそもそも聴いたことはありませんでした。

      「未完成(交響曲)」の補筆が出ても聴くかなぁ…という思いもあって、
      あんまり、「シューベルトの音楽の補筆」というのに興味がなかったのですが、

      nailsweet さんの「なかなかに説得力のある補筆」というご感想を読んで、
      ぜひ、聴いてみたくなりました。
      ご紹介、ありがとうございました。
      | harvest | 2008/02/05 10:25 PM |
      harvestさま
      コメントありがとうございます。

      > ピアニスト自身の補筆版で演奏されている…というのにびっくりしました。

      はい、私も購入してから知ったのでびっくりしました。
      あの曲は第2楽章で終わってもいいかなと思うくらい、
      魅力的なLangsamerSatzですから、尚更意外でした。

      >> 私はなかなかに説得力のある補筆だと感じました。
      >
      >「シューベルトっぽい終わり方」になっていましたか?(笑)

      そうですね、あんまり違和感なく「完結」してます。
      勿論、シューベルトらしい「逡巡」の末、ですけれど。

      > 実は、補筆版をそもそも聴いたことはありませんでした。

      他に補筆版があるとは聞いてないです。
      多分、これが唯一のものじゃないでしょうか。

      > 「未完成(交響曲)」の補筆が出ても聴くかなぁ…という思いもあって、

      そうですね。確かにそれはあります。
      そのへんはブルックナーの9番や間やマーラーの10番とは事情が違いますね。

      でも、私自身は、このプルーデルマッハーの演奏を聴けたこと、
      それが何より、一番嬉しかったことです。
      | nailsweet | 2008/02/06 12:02 AM |









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