【私の好きな歌(9)】<禁煙4周年> 煙が目にしみる 〜 ジョー・スタッフォード

2011.06.14 Tuesday

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    ・ジョー・スタッフォード









     6月に入って、禁煙を開始してから丸4年が経ちました。それまでは何度か挑戦しても見事に失敗していましたが、今回はうまくいっています。

     もう4年も経ってしまうと、禁煙に至った経緯や、禁断症状をどうやって抑えたか、そしてどんなにそれが辛いことだったかはもう記憶がボンヤリしてしまっていますが、ともかく私は、このまま一生タバコとは無縁でいたいと思っています。主に経済的、健康的な理由から、ですが。

     とはいえ、私は嫌煙家ではありません。自分が愛煙家だったし、禁断症状もまったくなくなったので、人が吸っているタバコの煙はまったく苦になりません。タバコを吸っていた頃、私の周囲の人々、それも大切な人々にもたくさんの副流煙を吸わせてしまったことは悔いていますが、タバコの煙は今でも嫌いじゃない。子供の頃、周囲の男の大人たちはほとんど例外なくタバコを吸っていて、すっかり慣れ切っていたからか、今でもむしろ、タバコの煙の匂いは私にとって「懐かしい」ものであるとさえ言えます。

     ということで、禁煙開始4年を記念して、「煙」に関連した曲について。

     恥ずかしながら、私の好きなスタンダード・ナンバー「煙が目にしみる」という歌の「煙」が、タバコの煙ではないということを最近になってようやく知りました。それまでは、この曲の美しいメロディばかりに気を取られて、歌詞もちゃんと聴いたり読んだりしていなかったので、てっきり「君のことを想うと、胸が切なくなって泣けてきて、今吸ってるタバコの煙が目にしみる」というようなことを歌ったものと思っていました。まあ私の英語力なんぞはそんなもの、情けない限りなののですが、一度そういうイメージが出来上がってしまっているので、この歌を聴くと、いつもモクモクと立ち昇るタバコの煙と、そのちょっとメランコリックで懐かしい匂いを思い出してしまいます。ほとんどパブロフの犬状態。

     では、正しいこの曲の歌詞の意味はというと、こんなものなのだそうです。
    They asked me how I knew
    My true love was true
    I of course replied something here inside
    Cannot be denied

    They said someday you'll find
    All who love are blind
    When your heart's on fire you must realize
    Smoke gets in your eyes

    So I chaffed them and I gaily laughed
    To think they would doubt our love
    And yet today my love has gone away
    I am without my love

    Now laughing friends deride
    Tears I cannot hide
    So I smile and say when a lovely flame dies
    Smoke gets in your eyes

    「どうして自分の恋が本物だとわかるの?」
    みんなはそう聞くけど、答は決まってるわ。
    「胸の内を誤魔化すことはできない」って。

    みんなは「いつか、恋は盲目だったと思い知るがいい」とか
    「心に火がつくと煙で見えなくなるからねえ」とか言ってる。
    だから私も、みんなをからかったり笑ったりしながら、思う。
    「みんな、私の恋をニセモノだと思ってるわけね」。

    でも本当は、私の恋は今日、終わったの。今は抜け殻の状態。
    あ、笑ってた友だちが、私の涙に気づいたみたい。
    「うん」。私も微笑んで、こう答える。
    「炎が消えるときにも煙が目にしみるのよ」って。

    和訳:ブログ「W&R : Jazzと読書の日々」より拝借
    http://d.hatena.ne.jp/wineroses/20060803
     全然私の妄想とは違う歌詞ですが、正直、他愛もない歌詞で、失恋の涙を流したことのある身にはいくらか共感できる、といった感想以上のものは感じません(上記の和訳はいくつか見た中で一番好きです)。

     が、それでも、この歌を何度聴いても胸がキュンとする感覚がまったく失せないのは、やはりジェローム・カーンの曲の美しさゆえだろうと思います。もとは行進曲だった(!!)ということもあってか、特に甘美な旋律という訳でもないし、ドラマティックな盛り上がりもありませんけれど、切なさがかすかに胸をかすめ、仄かな「情感」を呼び起こすあたりの絶妙の「距離感」が心地良い。これはある程度人生経験を重ね、恋の甘さと苦さを両方知っている人にしか書けない、歌えない、聴けない曲じゃないかとさえ思います。(勿論、10代の人が素晴らしく歌ったり演奏する可能性は十分にありますが)

     私自身、この曲を本格的に好きになったのは、いつだったか、TOYOTAのテレビCMでこの曲が使われたのを聴いた時でした。それまで、ザ・プラターズの歌では知っていて、「いい曲だな」程度には思っていましたが、そこで使われていたのは往年のジャズ・シンガー、ジョー・スタッフォードの歌ったバージョンでした。1955年に制作された”Autumn In New York"に収録されたもの。

    ・Smoke Gets In Your Eyes / Jo Stafford



     スタッフォードは、もう今はすっかりいなくなってしまった種類の、気品溢れるマイルドな雰囲気をもった歌を歌う人。声も澄んでいて美しい。ジャズの視点から聴くとスイング感はちょっと乏しいのかもしれませんが、普段はクラシックを聴くことの多い私には彼女のノーブルな歌はすんなり耳に入ってきます。美しい女性が、こんな声で淡々と「恋の炎が消える時にも煙は目にしみるものよ」などと言ったら、黙って頷いて「ああ、その気持ち、よく分かるよ」と一緒に静かにグラスを傾けたくなります。(実際には酒は全然飲めないのですが)

     勿論、この曲を大ヒットに導いたザ・プラターズの歌も素晴らしいと思いますし、クラシック系の歌手が歌ったものでも良いものをいくつか聴いた記憶がありますが、私にはこのスタッフォードの歌う「煙が目にしみる」こそが、一番心にしみます。

    ・Smoke Gets In Your Eyes / The Platters


     ジョー・スタッフォードは、CMの「煙が目にしみる」でとても気に入り、CDを何枚か購入して、毎日のように聴いていた時期があります。今どのアルバムを聴いても、ああ、いい歌だなあとしみじみと聴き入ってしまいますが、特に、この「煙が目にしみる」が入った「ニューヨークの秋」は、ゴージャスなバック・オケの響きも美しくて惚れ惚れと聴いてしまいます。こんな美しい声の人が歌っているのを、バーで間近に聴いてみたかった、見てみたかったと思います。

     今、私は、タバコの煙とも、恋の炎の煙とももう無縁になってしまいましたが、でも、まあ、こんなに素晴らしい音楽がそばにあるのなら、そして、大切な人たちが私のそばにいてくれるのなら、私の人生はそんなに悪くはないかな、というささやかな自己満足を感じつつ、禁煙4周年のエントリーを閉じます。

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    2018.06.18 Monday

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      コメント
      またおじゃまします。 私はこの歌詞、極めて単純ですが心にしみます。過去の恋を本物だったと肯定したい気持ち、、                               でも今は独り。恋の終わりも炎が消えるときにの煙が目にしみる。 というところがなんともいいです。                                     私はジョー・スタッフォードの歌ではDay By Day が好きです。トランペットヴォイス?と言われた声はいわゆる一般的なと言っては失礼ですが誰とも違う伸びのある声がとても魅力的だと思います。              ちなみにタバコはなかなかやめれません(笑)
      • by masa
      • 2011/06/15 1:44 AM
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