私のシューベルティアーデ(3) 〜 映画の中のシューベルト

2008.02.09 Saturday

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    シューベルトの音楽にどっぷり浸る生活が続いています。
    今日は、シューベルトの音楽が使われた2つの映画のことを書きます。

    一つめは、シャーリー・マクレーン主演の「マダム・スザーツカ」(1988)。



    これは、マクレーン演じる老ピアノ教師マダム・スザーツカと、その弟子であるインド人少年マネクの心の交流を描いた映画です。あまりヒットしませんでしたが、マクレーンの深い演技が印象的な映画でした。(詳しいあらすじはコチラ)

    この映画の中では、シューベルトのピアノ連弾曲「幻想曲へ短調D.940」が使われていました。スザーツカとマネクの連弾シーンだけでなく、映画が終わった後のスタッフ・ロールでもこの曲冒頭の哀しげな旋律が流れて来ます。ほろ苦くてちくりと胸に刺さる寂しげな結末の余韻が何ともこの曲の調べとマッチしていて、スタッフロールが終わるまで映画館の席を立てなかったのを記憶しています。私は、ラ・フォル・ジュルネでもおなじみのケフェレックとクーパーのデュオの演奏を好んで聴きます。

    もう一つは、パトリス・ルコント監督の「列車に乗った男」(2002)です。



    定年を迎えて孤独な生活をするフランス語教師マネスキエが、街へやって来た訳ありの男ミランと同じ列車に乗り合わせたことから、束の間の奇妙な共同生活をするお話。他のルコント映画とは少しテイストが違い、全く正反対の男同士の人生が微妙な「交差」をしながら互いに共感し合うところが印象的な映画です。(詳しいあらすじはコチラ)

    この映画の中でマネスキエがミランのためにへたくそなピアノを弾くのですが、そのときに弾いたのがシューベルトの即興曲D.935(Op.142)第2番変イ長調。とてもシンプルで明るくて、それゆえにどこか哀愁を帯びた曲調が、自足してはいてもどこか哀しげな表情でポロポロと弾くマネスキエの姿とぴったり合っていて印象的でした。

    この曲は名盤が多くて、気分によっていろいろ聴きたくなりますが、バックハウスの生涯最後の演奏会のライヴが特に印象に残っています。その演奏会で、バックハウスは1曲目のベートーヴェンのソナタを弾いている途中で気分が悪くなり退場し、休憩後にシューマンの幻想小曲集から2曲と、この曲を演奏して聴衆と最後の別れをしたのでした。その演奏にあるのは、質量さえも失ってしまったかのような不思議な浮遊感のある透明な境地です。あとはルドルフ・ゼルキンやアラウ、内田光子なども好きです。

    そういえば、「列車に乗った男」でも最後は主人公の「死」が扱われていて、見ていてバックハウスのシューベルトとも何か通じる感覚が感じられたのを思い出します。きっと即興曲のシーンが私自身の心の中に伏線を作っていたからだとは思いますが。

    その他、大昔の「未完成交響楽」(「わが恋が終わらざるが如くこの曲も終わらず」とかいう台詞がありました)の時代から、いろいろな映画でシューベルトの音楽が使われていることと思います。私は見ていないのですが、「のだめカンタービレ」でもソナタの第16番が使われたそうですね。私としては、大好きな弦楽五重奏曲の第2楽章、誰か映画で使わないかなあと考えたりしています。

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