Langsamer Satz

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【ディスク 感想】答えなかった問い 〜 シュテファニー・シューマッハー(アコーディオン)
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     ・答えなかった問い
     シュテファニー・シューマッハー(アコーディオン)(Oehms)
     →詳細はコチラ(HMV/Tower/Amazon)




    <<曲目>>
    (Chapter1:オルガ)
    ・マシャ・コーティムスキ[1980-]:答えなかった問い

    (Chapter2:レオシュ)
    ・ヤナーチェク:『草陰の小道を通って』第1集(われらの夕べ/散りゆく木の葉/一緒においで/フリーデクの聖母マリア/彼女らは燕のように喋り立てた/言葉もなく/おやすみ!/こんなにひどく怯えて/涙ながらに/ふくろうは飛び去らなかった)

    (Chapter3:孤独)
    ・ミナス・ボルボウダキス[1974-]:回折思考
    ・アラシュ・サファイアン[1981-]:アルファ

    (エピローグ)
    ・ローセンス・トライガー[1956-]:共感


    ---

     Oehmsレーベルから発売された「答えなかった問い」と題されたアルバムを聴きました。これは、ドイツ出身のアコーディオン奏者シュテファニー・シューマッハーのソロ・アルバムで、ヤナーチェクの「草陰の小径を通って」の第1部を中心に、3人の現代作曲家が書き下ろした作品を演奏しています。

     そのアルバムの中心たる「草陰」は言うまでもなくピアノ独奏のための作品ですが、これはもともとハルモニウムのために書かれた作品ですから、アコーディオンで弾くことにも正当性があります。現に、シューマッハーの師匠に当たるテオドール・アンゼロッティが録音した素晴らしいディスク(Winter&Winter)もありますし、以前このブログでも取り上げたように、アコーディオンとピアノのバージョンがあったりもします。しかし、シューマッハーは、ヤナーチェクの愛すべき名作をただアコーディオンで弾くだけでは飽き足りず、現代作曲家に、このヤナーチェクの作品にインスパイアされた新作を委嘱したという訳です。

     まず最初に演奏されるのは、マシャ・コーティムの「答えなかった問い」。アイヴズの有名な作品「答えのない質問」と英訳では同じ名前の曲ですが、日本語盤のオビには「答えなかった問い」とあります。ライナーノートのシューマッハーのインタビューを読むと、確かに「答えのない質問」という邦訳は不適切だろうというのが分かります。というのは、ヤナーチェクはこの作品集を若くして亡くなった愛娘オルガの追悼のために書いたのですが、作曲者コーティムはこのオルガに思いを馳せて曲を書いたそうです。(サブタイトルも「オルガ」となっている)。その心は、オルガが結局のところ人生に対する答えを何一つ得ることなく、あまりにも早くこの世を去ったことなのだそうです。だから、「答えなかった」あるいは「答えが見つけられなかった」というくらいのニュアンスの曲でしょうか。確かに、胸を引き裂かれるような痛みに溢れた曲で、「草陰」のマクラに持ってくるにはなかなかいい雰囲気を持った曲だと思います。

     そして、メインの「草陰」が始まるのですが、これは非常にオーソドックスな演奏で、まったく変わったこともしておらず、ヤナーチェクの書いた静かな音楽を、淡々と、そして丁寧に演奏していてとても好感が持てます。特にあの「フリーデクの聖母マリア」の、鄙びた響きに彩られた静謐な祈りは、アコーディオンにしか出せないもの。最後の「ふくろうは飛び去らなかった」のあまりに物悲しい音も耳に残ります。チェコではふくろうは「死」を象徴する鳥なのだそうで、娘を早くに亡くした父親ヤナーチェクの心の悲痛な呟きが、ピアノ以上に雄弁に私に語りかけて来て、胸を打たれずにはいられません。お涙頂戴の芝居がかった涙とは無縁の、しみじみとした独白の裏には心から流れ出た血のような涙が感じられるようで、尚更響いてくるものが感じられます。素晴らしい演奏だと思います。

     ヤナーチェクに続いては、アコーディオン界のラッヘンマンか!というくらいに特殊奏法を駆使したミナス・ボルボウダキスの「回折思考」、引き続いてぐっと聴きやすい現代曲が2つ、アラシュ・サファイアンの「アルファ」、そしてローセンス・トライガーの「共感」という曲が演奏されています。ただ、私の乏しい感性では、これらが表面的・内的にどのように「草陰」と結びついているのか、あまり明確な補助線は見つけられませんでした。ただ、アコーディオンという楽器の特性をもっと豊かに引き出したいという作曲者と演奏者の熱意は伝わってきますし、「共感」という曲の透明な抒情には惹かれるものがありました。

     こういうコンセプトをもったアルバムというのは私は大好きですから、私はこのアルバム、とても気に入りました。どんな曲、どんな楽器でも、どんな作曲家の組み合わせでもいいので、こういう企画がもっと、どんどんと出てきてほしいものです。
    | nailsweet | クラシック音楽 ディスク | 01:21 | comments(2) | trackbacks(0) |
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      ああ、確かにこのタイトルには苦労しました。こういうコンセプトアルバムは、どこまで演奏家の主張を読み取るかが試される気がしました。「答えが見つけられなかった」のではなく、もちろん「答えられなかった」のでもなく、あくまでも「答えなかった」にこだわった気持ちがわかっていただけたら嬉しいです。
      | yoshida | 2012/01/10 9:58 AM |
      yoshidaさん、コメントありがとうございます。
      確かに、「答えなかった」が一番しっくりくる気がします。さすがはプロのお仕事。それにしても、このアルバム、私はとても気に入ってます。
      | nailsweet | 2012/02/12 11:31 PM |









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