【気になる演奏家・24】ラケル・アンドゥエサ(S)

2012.08.27 Monday

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     ・ラケル・アンドゥエサ(S)
      Raquel Andueza(S)













     最近、また私の「女神さま」が増えました。今回も古楽系のソプラノ、ラケル・アンドゥエサ。

     彼女はスペインの北東部、ナバーラ州の州都であるパンプローナ出身の古楽歌手。6歳から音楽教育を受け、地元の音楽院と、イギリスのギルドホール音楽院を卒業後、世界中の名だたる演奏家と共演している人とのこと。

     私が彼女の存在を知ったのは、CDショップのサイトを見ていて気になった新譜の試聴をした時。それはモーレ・イスパーノという団体で、リコーダーやリュートなど器楽奏者5人と、ソプラノ歌手1人からなるアンサンブルのアルバムだったのですが、そのPVで聴いたソプラノ歌手の歌にいっぺんに引き込まれたのです。それが、ラケル・アンドゥエサだった。

     まず何よりも透明でリリカルな歌声がまず好みド真ん中だったのですが、それ以上に私が彼女の歌で気に入ったのは、その歌い口の大らかさ、気取らない親しみやすさです。楽しい歌を歌っていても、哀しげな歌を歌っていても、いつもそこには人生を肯定してくれるような揺るぎなさや明るさがあって、聴いていて心が湧き立つのです。

     私のもうひとりの女神さまで、同じくスペイン出身の古楽系ソプラノ歌手にヌリア・リアルという人がいますが、彼女の場合は、もっと細やかでしっとりした穏やかさと、こちらが襟を正すような折り目正しさや気品があって、アンドゥエサの親しみやすさとは好対照。言ってみれば、リアルは山手のお嬢様系、アンドゥエサは下町のおねえちゃん系というような雰囲気でしょうか。さらに突っ込んで言ってしまうと、アンドゥエサの歌はより肉感的で、色気たっぷり。特に、フレーズの終わりで、ふっと声を抜いていく時の、吐息混じりのちょっとハスキーな声が私にはたまらないのです。こんなもんそばで歌われたら、即死するでしょう。まあ、彼女が歌っている歌(主にルネッサンス期のスペインの歌)がもともとそういう曲だということもあるのかもしれませんが、いや、何とセクシーな歌手でしょうか。勿論、リアルの歌にもある種のエロスを感じていて、それゆえにこそ彼女の歌をこよなく愛しているのですが、またちょっと違うタイプのエロスを見つけてしまったということ。リアルも、アンドゥエサも、どっちの歌手も十分すぎるくらいに女性としての、そして何よりも人間的な魅力があって、もう聴いていてメロメロになってしまうということには変わりがない。つくづく節操のない聴き手だと思いますが、好きになってしまうものは仕方がない。私には責任はない。

     そのアンドゥエサのCD、早速いくつか購入してとても楽しんでいます。いくつか印象の強いものを忘れないように列挙しておきます。

    ・私は狂気
     ラケル・アンドゥエサ(S)ラ・ガラニア(ANIMA E CORPO)

     →詳細はコチラ(Tower)
     

     まず、これが今のところ手持ちで一番のお気に入り。17世紀のスペインの歌曲集(リュリの曲を含む)で、テオルボとバロックギターのデュオ、ラ・ガラニアと共演したもの。彼女のある意味あけっぴろげで親しみ深い歌を、シンプルな伴奏に乗せて心ゆくまで味わえます。彼女がとても楽しそうに、そして表情豊かに歌っている姿が思い浮かぶような感興に溢れた歌の数々。今年の夏はこれで決まり、というところです。発売されたのは昨年6月で、CDショップではよく目にしていましたが、これがこんなに自分のツボのディスクだとはまったく思いもしませんでした。いつも通勤電車で出会う素敵な女性と、ひょんなことから話をしてみたらすっかり意気投合してしまった、みたいな感じでしょうか。

    ・デュロン/歌曲集
     ラケル・アンドゥエサ(S)マニュエル・ヴィラス(ダブルhp)
     (Naxos)

     →詳細はコチラ(HMV/Tower)

     次はナクソスから出ているデュロンの歌曲集。これも17世紀スペインを生きた作曲家が残した歌曲が収められていますが、伴奏は、マニュエル・ヴィラスのダブル・ハープ。私はまったく知らなかった作曲家ですが、これがまたなかなか心に響く佳品の宝庫。ダブル・ハープの古雅な響きにのって、アンドゥエサの美声を存分に堪能できる好アルバムだと思います。ここでも、吐息混じりのセクシーな歌声(特に'Ay'という呼びかけ)が悩ましいくらいに、男心をそそります。どうしてこんなに素晴らしい音楽を今まで知らずに来たのか、それが不思議というか、残念というか。でも、これは間違いなく私の愛聴盤になりそうです。

    ・ラバッサ/地に平和を et in terra pax(宗教曲集)
     ラケル・アンドゥエサ(S)
     エンリコ・オノフリ指揮セビリア・バロック管他(obs)

     →詳細はコチラ(Tower)

     その次に、今、タワレコ渋谷店でイチオシになっているディスク。これまた私の全然知らない作曲家ペトロ・ラバッサの作品集。指揮があのエンリコ・オノフリで、セビリア・バロック管他との共演。本編のミサでは彼女の出番はないようですが、そのほかの曲で独唱を務めています。これはまだ購入してから聴いていませんが、試聴器で聴いて即買いするほどに魅力的な音楽だったのは確かなので、楽しみに聴きたいと思います。

     この他、前述のモーレ・イスパーノのアルバム、あるいは、ムダーラ、プラ兄弟などの作品集も聴いてみたいですし、最近鮮烈なバッハを聴かせてくれたアマンディーヌ・ベイエールと共演したローゼンミュラーの作品集はなんとしても聴きたいと思います。

     また、それ以外でも彼女が参加したアルバムはいくつかあるようで、中には私が持っているアルバムもあり、確認してみると確かに彼女の名前を見つけることができました。例えば、ヌリア・リアルが参加したオルフェニカ・リラの「ドン・キホーテの音楽」がそうで、私の女神さま2人が共演したアルバムでした。

     でも、一番の驚きは、少し前に出たラルッペジャータの南米アルバムに、彼女が参加していて、今をときめくカウンターテナーのフィリップ・ジャルスキーと"Como la cigarra"で共演、さらに「ベサメ・ムーチョ」も歌っていることです。

    ・ 迷子の小鳥たち〜南米の音楽
     フィリップ・ジャルスキー(C-T)
     クリスティーナ・プルハール&ラルペッジャータ(Virgin)
     
    →詳細はコチラ(HMV/Tower)

     このアルバム、愛聴している割には、不覚にもアンドゥエサの存在に気づけてませんでした。思えばきれいな声のソプラノがいるなあくらいは感じたかもしれませんが、これは誰だ?他にCDは出てないのか?とまでは切羽詰って感じなかったのは、私の耳と感性の貧しさとしかいいようがない。(今聴き直すと、とても魅力的な歌なのに)このアンドゥエサがラルッペジャータと一緒に歌う「ベサメ・ムーチョ」はライヴ映像を見つけましたが、これがジャルスキーとのデュエットになっていてまた素晴らしい。

    ・ベサメ・ムーチョ(アンドゥエサ、ジャルスキー&ラルッペジャータ 2011 Live)




     二人のユーモラスな掛け合いも楽しいし、アンドゥエサのジャルスキーを誘惑するようなゼスチュアもセクシー。いや、目尻を下げ、鼻の下を伸ばし、よだれを垂らして、この妖しいデュエットを楽しんでいる私の姿は、決して家族には見せられません。CDも改めて聴き直すと、ほんとにほんとに素晴らしい。かつてうんざりするほど聴いてきたこの曲の歌でも、最も私の心にしっくりきます。

     ということで、このシリーズのエントリーの締めの言葉として常套句になってしまいますが、 アンドゥエサ を是非ともナマで聴きたい。(これまで来日したかどうかは不明)ラ・ガラニア、モーレ・イスパーノとの来日でもいいし、どうせならジャルスキーも含めてラルッペジャータと一緒に来日してくれてもいい。(後者の場合、ヌリア・リアルも一緒に呼んで、「十字架の道」「愛の劇場」をやってくれてもいい)ホールは小さくてもいいし、古楽系なら嗅覚のいい人が多そうなので、客入りも結構いいんじゃないかと思いますが、どんなものでしょうか。とにかく、アンドゥエサは、ヌリア・リアル、ハナ・ブラシコヴァ、スンヘ・イム、ドロテー・ミールズ、アリアンナ・サヴァールと並ぶ私の女神さまです、はい。あ、忘れちゃいけない、波多野睦美さんとか、冨山みずえさんとか、鈴木美紀子さんとかも、女神さまだ。浮気な男でどうもすみません。

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    2019.08.15 Thursday

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