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【雑記】来日演奏家のコンサートチケット代を抑える方法

・大阪方式







 前のエントリーに対して、思いもかけず予想以上の数の反応を頂きました。そして、多くの人が、「近頃のクラシックの来日アーティストのチケット代が高い」という点においては、私と同じ意見をお持ちだということが分かりました。

 そして、プロの音楽評論家の方も含め、何人かの方から御指摘頂いたのは、最近の来日演奏家たちのコンサートは完全に富裕層向けのものになっているということ。メジャー演奏家の来日公演というのは、客席が埋まらなくても何とか利益が出るようなビジネスモデルになっているのですね。確か、数ヶ月前のレコ芸でも海外の評論家がコラムで書いていましたが、欧米でも、今やどんな有名アーティストでも大ホールをいっぱいにすることはできない。中国や韓国のような勢いのある国は別として、いわゆる先進国というのはどこも同じような「危機的な」状況にあるのでしょう。

 しかし、客席が埋まらなくても成り立つっていうのは、一体どうよ、と思います。よっぽど偏屈な演奏家でもなければ、ガラガラの客席のホールで演奏するのが好きな人なんてまずいないはず。ホールが満員に近ければ、演奏家の方もやりがいがあるでしょう。それがうまくいったとなれば尚更のこと。今年大リーグでヤンキースに移籍したイチローだって、あのヤンキースタジアムの満員の観衆がいたからこそ、奇跡的に良い成績を残せたのですから。

 ただ、我々聴衆の側は事情が違うかもしれません。何しろ自分さえその演奏を聴ければいいというところが少なからずあって、正直、客席がガラガラでも本来は知ったこっちゃない。休憩時に移動して良い席で聴こう、とか、今日は残響が多くていい、とかそんなことを思う人もいる。

 ですけれど、それも程度問題で、この間のポリーニの時のような、アーティストのネームバリューと実力にあまりに不釣り合いなほどにガラガラな客席を目の当たりにすると、「もったいない!」と思わずにいられないのです。

 やっぱりチケット代が高い。これじゃお客さん、来ない。若い人たちの中には、聴きたくても聴けない人もたくさんいるでしょう。何とかしてチケット代を抑え、入場者数と利益を確保しないと、そのうちクラシックのコンサート、特に外来演奏家のコンサートが成立しなくなる。

 ではどうすればいいか。どうすれば全体的にチケット代が安くなるか。

 勿論、チケット代が高い原因を潰さなければならないのは自明です。

 まず演奏家のギャラ。バブルの頃に出来上がってしまった「日本相場」が、この超不景気、超デフレの時代にもまだ残ってしまっていて、海外の興行主からふっかけられているのなら、やはりそこは適正なものに是正しないといけないと思います。

 あと、演奏会にかかるコスト。演奏家たちのギャラ以外に、会場の使用料、スタッフの人件費など、莫大な費用がかかりますが、そこに本当に無駄はないかを見る必要はあると思います。

 その他にもいろんな原因があるのでしょう。でも、私は素人なので、厳密なところは分かりませんし、音楽事務所のたちも必死で努力しておられ、余り改善の余地は残っていないのかもしれません。でも、たとえもしそうだとしても、きっとプロの人たちが、しがらみを超えて議論をしてくれるものと信じて、私は、あくまで一般的な素人の音楽ファンとして何ができるかなという観点で考えてみました。

 私が考えたのは、とても単純なこと。

 私たち自身が演奏会の「出資者」になればどうだろうか?というものです。

 ヒントはこれです。ちょっと長いですが引用します。

 聴衆からチケット代程度の出資を広く募り、集まりが悪ければ「お流れ」もあり。そんなオーケストラ公演が大阪で始まった。銀行が資金集めの窓口を引き受ける。開催費用を小口に均等割りして募るこの試みを、発案した銀行は「大阪方式」と呼ぶ。楽団支援の新しい仕組みになる可能性もある。

    ◇

 演奏会は来年2月2日に大阪市のいずみホールであり、関西フィルハーモニー管弦楽団を首席指揮者の藤岡幸夫さんが振る。資金集めの窓口は関西フィルのメーンバンク近畿大阪銀行(大阪市)だ。

 出演料、ホール代など開催費400万円を座席数とほぼ同じ800口(1口5千円)に分けて10月に募集を開始。振込手数料はかからず、出資に応じて入場券がもらえる。出資のみで入場券不要という選択もできる。

 法人・個人335人が応じ、約1カ月で完売した。大口は、50口引き受けた1社のみで、9割以上は1、2口。「支援は広く浅く」という狙いにほぼ沿う結果となった。「経済状況に左右されず文化活動を支える新しい仕組みとして定着させたい」と、近畿大阪銀行の桔梗芳人社長は説明する。

 オーケストラ公演には1公演あたり数百万〜数千万円かかり、小口の出資でまかなうにも取りまとめが難しい。日本オーケストラ連盟も「聞いたことがない」と話す。

 この企画は、同銀行を傘下に持つりそなホールディングス(HD)の地域貢献活動「リーナル」の一環。今年発足10周年を迎えた同銀行が、創立40周年の関西フィル、開館20周年のいずみホールに呼びかけた。銀行の取り分はゼロだが、「おもろいことをする銀行だから資金運用も任せよう」という新規顧客の獲得に向けた投資と位置づける。

 曲目はまだ決まっていない。藤岡さんは「お金を出してくださった方の意見も反映させ、通常の演奏会と違うことを考えたい」という。関西フィルの西濱秀樹事務局長も「大勢の思いを結実させる演奏会にしたい」と語る。

 多数の楽団員を抱えるオーケストラは人件費の塊。チケットの売り上げと、演奏を頼まれた時のギャラが収入の柱だが、福祉施設での演奏のように利益を見込めない場合もある。自前の稼ぎでは運営費をまかなえず、公的助成や民間寄付で赤字を埋めているのが実情だ。今回の試みは楽団にとって、公演の資金調達を無償で銀行に外注した形だ。

 今回は無事資金が集まったが、同じ手法で企画した大阪交響楽団と関西二期会の歌手が出演する演奏会は、公演を延期した。りそな銀行を窓口に1口1万円で500口募集したが、応募はまだ約100口にとどまる。

 同行は開催を優先して企業に100口、200口依頼することも考えたが、それでは従来のスポンサー獲得の仕組みと変わらないので踏みとどまった。「『大阪方式』を定着させるには、ここが我慢のしどころです」。発案した、りそな銀行法人ソリューション営業部の藤原明アドバイザーはそう話す。(星野学)
2010年11月29日 朝日新聞朝刊より)

 実は、この「大阪方式」がうまくいったという話は聞いておらず、ポシャったのかもしれませんが、この仕組みをもうちょっとアレンジして、我々聴衆が、外来演奏家のマネージメントをおこなう事務所なり、団体に「出資」できないだろうかと思うのです。

 思いつき。例えば、ある超一流の海外の演奏家を、2年後に招聘したいという告知を事務所が出す。そこに、一般のファンから出資を募る。チケットを予約するのではなく、出資するのです。つまり、自分がそのコンサートに行くか行かないかは別として、その演奏家の来日公演に「価値がある」と思えばエージェントに出資するのです。千円とか小口からの出資も受け付ける。事務所側は、聴衆からの出資ゼロの、要するに通常システムで利益が出るようにホール選別、価格設定をやって良くて、「大阪方式」のように演奏会そのものの成立が流れるような仕組みにする必要はない。あくまで、コンサートのチケット代を抑えるための出資を一般から募るシステムであって、国からの援助の代替、あるいはプラスになるような資金をユーザーから集め、チケット代を抑えるようにする。演奏プログラムの案をいくつか用意して、どれが良いかを選択して出資するのでも良い。

 当然のことながら、出資した人には、インセンティブがある。インセンティブの額は、出資総額からポイント換算して算出する。そして、例えば、出資した演奏会のチケットの先行予約、割引き。大口の出資者には、演奏会の無料招待や、イベント招待、非売品CDの配布などをおこなう。そう、要するに、都響のパトロネージュと似たノリで、それをもっとカジュアルにやるのです。

 音楽事務所側は、出資金のプールができれば、それを使って、「採算度外視」のリスキーな冒険、でも自分たちが「価値のあるもの」と絶対の自信を持つ演奏会を「自主的」に開いてもいい。こちらは出資を募らなくても、プールした資金を使ってチケット代を抑える。

 そうやって一般からの出資が多くなれば、例えば東京以外の地方都市の演奏会の追加開催も検討できるかもしれない。例えば、ラトル指揮ベルリン・フィルが震災の被災地で演奏してもらうようにする。被災地以外に住んでいて自分は聴きに行けないけれど、毎日不自由な思いをしている人たちに、最高の音楽を聴いてもらえるために、我々が少しずつ資金を出して、演奏会を実現する手助けをする。

 その支援は、私たち聴衆には、外来演奏家の来日公演のチケット代が全体に抑えられるという「利益」を受ける。大口の寄付はできないけれど、例えばCD1枚分我慢して投資することで、その恩恵は必ず受けられる。音楽事務所も聴衆を引き付けることができるので、自分たちの利潤にもつながる。

 ・・・というようなことです。

 え?何?なーんだ、お前が考えてたのはそんなつまらないことなのかって?期待させといて何ぬかしてやがるって?すみません、だって私、素人だもん。アートマネージメントも知らないし、経済学も知らないもんね。だから言ったでしょ、とても単純なことだって。妄想なんです。許してください。

 でも、もし、この「我々聴衆の出資」というアイディア、ちょっとでも脈があるのなら、頭のいい人やえらい人が、ここからどんどんふくらませて、より良いアイディア、実現可能なアイディアにしてもらいたいと思います。

 だめかなあ。

 これからの時代、私たちは経済的にかつてないほど厳しい状況を生きなければならない。小さいものをみんなで分かち合うことが多くなるとは思いますが、それだけでは何もかもがどんどん縮小してしまうので、私たち一人一人が、どんな小さなものでも自分の持っているものを持ち寄り、大きなものを育てていくという方向の行為があっても良いのではないかと思うのですがね。

 だめかなあ。

 だめだろうなあ。

 自分が行きもしないコンサートに金払うなんてバカバカしい?演奏会に来る聴衆のハードルを下げ過ぎると、演奏会の質が落ちるから、そんな余計なことなんてせんでよろしいって?

 そんなことばっかり言ってると、自分の愛する演奏会が成り立たなくなって、聴きに行けなくなっちゃうよ!(一体誰に向かって言っているのか・・・)

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  • 2017.04.28 Friday
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  • 04:28
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コメント
平田オリザ氏(ご存じか?)が、ずいぶん以前の著書で「健康保険があるなら、“芸術保険”があってもいいはず」と書いていたのを思い出しました。健康保険のおかげで医療費が3割負担とか1割負担になるように、チケットを買ったりする時にも3割負担で済むような仕組みができないか、というものでした。いかが?(^^)
  • (つ)
  • 2012/11/23 11:26 PM
クラシック以外の音楽分野にならすでにある(同じではないですが)状況ですね。というかアメリカのオケはたしかそんな感じではなかったかと。ちょっと違うか。
  • とおりすがり
  • 2012/11/27 10:44 PM
コンサートの開催、特に来日演奏家のコンサートについて、ご提案のような方式はうまく行かないと思います。
第1に、人気のある演奏家なら、日程の調整をするだけでもかなり難しいですから、複数の日程をあげてそれまでに出資が集まらなかったら次にする、などという選び方はなかなかできません。また、ほとんどのホールは仮予約でもする段階で一定の経費がかかり、これらはキャンセルしても返金されません。また、大手のマネージメントは宣伝だけでも大変な経費をかけて行っています。
つまり、音楽は生鮮食料品などと同じ(またはそれ以上)に限られた期間、時間の中でしか商品価値を持たないのに、それを担保するだけのためにかなり多くの経費がかかるのです。これが美術の展覧会であったら「出資者からの出資が1億円になった時点から5年以内にクリムトの展覧会を行う」などと言うやり方もあるかも知れませんが、出資者からの出資の合計が1億円になった時点で出演交渉をはじめ〜」ではあまりに気の長い話で、恐らく出資する人はいないのではないでしょうか。
また、出資を募っておいていつになっても実現しなかった場合などの払い戻し費用もかさむことになります。それよりは、特定の団体のパトロンになってもらった方がよいです。同じ金額がキャッシュフローになれば、それを再投資して資金調達する自由も芸術団体の側に与えられると思います。
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