珠玉の小品 その8 〜 ラーション/「冬物語」からエピローグ
2007.09.26 Wednesday
ラーシュ=エーリク・ラーション(1908-1986)/劇音楽「冬物語」からエピローグ
オッコ・カム指揮ヘルシンボリ響
★上記リンクから試聴できます。トラック6です。
今日はスウェーデンの作曲家ラーションの音楽。シェークスピアの戯曲「冬物語」のラジオ放送ために書いた22曲の劇伴の中の「エピローグ」です。
冒頭から弦のユニゾンで歌われる旋律が何とも悲しく美しい。2度同じフレーズが繰り返された後の1オクターブの跳躍が胸に刺さります。その旋律に応える管の合いの手は、悲しみを認知するような優しさがあります。そして、木管楽器による悲しみを縁取るような美しいフレーズに引き続き、冒頭の旋律が今度はフォルテで奏でられると悲しみはより心の奥深くに入り込んできます。
しかし、この音楽にはどこか「救い」があるような気がします。どこか親しげな表情をもった悲しみを感じるのです。決して聴く者を絶望の淵に追いやったりすることのない音楽、清々しい涙を誘う音楽、とでも表現すれば良いでしょうか。実際の戯曲のどの場面で使われた音楽なのかは知らないのですけれど。
上記のカム指揮の「スウェーデン管弦楽曲集」所収の演奏は、決して感傷的にならない淡々とした語り口が却って胸を打ちます。また、とても素晴らしい選曲のアルバムだと思います。同じラーションの「田園組曲」、ステンハマルのカンタータ「歌」の間奏曲など、北欧音楽ファンの必須アイテムのオンパレードです。
ラーションの作品集としては以下のアルバムも私のお気に入りです。
ラーション/管弦楽曲集(偽りの神、冬物語、小組曲、田園組曲)
ウォレン=グリーン指揮ヨンショーピング・シンフォニエッタ
「冬物語」は4曲が抜粋されているのも嬉しいですし、エピローグはカム盤とは対照的に生々しくロマンティックですが大好きな演奏です。
ああ、いつの日にかラーションの音楽をコンサートホールで聴けますように。