私のシューベルティアーデ(49) 〜 T.レオンハルトのピアノ作品集Vol.2
2008.08.30 Saturday
<<ピアノ作品集Vol.2>>
トゥルーデリーズ・レオンハルト(Fp)(GLOBE)
<曲目リスト>
・ピアノ・ソナタ第2番ハ長調D.279
・アダージョ ト長調D.178
・36の独創的舞曲D.365 第1〜18曲
・ヒュッテンブレンナーの主題による変奏曲D.576
・36の独創的舞曲D.365 第19〜36曲
・アレグレット ハ短調D.915
レオンハルトさんのGLOBEへのシューベルトのピアノ作品集第2巻は、1995年に録音されたものです。彼女の住むスイスで録音されたもので、Jecklin時代からずっとプロデューサーはミヒャエル・アムスラーという方が一貫して担当されています。この方は、レオンハルトさんの公私にわたるパートナーで、レオンハルトさんの音楽を誰よりも理解し、誰よりも愛情を持って、こうして記録に残しておられるのだろうと思います。素晴らしい夫婦愛ですね。
さて、このディスクでは、レオンハルトさんがJecklinの全集で録音しなかった、未完のソナタ第2番が収録されています。このソナタは、音楽の「構築」への意志を覗かせながらも、結局は「歌」に傾き主題展開に失敗して逡巡してしまうような「不完全さ」が欠点でもあり魅力でもありますが、レオンハルトさんの演奏を聴いていると魅力的な音楽だなあとしみじみ思います。それは、彼女がシューベルトの「歌」の魅力を存分に引き出してくれているからですし、若き日のシューベルトの音楽に潜む「翳り」も余すところなく表現しているからです。特に、第2楽章アンダンテや、第3楽章のトリオの内向的で親密な「歌」の美しさは筆舌に尽くしがたいものがあります。いつまでもその美しさに浸っていたい、そして自分と静かに向き合いたい、そう思わせてくれるようなやわらかな感触。私にはかけがえのない音楽です。この曲では、今までケンプやシフ、ヴァリッシュの演奏が気に入っていましたが、レオンハルトさんの演奏もお気に入りの仲間入りです。
ソナタに続いては、ここでも宝石のような魅力をもった小品が録音されています。
まずト長調のアダージョは、ソナタの断章なのでしょうか。やはりシューベルトの"LangsamerSatz"を聴く愉しみに溢れた、哀しくて美しい音楽ですが、レオンハルトさんの音楽へのあたたかい眼差しが嬉しいです。
そして、「ヒュッテンブレンナーの主題による変奏曲」の美しい演奏には心を打たれます。後半の、物思いに沈むような憂いを帯びた音楽が奏でられるあたり、一つ一つの音が胸にじんわりとしみこんできます。シューベルトの音楽を聴く醍醐味を味わえる名演だと私は思います。例えばダルベルトの演奏も美しかったですが、私はこのレオンハルトさんの演奏をきっとこれからも繰り返し聴くだろうと思います。
「変奏曲」の前後には、「36の独創的舞曲(ワルツ)」が18曲ずつ録音されています。まさに親しい人達と楽しむためのハウスムジークの典型のような音楽を、レオンハルトさん独特の踊りのリズム感を生かしながら楽しく聴かせてくれます。時々現れる、ふざけたような音の遊びも実にエレガントに奏でられ、聴いていて心が弾みます。
最後に収められた有名なアレグレットは、実はレオンハルトさんのシリーズ最新盤の第4集で再録音されています。12年の間隔の空いた2つの録音で聴かれる演奏は、まったく解釈の異なるものです。演奏時間も、再録音が4分48秒、旧録音は3分15秒と、両者で1分30秒ほども違っており、まるで別人が弾いたような音楽になっています。再録音では、ゆったりとした沈み込むような静かな音楽になっているのに比べ、この旧録音では、早いテンポ、強い表情で弾かれていて「内面の嵐」を感じさせるような音楽になっています。アレグレットというより「アレグロ寸前」という音楽。どちらが好きかと言えば、再録音のより成熟した音楽に惹かれますが、これはこれでとても良い演奏だと思います。
贔屓もいい加減にしろと思われるかもしれませんが、レオンハルトさんのシューベルトは本当に私に至福の一時を与えてくれる宝物です。幸い、GLOBEへの録音は継続されているようで、秋にはまた舞曲集がリリースされるとのこと、今から聴くのが楽しみでなりません。
ところで、このGLOBEのピアノ作品集の最新盤である第4集(私の感想はコチラ)が、いよいよイギリスのオンラインショップPoint Classicalで9月に発売されるようです。第3集同様、近い将来、日本のCDショップでも入手可能になるといいなあと思います。
<<ピアノ作品集Vol.4>>
・ピアノ・ソナタ第17番ニ長調D.850
・メヌエットD.91(ニ長調、ト長調)、336、380
・8つのレントラーD.378
・アレグレット ハ短調D.915
トゥルーデリーズ・レオンハルト(Fp) (GLOBE)
トゥルーデリーズ・レオンハルト(Fp)(GLOBE)
<曲目リスト>
・ピアノ・ソナタ第2番ハ長調D.279
・アダージョ ト長調D.178
・36の独創的舞曲D.365 第1〜18曲
・ヒュッテンブレンナーの主題による変奏曲D.576
・36の独創的舞曲D.365 第19〜36曲
・アレグレット ハ短調D.915
レオンハルトさんのGLOBEへのシューベルトのピアノ作品集第2巻は、1995年に録音されたものです。彼女の住むスイスで録音されたもので、Jecklin時代からずっとプロデューサーはミヒャエル・アムスラーという方が一貫して担当されています。この方は、レオンハルトさんの公私にわたるパートナーで、レオンハルトさんの音楽を誰よりも理解し、誰よりも愛情を持って、こうして記録に残しておられるのだろうと思います。素晴らしい夫婦愛ですね。
さて、このディスクでは、レオンハルトさんがJecklinの全集で録音しなかった、未完のソナタ第2番が収録されています。このソナタは、音楽の「構築」への意志を覗かせながらも、結局は「歌」に傾き主題展開に失敗して逡巡してしまうような「不完全さ」が欠点でもあり魅力でもありますが、レオンハルトさんの演奏を聴いていると魅力的な音楽だなあとしみじみ思います。それは、彼女がシューベルトの「歌」の魅力を存分に引き出してくれているからですし、若き日のシューベルトの音楽に潜む「翳り」も余すところなく表現しているからです。特に、第2楽章アンダンテや、第3楽章のトリオの内向的で親密な「歌」の美しさは筆舌に尽くしがたいものがあります。いつまでもその美しさに浸っていたい、そして自分と静かに向き合いたい、そう思わせてくれるようなやわらかな感触。私にはかけがえのない音楽です。この曲では、今までケンプやシフ、ヴァリッシュの演奏が気に入っていましたが、レオンハルトさんの演奏もお気に入りの仲間入りです。
ソナタに続いては、ここでも宝石のような魅力をもった小品が録音されています。
まずト長調のアダージョは、ソナタの断章なのでしょうか。やはりシューベルトの"LangsamerSatz"を聴く愉しみに溢れた、哀しくて美しい音楽ですが、レオンハルトさんの音楽へのあたたかい眼差しが嬉しいです。
そして、「ヒュッテンブレンナーの主題による変奏曲」の美しい演奏には心を打たれます。後半の、物思いに沈むような憂いを帯びた音楽が奏でられるあたり、一つ一つの音が胸にじんわりとしみこんできます。シューベルトの音楽を聴く醍醐味を味わえる名演だと私は思います。例えばダルベルトの演奏も美しかったですが、私はこのレオンハルトさんの演奏をきっとこれからも繰り返し聴くだろうと思います。
「変奏曲」の前後には、「36の独創的舞曲(ワルツ)」が18曲ずつ録音されています。まさに親しい人達と楽しむためのハウスムジークの典型のような音楽を、レオンハルトさん独特の踊りのリズム感を生かしながら楽しく聴かせてくれます。時々現れる、ふざけたような音の遊びも実にエレガントに奏でられ、聴いていて心が弾みます。
最後に収められた有名なアレグレットは、実はレオンハルトさんのシリーズ最新盤の第4集で再録音されています。12年の間隔の空いた2つの録音で聴かれる演奏は、まったく解釈の異なるものです。演奏時間も、再録音が4分48秒、旧録音は3分15秒と、両者で1分30秒ほども違っており、まるで別人が弾いたような音楽になっています。再録音では、ゆったりとした沈み込むような静かな音楽になっているのに比べ、この旧録音では、早いテンポ、強い表情で弾かれていて「内面の嵐」を感じさせるような音楽になっています。アレグレットというより「アレグロ寸前」という音楽。どちらが好きかと言えば、再録音のより成熟した音楽に惹かれますが、これはこれでとても良い演奏だと思います。
贔屓もいい加減にしろと思われるかもしれませんが、レオンハルトさんのシューベルトは本当に私に至福の一時を与えてくれる宝物です。幸い、GLOBEへの録音は継続されているようで、秋にはまた舞曲集がリリースされるとのこと、今から聴くのが楽しみでなりません。
ところで、このGLOBEのピアノ作品集の最新盤である第4集(私の感想はコチラ)が、いよいよイギリスのオンラインショップPoint Classicalで9月に発売されるようです。第3集同様、近い将来、日本のCDショップでも入手可能になるといいなあと思います。
<<ピアノ作品集Vol.4>>
・ピアノ・ソナタ第17番ニ長調D.850
・メヌエットD.91(ニ長調、ト長調)、336、380
・8つのレントラーD.378
・アレグレット ハ短調D.915
トゥルーデリーズ・レオンハルト(Fp) (GLOBE)