私のシューベルティアーデ(53) 〜 マンメルの「美しき水車小屋の娘」
2008.09.30 Tuesday
・歌曲集「美しき水車小屋の娘」D.795(ギター伴奏版)
ハンス・イェルク・マンメル(T)
マティアス・クレーゲル(G) (ArcMusici)
→詳細はコチラ(Tower/HMV)
今、タワーレコードでOehms(エームス)レーベルのCDの激安セールをやっています。1枚あたり490円(2枚組は690円)で、目当てのディスクがあったのでノコノコとタワレコへと吸い込まれて行ったのですが、そのワゴンの中をよく見ると、ドイツのArs Musiciレーベルのディスクも同じ値段で売られていて、前から探していたディスクがあったりして何枚か衝動買いしてしまいました。
そのうちの1枚が、今回取り上げるハンス・イェルク・マンメルの歌うシューベルトの「美しき水車小屋の娘」です。このドイツの若いテノール歌手の名前はこのところ耳にしていたし、何しろ安いので何気なく買ったのですが、家に帰ってジャケットをよく見たら伴奏がギターであることに気がつきました。
これはしめた!と思いました。
最近、私の中ではギターの音楽が一つのブームで、アルゼンチンのギター音楽のディスクを聴いて気に入ってから、この楽器がとても身近に感じられて何枚かCDを買って楽しんだりしているところなのです。しかも、ギター伴奏の「水車小屋」というと、往年のシュライヤーとラゴズニックの名演(来日公演もありました)の記憶も強く残っているので、とても楽しみにして聴きました。
マンメルの歌ですが、第16曲の「好きな色」あたりから、淡い恋に破れた主人公の心の痛みがどんどん強くなり、彼が行き場のない絶望の闇へと落ち込んでいく過程の表現がとても見事で素晴らしいと思いました。主人公の「哀しみ」に深く優しく共鳴しているさまが、抑えた表現の中からも十分に伝わってきて胸に迫りました。「しおれた花」での葬送曲にも似た悲痛な心理描写、「水車屋と小川」と最後の「子守歌」での主人公への優しいいたわりの歌には涙が出てきました。
実のところ、正直言って、彼の声質には私の心を揺り動かすほどの魅力は感じませんし、狩人が現れるまでの曲での音楽的にも未熟さの感じられる舌っ足らずな歌い口には少々がっかりしていたのです。でも、ほんとに終盤からはガラリと印象が変わりました。もしかしたら、このマンメルという歌手は、心の痛みを表現するのに長けた人なのかもしれません。だとしたら、彼が数年前に出して話題になった「冬の旅」は是非とも聴かなくてはならないなと思いました。
そして、マティアス・クレーガーのギター伴奏(クレーガー自身の編曲)ですが、こちらもマンメルの歌と同じく、終盤での哀しみにみちた音楽でこそ、ギターの哀愁漂う音色がとてもよく活かされていて良かったです。ややコンサート向けの表現に思われたラゴズニッヒの演奏と比べ、もっと親密でひそやかに語りかけてくるような語り口で少し小ぶりな表現ですが、これはこれで魅力的な伴奏だと思いました。いくつかのパッセージでピアノ譜を簡略化している部分もありますが、まったくキズにはなっておらず、編曲も良かったです。
これでまた「水車小屋」のお気に入りのディスクが加わりました。とても嬉しいです。
ArsMusiciのワゴンセールでは、他に、前から買いたかったドイツのピアニスト、ミヒャエル・コルスティックのアルバムを2枚買いました。第3楽章が28分(!)かかるベートーヴェンの「ハンマークラヴィーア」と、第1楽章が25分かかるシューベルトの第21番です。これも聴くのが今から楽しみです。
ハンス・イェルク・マンメル(T)
マティアス・クレーゲル(G) (ArcMusici)
→詳細はコチラ(Tower/HMV)
今、タワーレコードでOehms(エームス)レーベルのCDの激安セールをやっています。1枚あたり490円(2枚組は690円)で、目当てのディスクがあったのでノコノコとタワレコへと吸い込まれて行ったのですが、そのワゴンの中をよく見ると、ドイツのArs Musiciレーベルのディスクも同じ値段で売られていて、前から探していたディスクがあったりして何枚か衝動買いしてしまいました。
そのうちの1枚が、今回取り上げるハンス・イェルク・マンメルの歌うシューベルトの「美しき水車小屋の娘」です。このドイツの若いテノール歌手の名前はこのところ耳にしていたし、何しろ安いので何気なく買ったのですが、家に帰ってジャケットをよく見たら伴奏がギターであることに気がつきました。
これはしめた!と思いました。
最近、私の中ではギターの音楽が一つのブームで、アルゼンチンのギター音楽のディスクを聴いて気に入ってから、この楽器がとても身近に感じられて何枚かCDを買って楽しんだりしているところなのです。しかも、ギター伴奏の「水車小屋」というと、往年のシュライヤーとラゴズニックの名演(来日公演もありました)の記憶も強く残っているので、とても楽しみにして聴きました。
マンメルの歌ですが、第16曲の「好きな色」あたりから、淡い恋に破れた主人公の心の痛みがどんどん強くなり、彼が行き場のない絶望の闇へと落ち込んでいく過程の表現がとても見事で素晴らしいと思いました。主人公の「哀しみ」に深く優しく共鳴しているさまが、抑えた表現の中からも十分に伝わってきて胸に迫りました。「しおれた花」での葬送曲にも似た悲痛な心理描写、「水車屋と小川」と最後の「子守歌」での主人公への優しいいたわりの歌には涙が出てきました。
実のところ、正直言って、彼の声質には私の心を揺り動かすほどの魅力は感じませんし、狩人が現れるまでの曲での音楽的にも未熟さの感じられる舌っ足らずな歌い口には少々がっかりしていたのです。でも、ほんとに終盤からはガラリと印象が変わりました。もしかしたら、このマンメルという歌手は、心の痛みを表現するのに長けた人なのかもしれません。だとしたら、彼が数年前に出して話題になった「冬の旅」は是非とも聴かなくてはならないなと思いました。
そして、マティアス・クレーガーのギター伴奏(クレーガー自身の編曲)ですが、こちらもマンメルの歌と同じく、終盤での哀しみにみちた音楽でこそ、ギターの哀愁漂う音色がとてもよく活かされていて良かったです。ややコンサート向けの表現に思われたラゴズニッヒの演奏と比べ、もっと親密でひそやかに語りかけてくるような語り口で少し小ぶりな表現ですが、これはこれで魅力的な伴奏だと思いました。いくつかのパッセージでピアノ譜を簡略化している部分もありますが、まったくキズにはなっておらず、編曲も良かったです。
これでまた「水車小屋」のお気に入りのディスクが加わりました。とても嬉しいです。
ArsMusiciのワゴンセールでは、他に、前から買いたかったドイツのピアニスト、ミヒャエル・コルスティックのアルバムを2枚買いました。第3楽章が28分(!)かかるベートーヴェンの「ハンマークラヴィーア」と、第1楽章が25分かかるシューベルトの第21番です。これも聴くのが今から楽しみです。